第22話魔導訓練開始
「炎の精霊イフリートよ、我と契約の下その意思をここに示せ!」
ゴオオオ……!
青空に向かいどこまでも上がる灼熱の炎が魔力の言霊に呼応し発する。魔導師のアティファが魔法初心者のオレのためにお手本を見せてくれた。
現在の拠点となっている境界国コテージエリアの中庭に設置されたバーベキュースペースで食事の準備も兼ねて魔法の訓練タイムだ。
すごい……こんな魔法最近まで呪文すら知らなかったオレに使えるのだろうか?
「じゃあアティファちゃんのお手本を真似て、千夜君やってみて!」
リー店長に促されてオレも同じように呪文を唱えるが……。
ボワン!
なんとか小さな炎が出るものの、アティファのような渦を巻くような炎を出すのは無理だ。
「やっぱり、オレみたいな初心者が攻撃魔法を覚えるなんて無謀なのかな?」
オレはリー店長からバイト代を前借りして購入した魔導師のリングを眺めた。
魔力が備わったエメラルドに似たグリーンの石が嵌め込まれた金の指輪。右手の中指に嵌めて使っているが、魔導師のアティファのようには上手くいかない。
「いやいや、初心者にしてはなかなかイケてると思うよ千夜君! ……ただ他のライバル達はキャリアの長い鍛え抜かれた魔導師達だからね。千夜君の魔力だとちょっぴりツライかも」
そうだよな。
「火も付きましたし、どんどんバーベキュー進めましょう!」
精霊セラがエプロンを身につけて、甲斐甲斐しくバーベキュー用の野菜や肉を焼き始めた。
「キュー! ボクお肉食べたいキュ」
ミニドラゴンのルルものんびりバーベキューを楽しむつもりらしい。
昨夜、魔導アイテムのタロットカードを監視者メシエから手渡されたものの普通の占いの道具としての使い道しか分からなかったため、オレ自身が呪文を覚えて魔法が使えるようになる方向性で訓練をすることになった。
次のテストまで1週間ほど時間がある。その間に他の魔導師達と対等に渡り合える特技が欲しい。
「千夜さん、たくさん食べて体力つけて下さいね!」
精霊セラは魔法がイマイチ上手く使えないオレに気遣ってくれているのか、上手く焼けた山盛りの野菜や肉の乗った皿を手渡してくれた。バーベキューソースの美味しそうな香りがする。
程よい焼き加減の肉をもぐもぐ咀嚼して、シュワシュワのソーダ水を飲む。
のんびりコテージの庭でバーベキュー……観光旅行だったら楽しいだけの思い出に出来るのに。
「食後は私が千夜さんに体術の訓練をします。護身術の基本を身につけておくのも重要だと思いますので……」
と精霊セラ。
体術?
細身の精霊セラが体術?
「あはは、セラはこう見えても格闘系の精霊なんだよ! ボディーガードとして優秀な子がランプの精霊を務めるからね」
リー店長が、意外そうな表情でセラを見ているであろうオレに説明する。
食後、人が変わったかのような厳しい目つきで魔法で召喚した訓練用の屋根瓦や巨大な石を素手で破壊するセラ。
「キュー! すごいでキュー! かっこいいでキュー」
ミニドラゴンのルルが興奮気味に口から細長い青白い炎を吐いた。
ルル……一応あいつもドラゴンなんだな。
「千夜さん……最終目標はこの巨大な岩を素手で破壊することですが、今は魔力を手に蓄積してこの瓦を破壊する訓練にします」
オレはセラに習った方法で手に魔力を集中させ瓦に正拳突きをした。
バリン!
用意された瓦が全部砕けた。
すごい、こんな技オレにも出来るのか?
「なかなかいい線行ってるね千夜君! もしかしたらこの洞窟も攻略可能かも?」
オレにリー店長が地図を見せて提案した。
「千夜君! 実はね、伝統的なレベルアップが出来る洞窟が古代都市にあるんだよ。この地図あげるからちょっと洞窟探検してきて、一気に魔力も体術もレベルアップしちゃおう! うん、それがいい」
洞窟? レベルアップ?
異国の言葉で『開けゴマ』と書かれた地図を貰ったオレは魔力と体術の訓練を兼ねて古代都市の洞窟に向かうことになった。
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