第14話 留守の合間に② ◆

とりあえず、鏡で色々ポーズをとって見た。


だがしかしっ!

一番の女体の神秘を見るには、ちょっと俺にはハードル高すぎた。

チャレンジしただけで、許してくれ。


すーはー。

すーはー。




よし、改めて。


美少女は全裸になっても、美少女だった。

白い肌に成長途中の女性の体つき。

多分、同性だって綺麗だと言われる体だろう。



もちろん、男にはない胸の膨らみには触ってみる!



「……あれ?」



ふにふに。

ふにふに。



俺は二の腕や太ももも触ってみる。



柔らかい。

確かに男だった時の体より、柔らかくて断然さわり心地はよい。

だけどよくある「ふおおおっ」て感動するパターンにならないのだ。

なんていうか、もっと「キター!」って男の欲がかきたてられるのかと思ったのだ。



鏡の自分の体に視線を戻してみる。



……というか、今俺は全裸女体を見ているのに興奮してなくねーかっ?



「そういう欲はない体になっちまったのか!?」




「ななな、何をなさってらっしゃるんですぅ~‼」


振り向く。

ラウニが寝室を覗き込んで、声を殺しながら強い調子で俺に声をかけていた。

俺の様子に騒ぐとますます大事になると判断し、急いで中に入り込み寝室の扉を閉める。

これで、とりあえず、声は廊下に届きにくくなった。


「一人にしてくれって言ったんだけど?」

「それでも一応、様子を伺うものですっ!」

「ちっ」

「また、舌打ちしましたね!?とりあえず、服を着てください!」

「やだ」

「あ。ちょっと可愛いです。……っていけませんっ!」

「そもそも、女の服は動きにくいんだよ!」

「そういうことではありません!」


脱ぎ捨てた服を着せようとするラウニの手から逃れようと、俺は抵抗する。


「わーった!わーった!」


俺はベッドのシーツを引っ張りだし、体に巻き付けた。


「どうだ!」

「……どうだじゃありませんよ…」


ラウニは、持っていた服を俺のむき出しのままの肩を覆うようにかけ、そのまま二の腕に触った。


「ああ、もう!こんなにお体が冷たくなって!」


すりすりと温めるように触った。


「一体、どうしたのです。また、何かお心に溜まってしまったものでもあるのですか」


ラウニ心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。

そんなラウニには悪いが、俺は別の事に気をとられていた。


「暖かくて、気持ちいい……」

「そうですか?」

「ラウニの手は柔らかくて気持ちいいな」

「お褒めに預り光栄です。でも、アキラさまもスベスベでとっても気持ちよいお肌ですよ」


俺はラウニの手をがしっと掴んだ。


「ラウニ!お願い!ちょっと触らせて!」

「はい。……はい?えっ!ええっ?」


戸惑うラウニの手を引き、ベッドに腰かけさせる。


「よく分からないんだよな。自分の身体」

「はい?」

「他の女の子の身体なんて見たことないから」

「……ふえっ」


気分はお代官さまの「よいではないか。よいではないか」になってきてる。

握った手の袖口から始めて見よう。

ボタンをはずして腕をむき出しにし、手先から肘へ指を滑らせてみた。


女の子の肌だぁ。

俺は感動した。


やわやわ。


「ひゃああっ」


スベスベ。


「ふえええっ」


あー。気持ちいいなぁ。

この感触。

自分の身体と何が違うんだろ。

もしかして、自分で自分を触るからか?


「あ、あの。もう、いいですかぁ~」


あ、ラウニは、想定外すぎるとどじっ娘になるのか?


「まだ」

「えええ~」


ぺたぺた。

すりすり。


俺は調子に乗った。

ラウニの腕だけじゃなく、顔や首を撫でていく。


「アキラさまぁ、どこまで触るんですかぁ」

「んー、ごめんなー」


相手が女の子だからラウニはそれほど抵抗しないんだろうけど、よく考えたらこれはセクハラを越えてる。

見た目は女同士だけど、中身は普通の男女だから。


「あっ……」


どこがポイントかわからないが、気付けばラウニが赤い顔して震えていた。

侍女でも姉でもない。

女の子の顔。


俺はようやく「女の子の肌」に触れている事を実感してきて、もやもやし始めた。


あ!

キタキタ!

これだよ!これ!

俺の中の「男」の欲望!


「きゃっ……」


ラウニを押し倒す。


ちょー触りてぇ。

ちょー触りてぇ。

ちょー触りてぇ。


「あ、だ、ダメですぅ~」


俺は衝動のまま、侍女服の胸元を開いた。

ラウニの白い胸があらわる。


俺よりはでけえっ!

綺麗だし!


躊躇なく手を伸ばした。


「だ、だめぇぇっ」


ーぽゆんっ!


ふおおおお……おおっ?


ぽゆん、ぽゆん。


……おお?







ぐずっ……ぐずっ……



「……はあ………」


まだ嘆くラウニには悪いが、俺は本当にショックだった。

「男」の衝動のままに触れた途端。

その衝動は急に無くなってしまったのだ。

代わりに感じた意識は……。


なんだろう、あれは。

しかし、覚えはある。

そう、喧嘩仲間とお互いに身体を見せあった時だ。

割れた腹筋を触った時のあの感じ。

「すっげぇじゃん!筋肉!」

もちろん、そこには性的な意識はない。

純粋な同性としての肉体への憧れ。


同性としての。


「はあああああ……。マジかよ」


男としての欲望は変わらない。

だけど、触れてしまった途端に、身体の性の意識になってしまうとしたら。


「はああああ……」

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