第16話美しい刺客
「ニャア」
オレ達がコテージエリアで1番大きいレストランでディナーに向かう途中、紫色の羽の生えた猫に遭遇した。
その猫は境界ランプの持ち主で魔導師貴族の令嬢シャルロットの使い魔猫だ。
猫の首輪にくくりつけられているメモには
《シャルロット嬢は預かりました。彼女を助けたければランプの権利を差し出すように》
と書いてある。
「どうしよう。リー店長、これって拉致? 助けないと」
「千夜君、落ち着いて! シャルロットちゃんが今どうなっているかは精霊王の使いがテストの監視役で見張っているからちゃんと上層部は把握しているハズだよ。このテストは決まりで他のランプの持ち主に協力しちゃいけないっていうのがあるんだよ。千夜君を脱落させようとしている人からの罠かも知れないし……」
オレはリー店長の意外な答えにちょっとムカついた。
「ワナ……? たとえワナだとしても、心配するのは当然なんじゃないんですか?」
「そうだけど……シャルロットちゃんは君よりもずっと戦闘能力の高い攻撃魔法の使い手なんだよ。とりあえずこのメモはボクが精霊王の使いに届けるから千夜君達は何事もなかったようにレストランに行ってて。 ポーカーフェイス! 分かった? まだテストは続いているって考えて慎重にね!」
ポーカーフェイス?
すると精霊セラもリー店長の意見に賛同した。
「このテストはまだ終わっていないのかも知れません。シャルロット嬢の無事は精霊王の使いが完全に把握しています。動揺して軽率な行動を取らないように……。考えてから動くのも王の資質かと思います」
ミニドラゴンのルルがシャルロットの猫に何か話しかけている。
「キュ〜キュキュ〜〜」
「ニャアニャ〜ン」
会話がひと通り終わったようだ。
「キュ〜気付いたらシャルロットと離れていてここにワープさせられたって言ってるキュ!」
それだけじゃシャルロットの行方が分からない。
「……とりあえず、リー店長の言う通りレストランに入って普段通りに振る舞うか……」
レストランは朝食事をとったところより広めで高級なカンジのところだ。
「申し訳ございません。当店はペットの入店は禁止しております。ペットセンターかコテージに預けてからお越しください」
「ニャアン」
「キュ〜」
ミニドラゴンのルルはともかく、シャルロットの猫はオレ達のペットじゃない……オレ達のコテージで預かればいいのか?
「私、この子達をコテージに連れて行きますね!」
アティファがルルと猫を抱っこしてレストランを出ようとした……
その瞬間、猫の目がギラリと光り、レストランの人々の時間が完全に停止してしまった。
レストランの定員や客はもちろん、精霊セラやアティファ、ミニドラゴンのルルもビクともしない。
動けるのは、オレと紫色の羽の生えた猫だけだ。
「ツメが甘いのねボウヤ……」
シャルロットの猫が人間の言葉を話し始めた。
「お前……一体?」
「魔導王の玉座に相応しいのはあの子シャルロットなの……あなたにはここで死んでもらうわ」
そう言うとシャルロットの猫は紫色の髪の美しい人間の女性に姿を変えて短剣をオレの首筋に突きつけた。
浅く切られた首から血が滴り落ちる。
「玉座はボウヤには渡さない」
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