第18話隠者のカード
シャルロットの魔法猫がオレにちょっかいを出してきたが、そのこと自体とりあえず言わないほうがいいのだろう……何があってもポーカーフェース。リー店長が言っていたのはこういうことが起こるからなのかもしれないな。
「リー老師が私のことも一緒に食事にって誘って下さったの……ご一緒させて頂きますわ」
シャルロットが金髪のポニーテールを揺らしてオレに近づいてきた。
魔法猫はアティファがペットセンターに連れて行ったので今のところひと安心だが……。
オレの隣の席に美少女シャルロットがちょこんと座った。まるでお人形さんが動いているかのようだ。
『血を引き継ぐのよ。シャルロットを抱いて子供を作り新しいランプの持ち主を作るの……』
シャルロットを抱いて子供を作り、新しいランプの持ち主を作る……。
オレは魔法猫に言われたセリフを思い出してしまった。
そして、そのシャルロットが今オレのすぐ隣にいる……。
透き通るような白い肌、年齢の割に大人びた表情、大きく可愛らしい目、頬はうっすらピンク色、ほんのり赤く艶めいた唇、女性らしいラインを描く清らかな胸……。
こんなキレイな女の子を抱くようになんて言われたら意識しちゃうじゃないか? あの猫何考えてやがるんだ?
「あの、ジロジロ見ないでくださる?」
シャルロットに視線を送り続けていたのが本人にもバレているようだ。
精霊セラが咳払いした。
「いや、あの猫結構デカイから肩にいつも乗せていて大変だろうなって……」
「あの子は私の大事な魔法猫ですの。大変とは思いませんわ!」
そうなんだ……。
あの話すとナマイキな魔法猫を大事にしているとは……。
するとリー店長が用事を片付けたのかヘラヘラした表情で席に着いた。
「いやあ、なんか猫ちゃん迷子になってたみたいだねえ。無事保護できて良かったよ」
リー店長は本当のことはシャルロットに言うつもりはないようだ。
「私の可愛い魔法猫を保護していただき感謝していますわ」
私の可愛い魔法猫……。
あの魔法猫は私の可愛いシャルロットって言っていたような……猫からするとシャルロットの面倒を見ている気になっているんだろう。実は猫がランプの精霊らしいから長生きしてそうだし。
アティファがペットセンターの用事を終えて席に着いた。
リー店長がディナーセットを注文し、夕食は穏やかに進んだが……。
オレがステーキを食べ終わり、デザートのジェラートアイスを食べようとした時に占い師が近づいてきた。
「みなさんこんばんは。私、このレストランで期間限定でタロット占いをしております。どうですか? 恋占いか何かしてみては?」
占い師の男は全身黒づくめのローブを着て、水晶玉を手に持ち、ピエロのようなメイクをしている。髪の色はブラウンだ。
「悪いけど今アイスを食べているんで」
オレがやんわり断るのを聞いていなかったのか、もしくは強引なのが手法なのかタロットを引き勝手に占いをし始めた。
「おやまあ。大変ですね……このカードは」
何がどう大変なのか、こちらから聞かなくても解説してくれるようだ。
「まず、あなた自身について……隠者のカードです。このカードは暗い中を隠者の男がランプを手に持ちランプの灯りだけを頼りに生きていくとても孤独なカードです。ランプだけでは灯りが少ない……そう思いませんか?」
よりによってランプかよ。
オレは確かに境界ランプの持ち主だがそれしか頼るものがないわけじゃない。
セラやルル、リー店長、最近ではアティファも仲間になった。
ランプが無くても大丈夫……。
そう考えたかったが、それらの仲間は皆境界ランプで繋がっていて確かにランプだけが頼りの状態であることには変わらない気がした。
「そしてこれからのあなたの人生……恋人のカード……不幸なことに逆位置ですね。三角関係や移り気、欲に駆られないように注意が必要ですよ」
確かに今のオレはセラを可愛く思いながらシャルロットの事をそういう目で見つつありとても移り気な……ってだからと言ってすごく恋愛に夢中になっているわけでもないし、キレイな女の子を見てキレイと思う感情は正常なハズだ。
「あいにくオレ恋人いないんで……」
微妙に当たっているタロット占いに嫌気がさしつつも、オレはポーカーフェースを貫くことにした。
「これからドラマティックな恋が始まるのでしょう! もう出会っている人かもしれませんが注意が必要ですよ!お代はお気持ち程度で結構です」
やっぱり金を取るのか……
リー店長がヘラヘラしながら
「千夜くんなんか当たっているっぽくて嫌な占いだったねえ」
とかなんとかいいながら占い師に代金を渡した。
すると占い師は多めの代金に喜び「おお! こんなに……ではサービスで新品のタロットカードセットを差し上げましょう。22枚の大アルカナで構成されたシンプルなカードセットですが何かの役には立つハズです。……頑張ってくださいね響木千夜(ひびきせんや)さん」
最後に耳元でオレの名前を呼んで占い師の男は去って行った。
「何かの役立つってさ! 千夜君、君もそろそろ魔法を覚える時期なのかもね! 頑張ってカード魔法覚えてね!」
カード魔法……オレは不思議と手に馴染むタロットカードセットをぼんやり眺めた。
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