第45話精霊王とランプの精
結局、境界国には入国禁止になってしまいしばらく戻ることができなくなってしまった。
それどころか、境界国から来たという理由でしばらくオレ達には行動に制限がかけられており、しばらくこの町に滞在している。
シャルロットが声を失ったのは、本来境界ランプの契約が切れた時に魂を失うところをランプの精霊である猫のチカラでかろうじて声を失っただけにとどまったようだ。
命を失わずに済んだだけでもマシなのだろうか?
シャルロットはだいぶ身体が良くなったのか、トランプをしたり、猫をブラッシングしたりするようになった。
魔法猫はシャルロットを守るようにいつも寄り添うようにそばにいる。
何度も境界ランプで往復した影響で魔法を使うこと自体禁止されていたオレだったがカラス特別大尉がそろそろ簡単な魔法くらいなら……と許可を出してくれた。
簡単な魔法というのは天然石にチェーンをつけて占うダウジングというものだ。
ダウジング天然石は露店街で購入した品でオレの天然石はラピスラズリである。
万が一、魔力が弱まり魔法が使えない時でも占いくらいは出来るようにとランディがオレにプレゼントしてくれたものだ。
シャルロットを助けてくれたお礼だと言っていた。
助けたのはランディだった気がするが……。
境界国が封鎖状態になった直後に入手したものだから今ではもしかしたら手に入らないかも知れない。
シルクロードのこの町にも境界国への道が封鎖されたことの影響は出始めている。
魔法道具が入荷できなくなったそうだ。
魔術書は品切れもあり、高値でもいいから売ってくれと頼み込む魔導師の姿も最近は見られる。
露店街ではいつもより人が多く集まり魔導アイテムを大量買いする人の姿も見られるようになった。
境界国は封鎖状態が続いているようで今では国際電話も通じない。
謎の病が流行っているということで避難者が続出しているがなかなか受け入れてくれる先が見つからない人も大勢いるようだ。
もうすぐこの町に来て1週間が経つ、噂というのは恐ろしいもので古代文化研究所の地下から解放されたシャルロットのことを様子を見に尋ねてくる人もいたがシャルロットの従兄妹ランディがやんわり断っていた。
「お兄さんもお辛いでしょうが元気を出して……」
とお見舞いの品をくれる人もいる。
なんでもこの町の噂だと
『発掘した化石を解析依頼に来た調査員のメンバーだった少女が研究室の呪いの品に触った影響で悪霊に取り憑かれて声を失った』とか
『地下室に閉じ込められたショックで話せなくなったがお兄さんが助けに来て殺されずに済んだだけらしい』とか
事実とは異なるものの、そんなに遠い噂でもないところが恐ろしい。
シャルロットの具合が落ち着いたからなのか魔法猫からオレ達に重要な話があるという。
オレには動物の言葉を理解する魔力は備わっていないため、ミニドラゴンのルルが通訳してくれるという。
クーロン博士も魔法猫の言葉は通訳できるが化石の解析作業を本気でしてくれているようで研究室に篭りっきりだ。
たまたまカラス大尉が発掘のバイトで見つけたあの化石だが、境界国と精霊国の周辺から発掘したものだということで今では貴重な化石になっている。
魔法猫の話は飼い主であるシャルロットも知らない話だと言う。
「にゃあ……にゃあ……」
「キュー……それは本当ですか……キュ」
なんだろう?
ミニドラゴンのルルが何故か驚いているようだ。
魔法猫の見解があっていれば、境界ランプの持ち主として現れた境界国の王ハザード王はハザード王の影武者であるランプの精霊なのではないか?
そして、そのランプの精霊こそ先代精霊王ジンその人だという。
魔法猫は境界ランプが作られた頃からずっとランプの精霊を務めていて精霊王ジンにも何度か会っているそうだ。
そして精霊王ジンは12番目の最後に作られた境界ランプの精霊を務めていたのだという……。
12番目のランプの持ち主はソロモン王。
ハザード王の先祖にあたる人物だ。
精霊王ジンがランプの精霊ジンならどうしてその時に魔導王はソロモンにならなかったのだろう?
本物のハザード王はどこにいるんだ?
魔法猫は長年ランプの精霊を務めていた自分を無理やりランプ契約解除できる精霊力の持ち主は精霊王ジンしか知らないそうで遠隔攻撃された時に確信したそうだ。
先代精霊王ジン……いったい何をしようとしているのか……。
謎が解決されないまま、時間が過ぎようやく境界国の入国制限が解除されたのだった。
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