第3話女勇者ソーニャはちょっとおかしい娘みたいです


 ある日、この世界に魔王が魔物と共に現れた。

 魔物は人間を殺し、大陸を席巻しようとしている。

 人は魔物を殺せるが、魔王を殺すには聖剣の力が必要らしい。

 そして聖剣を扱えるのは勇者だけ。

 今、この世界では人類は劣勢のようだ。

 それは魔王を殺さなければ魔物が無尽蔵に生まれてしまうことが起因となっているとか。

 なので魔王を殺せる勇者の存在は必須らしい。

 道すがらソーニャが説明してくれた内容をまとめると、そんな感じだ。


「――というわけよ。というかなんで当の聖剣が知らないのよ……」

『まあまあ。それでソーニャはその勇者に選ばれた、と?』

「正確には聖剣を抜く前に試練があって、それを乗り越えた人間だけが、聖剣を抜く挑戦権が与えられるのよ。

 それで、私が抜いたってわけ。五百年で私一人よ、勇者となったのは」


 ソーニャは自嘲気味に、胸を張る。

 豊満な乳房がプルンと揺れたので、凝視しておいた。

 ちなみに、俺は手に抱えられたままだ。

 鞘がないからな。

 むしろこのままでいいよ?

 鞘で刀身を覆われたら視界が塞がれるだろうし。

 はぁ……歩くたびにおっぱいが揺れるのが最高だわ。

 ノーブラみたいで、乳房に硬さがない。

 ありがとう、中世!

 ブラを作った奴は許さないんだからね!

 ……いや、でも下着姿ってエロいよね。

 つまり、どっちもいいよね!

 なんでもいいよね!

 蛇足だが、俺は乳より尻が好きだ。

 だが乳も好きだ。

 女体なら何でもいい。


『それで、俺は何ができるんだ? やっぱりあれか、凄い切れ味とかかね?

 なんかすんごい力があるんだろ?』

「……さあ?」

『さあって、あーた』

「五百年も経てばよくわからなくなっても仕方ないでしょ。

 伝承では魔王と対抗する力があるとか言ってるけれど」

『ま、まあ、魔王を倒せるのが俺だけって言う利点があるわけだしな。

 それでいいよね!』


 なんか凄いエネルギーを放出して、すごい広範囲の敵を一気に倒したりできないんだろうか。

 ビームとか、衝撃波とかさ。

 ……我ながら馴染み過ぎだな。

 自分の境遇を省みるとなんだか鬱になりそうなんだもん。

 前向きに生きようや!

 とりあえず、エロい美少女と共に過ごせるという人生、いや剣生最大のイベント中なのだ。

 楽しまなければ損ってもんでしょ?

 俺達は高台から離れ、森の中を通っているが、目的地を聞いてなかったな。


『それでどこに向かってるんだ?』

「勇者を育てる村があるのよ。そこに戻るとこ」


 ソーニャは面倒くさそうにしながらも答えてくれた。

 勇者を育てる村。

 ほう、なるほど。中々響きがいいじゃないか。

 つまりその中で唯一の勇者となったのがソーニャということか。

 彼女は中々優秀なのだろうか。

 まあ、見た目は優秀だ。

 雌としてだけど。

 不思議と、剣になっても煩悩はなくならないらしい。

 しかし、なぜだ。

 ソーニャを見ているとそこはかとなく下半身も熱く硬くなってきたような……。


「ん?」


 ソーニャが不穏な言葉を吐く。

 まさか、おティムティムがスタンダップしてしまったのか。

 剣になっても雄の象徴は健在だと?

 いやいや、さすがにないわ。


『ど、どうした?』

「……いえ、なんだか柄が熱を持っているような。というか力を感じる気がして」


 せいよくなら駄々漏れしているよ。


『き、気のせいじゃないか?』

「そう、かしら。そうね」


 まさかエロい妄想が勇者には伝わってしまうのか?

 会話は話しているような感じだが、実際は感覚的には頭の中で言葉を響かせている風だ。

 テレパシーに近いかもしれない。

 つまり、心の中の声も漏れてしまうのかもしれないのだ。

 危ない危ない。

 もしも俺がスケベだとバレたら、警戒されてしまう。

 そうしたら、これからの生活に暗雲が漂うじゃないか。

 俺は剣だ。

 つまり、ソーニャも大して気にしないだろう。

 目の前で着替えたり。

 裸体を晒したり。

 時には劣情を発散させるために一人プレイに耽るかもしれない。

 そうだ!

 今は身動きが取れないが、どうにか自分で動けるようにならないだろうか。

 聖剣なのだから、それくらいはできそうなものだが。

 ソーニャは自我があるただの剣だと思っている。

 ならばそれを逆手に取り、寝静まった時を狙って……。

 絶対に動けるようにならねば!

 聖剣だしちょっと動くくらいできるようになるよね!

 とにかく、表向きは普通を演じよう。

 今の俺は、マイナス要素がない。

 デブでもハゲでもブサイクでも口臭が臭くともないのだ。

 人のように見た目で判断されることはないのだ。

 ならば剣生を謳歌しようではないか!。


「しかし、なんか思ったより、普通の剣なのよね」


 俺の大きな野望など知らぬソーニャは訝しげにつぶやいた。


「あなた本当に聖剣なの?」

『記憶がないし、知らんがな』

「なんか普通の人間っぽいのよね。声は中性的だけど」


 ほう? ソーニャには男とは気づかれていないようだ。

 転生前はドブ声、地獄からの叫び声、声だけでブサイク度100%とか言われた俺だが、剣になってからはそれもリセットされたらしい。

 ありがとう神様! 

 剣にしてくれてありがとう!

 とにかく、男だと思われていないのは好都合。

 これから、あんなことやこんなことを目論んでも構わんよね?

 また妄想に耽ろうとしていた時、視界に巨木が迫ってきた。

 ギャン! と金属音が響く。


『ギャアアアアア!』


 痛い、覚悟してなかった分、余計に痛い!

 なにしてんの、この娘!

 妄想タイム中に、何を思ったか木に俺を叩きつけやがった。


「ちょっとうるさい」

『ご、ごめん』


 だっていきなり叩きつけられたら痛いでしょ?

 しかし敢えて口にはしない。


「切れ味は普通? ううん、ちょっと悪いかも」


 俺のことなんて無視して何度も何度も樹木を斬る、もとい叩くソーニャ。


『ちょ、やめ』


 制止の声も、ソーニャには届かない。

 しかしこんな状況でも悲しいかな、エロ魂は健在らしく、振り上げられた時に見える胸の谷間に視線を奪われる。

 たゆんと揺れる二つの山。

 顔面に叩きつけられる樹木。

 木、胸の谷間、木、胸の谷間。

 交互に訪れる、悦楽と痛痒に俺の感覚は麻痺していく。

 もう全部気持ちよくなっちゃったりなんかしているのだ。

 元々、痛みには強い。

 むしろ悪くない。

 むしろどうぞどうぞ!

 なので、状況的にはおいしかった。


「あれ? どんどん切れ味が増しているような」


 胸の前に俺を持って来て、刃先を確認している。

 もちろん俺は目の前の乳房に夢中になる。

 もうちょっと! もうちょっとで突端が見える!

 勇者と言いながら露出の多い服装のソーニャに俺は感謝していた。

 なぜこんな服装なのか、言及は必要ない。

 今はただ、享受するのだ。

 エロは人を救う。

 現代人はエロを否定し過ぎだ。

 下ネタに嫌悪感を抱く女に、まともな奴はいない。

 潔癖症な女にまともな家庭は築けないのだ。

 夫婦はエロ、恋人もエロ、好きな人にもエロ。

 互いにエロい感情を抱くのが当然なのだ。

 そこに男女は関係ない!

 肉体関係がなくなった男女の関係は最早、ただの馴れ合いである。

 女との友情関係が成り立つか?

 成り立たないんだよ!

 男はいつもエロいこと考えてるの!

 やりたいの!

 表面上ではそんなことはないと言ってる奴を誘惑したら、ついついやっちゃうんだ♪ みたいになるから!

 もしならないならそいつは同性愛者かインポかピュア童貞だから!

 その本能を無理矢理に否定している人間は間違いなく、嘘を吐いている!

 ※主人公の主観的な意見です。


 下ネタに「やっだぁ、そんなこと言わないでよぉ」とか言いつつ、笑ってくれる女がいたら最高だぜ!

 まあ? 俺が言うと誰でもドン引きなんだけどね!

 とにかく!

 性欲は生きる糧であり、子供を作るという神聖な行為の元でもあるのだ。

 そう、性欲は人類繁栄に最も必要な欲求なのだよ。

 だから俺がソーニャのおっぱい、それどころか乳首を見ようとしてもおかしくない。

 むしろ健全。

 俺が人間じゃなくなったとしても、人間の名残があるのだからおかしくない。

 だったら見よう。

 みんなで見よう。

 みんなでおっぱい見れば怖くない。

 さあ、来い来い!

 ピンクの突起物を見せておくれ!

 あ、くすんでるのはNGだから。

 と、胸元を見ていたが、それもすぐ終わった。

 そしてまた、木に叩きつけられる。

 うっほぅ、いったいぞぉ!

 ギャンギャン、ザクザク響き渡る音。

 それがしばらく続き、さすがに俺の身体が限界を迎えた。


『ちょ、待って、マジ、もう、む、無理、だから』

「え? 痛いの?」

『い、いや痛いというかそれも悪くないというか。でも限界があるというか』

「ふーん。まあ、いいわ」


 よくないわ!

 悪くもないけど!

 なんか、完全に物扱いされてるな、俺。

 ソーニャからしたら、ただの剣なのだからおかしなことでもないか。

 ただ自我があるのだから、もう少し気にしてくれてもいいような。

 待てよ、そうなったら一々遠慮されてしまうじゃないか。

 そうなったら『物だから気にしてなかったわ、エへ☆ ラッキースケベ展開』がなくなってしまう。

 ここは無心に、できるだけ話さないようにしておくべきだろう。

 部屋の家具とかに配慮したりしないでしょ?

 それを目指そう。


「状況によって切れ味が変わるのはどうしてなのかしら」

『さ、さあ』


 俺にはその理由がわかりつつあった。

 煩悩全開の時は、なぜかざっくりと木の幹半分ほどまで斬れているのだ。

 しかし通常時は刀身半分程度しか斬れない。

 そう、つまり。

 俺のエロパワーによって、俺の切れ味は変わっているのだよ!

 うん、言えない。

 こんな変態な剣、下手すれば捨てられちゃう。

 これは絶対に黙っておこう。


「まあいいわ。とにかく戻りましょう」

『そ、そうね。それがいいね』


 どうやら満足したらしい。

 さすがの俺も、これにはほっとした。

 ソーニャは俺を小脇に抱え、再び道を歩き出した。

 この娘、中々に自己中心的である。

 いいね。

 そういうのいいよね。

 優しい子だとどうしても気を遣うもんね。

 だったら、こういう生意気な娘の方がこっちも気兼ねなくできるってもんだ。

 俺は未来に思いを馳せた。

 そして、これから始まるエローライフに心が踊ったのだった。

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