第23話古代都市の洞窟

魔法のランプを継承した者が魔導訓練のために利用する伝統的な洞窟が古代都市にある。


リー店長から手渡された地図にはあの有名な呪文『開けゴマ』の文字が書かれていた。


『開けゴマ』のおとぎ話はあまりにも有名なので誰でも知っていると思うが一応説明する。

悪い魔法使いに洞窟の中にある魔法のランプを取りに行かされるシナ国の若者アラジン、その洞窟を開閉するための呪文が開けゴマだ。


やはりこの洞窟に入るには開けゴマの呪文を唱えるのだろうか?


「リー店長、やっぱりこの洞窟って開けゴマの呪文を唱えないとダメなんですか? それとも何かの比喩表現とか?」


するとリー店長はクスリと笑って答えた。


「うーん、開けゴマはメジャーな呪文すぎてセキュリティーの安全性が低いからもう使われていないんじゃないかなぁ。あえて言うなら比喩表現なんだろうね」


やっぱり比喩表現か。


「つまり、この洞窟で訓練すれば開けゴマと言わんばかりに魔法使いへの扉が開かれる……内面的なね。そんなところかな? 水や食料を調達して準備ができたらすぐに出発だよ」


そのランプに行き先を伝えれば行けるからね……とリー店長。


「水、携帯食料、日焼け止め、傷薬、着替え……ふう、三日間テント生活になりますのでいろいろ必要ですね」


精霊セラが必要な道具をひと通り揃えたところで境界ランプに命じて古代都市の洞窟までワープした。


ランプから煙が出て景色が歪む。

空間移動が終わると、目の前には砂漠が広がり、遠くに遺跡となっている古代都市が見える。

岩山の隙間に都市だった名残の住居らしき建物がいくつもあり、現在は観光客が訪れる土地となった。


ラクダに乗って砂漠を周遊したり、ベリーダンスのショーがあったりとツアーのお客さん向けに企画があるようだがオレ達は観光に来ているわけではないのでその辺はお預けである。


洞窟は魔導師の訓練場のため一般客は立ち入り禁止となっているそうだ。


観光地なのでキャンプをする許可が必要だがリー店長が手配してくれたおかげでスムーズに進む。


夕陽が落ちてきているため早めにテントを張らないと不安だ。


「私におまかせ下さい」

精霊セラが呪文を唱えてあっという間にテントを組み上げた。

テントと言ってもかなり大きめで中にはベッドが置いてあり砂漠地帯特有の夜の寒さも凌げそうだ。


「今日はもうすぐ日が暮れるので早朝から洞窟に入って訓練を受けることになります。訓練用の精霊にも連絡をしたそうなので頑張って下さいね」


訓練用の精霊……。

一体どんな精霊なんだろう?


訓練は3日間に分けて行われるそうだ。


1日目は魔法力を上げる魔導訓練。

2日目は体術のみの訓練。

3日目は総合訓練。


「たった3日間で、強くなれるのかな?」


明日から始まる訓練に向けて魔力を高めるという薬草入りのスープをセラに作ってもらい滋養と魔力を高める。


ボディーガードと称してミニドラゴンのルルもオレの訓練に付き添うことになったので同じようにスープを飲んでいるが、可愛いだけのペットのようなルルがそんなに強いドラゴンにも見えない。


やはり不安である。


すると魔導師のアティファが答えた。


「これは私たち魔導師達の噂なんですけど、洞窟の中は外の世界と時間軸が異なっていて1日が1週間くらいの長さになるそうです。だから3日間で3週間分の修行が出来るんだと思いますよ」


「3週間?」


次のテストまで1週間しかないので焦っていたが、3日間で3週間分の訓練が出来るなら多少は強くなれるかもしれない。

夜営で眺める星空はとても美しく、オレに僅かな希望をもたらした。


その日の夜、キャンプの暖かいベッドで睡眠を取ったオレは不思議な夢を見た。

暗い洞窟の奥に黒い棺がチェーンでグルグル巻きになって封印されている。

傍らには巨大な魔神が棺を守るように眠り続ける。


棺のチェーンがカチャカチャと揺れて動く。


出してくれと言わんばかりに。

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