第5話「Crazy Plastic Moon」


前回のお話で唐突に大学に出没するとかいう謎の化物と謎の存在:D-SHOOTERの話題を切り出した逆立ち君!はたして、それは一体どんなモノなのか!?



……という感じで、今回の話は始まるのである。ウス。




「……んで、その化物?とD-SHOOTER?って何?」



その場にいた若人が逆立ち君に意地悪い口調で聞き直した。そういやお前、普段から妙に意地悪そうな喋り方してるよな。

それはさておき、そんな意地悪そうな聞き方をした彼を物ともせず、逆立ち君は静かに、そしてCrazyに語り始めた。



「それはね、ここだけの話なんだけど…………」

















ここでまぁウマく登場人物のセリフとかを交えながら事の謎といった諸々を小説風に書けたらよかったのだが、あいにくそんな技術はない。というか、面倒くさい。なので箇条書きで記す。スマンな。



・月の出る夜に、この大学のキャンパス内で謎の化物が出没するのだという。(あくまでも噂だけど。)



・しかも、その出没時刻は決まって21時以降。



・で、その謎の化物の発生原因は分かっていないのだが、一部の学生間では「D評価(※1)が多すぎてあらゆる負の感情に心が潰された学生の成れの果て」とも言われている。んなアホな。



※1 D評価……午史たちの通う大学において、成績は「S・A・B・C・D」の段階で評価し、単位を与えている。その中でSが最も高く、Dが最も低い。そして単位が認められるのはSからCまでの評価であり、D評価は不合格・つまり落単(単位を落とした)ということとなる。勿論、D評価だらけだったら留年不可避。それにこの大学では"単位を落としたら即留年!"な必須科目も存在するもンだから、Dの文字を見て涙する学生が後を絶たない。故に、Dというアルファベットはこの大学では呪われた文字なのである。



・そんな訳だからなのか、その化物のことを"D-Grade Monster"と呼んでいるヤツもいる。略して"Dグレ"とのこと。……筆者もそう表記させてもらおうと思う。



・で、その化物に襲われたらさあ大変!ありとあらゆるエネルギーを吸収されるわ首とか身体をスゲー絞められるわ、そんで最終的には喰われる。まぁ要するに死ぬ。大変だね。




……とまぁ、謎の化物については箇条書きで陳列させてもらった。スマソ、スマソ。





「へぇ~……んで、その化物に出くわした時の対処法とかは無いの?」




またしても意地悪そうな口調で逆立ち君に言葉を投げる。テメェはアレだな、"グチ澤グチ男"と呼ぶことにしてやろう。勿論、オレの心の中でだけね。実際そう呼んじゃったら、ダメでしょうよ。そりゃ。


まぁ、逆立ち君はどんな口調で突っかかってこられても怒らないし、不快感を示したりもしない、優しい奴だからいいンだけどさ。




「ウ~ン、無いことは無いらしいんだけど、でもそこよく分かってないんだわ。もしかしたらオレたちには対処できないようなヤツかもね。」



皆、ふ~んと唸る。ウナウナうな重。……うな重食べたくなってきた。ほら、こないだの「火●サプライズ」って番組見た?あそこで何かアポなしでうまい飯屋に突撃取材するとかいう企画あるんだけどさ、そこでうな重のお店が取り上げられてたのよ。それがまぁ美味そうで美味そうで……。あー、うな重食いてえ。



「ただね、一人だけ居るんだって。化物ソイツらのこと退治できるヤツが。」





「あぁ、それがその……D-SHOOTERってヤツ?」




「そう!さすがリクくん、話が早いね。」




俺はリクじゃない。午史だ。……ちなみにこのセリフ、某ゲームに登場するセリフをそのままパクっているのだが、どのゲームなのかは言わない。でも知ってたら知ってると思うよ。ちなみにそのゲームの中で上述のセリフを言う登場人物ね、上のと同じようなセリフを数分もしないうちに3回も発しているよ。どんだけリクくんが話が早いってことを伝えたかったのかな。まぁいいや。



「てかさー、D-SHOOTERってなんでD-SHOOTERって名前になったの?」



「ああー。確か……えっと、何でそういう名前なんだろう……」




どうやら逆立ち君もD-SHOOTERの名前の由来は分からないのらしい。ケッ、役に立たねえなこの逆立ち野郎。


ともかく、謎の化物が夜9時のキャンパスに条件が揃ったら出るらしいのと、それを退治できる唯一の存在:D-SHOOTERが居る……ということはわかった訳だ。うん。なんかこのこと、設定集にでも書いておけばよかったね。





そして午史は改めて自分の腕時計に視線を移す。時刻はなんと……おぉっと!なんと夜の9時ではないかぁ!!



しかもしかもしかも!!今夜は月が出ている!!ヤバイヨヤバイヨ。今夜もしキャンパスに残ってたら……




あ、ちなみに午史たちは現在帰路の途中なのである。そう、実は今まさに帰ってる最中なんだ。授業が午後6時に終わってね、それで夜の9時になってもまだ帰ってる途中、ていうね。……まぁ、いろいろあったんだよ! ほら、大学生とか、よく、金にちょっと余裕あったらみんなと飯食いに行ったりするじゃん!それだよそれ!!で、これまでの場面はそういうことで!!そういうことなの!!!!メッ!!!!



え?終電とか心配じゃないのかって?ああ、大丈夫大丈夫。この子たちみんな、大学の近くで寮生活してるから。そういうグループなの、これ。おわかり?





まぁそんなこんなな訳だったが、ここで逆立ち君、まさかの一言を放つ。




「ん……おっと、コイツぁヤベェ!大学に財布忘れてきちまった!!!!」





逆立ち君が、大学の教室に財布を置き忘れてしまったのだという。アレ?いままで一緒に飯食ってたんだよね?お会計、どうしたの?もしかして、お前まだ払ってない感じ?




「コ~~~~イツぁ~~~~大急ぎで取りに戻らないと!!!!」




なんと逆立ち君、キャンパスの中に戻ろうとしているのだ。こんな時間帯に。しかも、例の話をした後に。






「え、ちょ、お前大丈夫なん?なんか変な化物出るんちゃうん?」


関西弁の男が逆立ち君を心配した。


「まぁ…………大丈夫じゃね?」


何が大丈夫なんだ。



「てか、この時間だと警備員とかが巡回してるだろうし……てか門も閉まってるだろ?」


そう、ここでオレ:午史がド正論をかます。



「あ~、うん。でも大丈夫大丈夫!それに警備員はね、なんか昔に化物に喰われたみてえな事件が起きて以来雇ってないんだって!」



大丈夫じゃないんだけど、たぶん彼が言うことなんだから、大丈夫なんだろう。まぁウチの大学のセキュリティがガバガバである事実も知ってスゲー心配だけど、大丈夫なんだよ。きっと。うん。知らないけど。




「よぉし、ここは俺に任せて、みんなはさっさと帰ってくれ!大丈夫!謎の化物なんてもんはいないさ!それに、財布を取り戻したらオレ、結婚するんだ……」



後半の結婚するのくだりは何を言っているのかサッパリ分からなかったが、とりあえず去り際の逆立ち君のあの言葉がどんなものなのかはわかる。そう、アレだ。フラグだ。しかしこんなにも分かりやすい形でフラグが立つと、逆に怪しい気もするが。




そして大学のキャンパスの方へ戻ってゆく逆立ち君を見届けた後、午史たちはまたバカ話をしながら、寮に帰っていくのだった。



自分の部屋に戻る直前、午史はふと、夜空を見上げた。



今宵の月は、どこかCrazyでPlasticに見えてしまった。

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