第11話 子どもたちの未来
年が明けて安楽死法が施行された。
それに伴い、自殺者は5倍に増えた。
職を失い、生活苦になった者はもちろん、未来に絶望した者、大切な人を失った者、たくさんの者たちが様々な理由で死を選んだ。
ただ、安楽死法では、安楽死できるのは18歳以上の成人のみと定められており、子どもは対象外だった。
そのため、子どもを持つ家族は無理心中するか、子どもを残して死ぬかの選択を迫られた。
未来に絶望した者たちは、子どもを連れて死んでいくが、子どもに希望を託す者、安楽死以外の方法で死ぬことに抵抗がある者は、子どもを残して死ぬ道を選んだ。
その結果、多くの子どもが孤児となり、その数は安楽死法案施行前と合わせると1万人に達する勢いだった。
政府は当初からこの状況を予測し、教育費の無償化はもちろん、孤児たちのための寮整備、生活保護を行い、孤児たちにも不利益がない教育をすることに余念がなかった。
ただ、子どもたちの置かれている環境は決して甘いものではなかった。
子どもとして保護されるのは18歳までなので、その先進学してさらに保護を受けるか、特異な才能を開花させ、就職難を逃れなければ生きていけない。
実際、10代の安楽死率も高かった。
特異な才能を持たない多くの子どもたちが目指したのは進学、そして龍崎アンドロイド研究所への就職だった。
アンドロイドを仕事にすれば、食うに困らない、単純な動機だった。
龍崎アンドロイド研究所は、子どもたちにとって、単に就職したい企業というだけでなく、未来そのものであり、生きていくための居場所だった。
龍崎自身は、子ども教育に関しては多額の援助をしていたものの、就職には厳しい目を持っていた。
一次、二次試験は部下に任せていたが、最終的には龍崎が直接面接した。
候補者が何人増えようと、それは変わらない。龍崎は自身が一緒に働きたいと思う若者しか採用しなかった。
龍崎が一緒に働きたい若者、それはアンドロイドに並々ならぬ情熱を持っている者、それだけだった。
龍崎アンドロイド研究所の人気に伴って、面接攻略本も数多く出版されており、当然龍崎の最終面接の攻略もされていたが、龍崎は何も変わらず、面接で聞くこともひとつだけだった。
「君は、なぜわが社で働きたいのか」
龍崎が聞くのはそれだけだった。
新卒も中途採用も関係ない。
龍崎が求めるのは熱量であり、それは目を見れば分かると思っていた。
逆に、どれだけアンドロイドの知識があろうと、大学で研究していようと、それを雄弁に語ろうと、熱を感じない者は採用しない。
たとえそれが、誰かの安楽死に繋がったとしてもー
龍崎は常に新しい熱を求めていた。
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