第5話 秋の調べ

その1


 色んなことがあった夏休みも終わり、学校も通常授業が始まった。

 結局、夏季講習の間じゅう、杉谷からは「咲ちゃん元気?」と訊かれ、新井さんからは、「次の練習も観に行っていい?」と訊かれ続けた。

そして、午後からも講習がある日は、なぜか新井さんが僕の席の方にやって来て、なんとなく成り行きで一緒にお弁当を食べる、という風にいつの間にかなってしまっていた。更に、そこへ、「お、俺も俺も」、と杉谷が割り込んで来、木田と柏も自動的にくっついてきて、‘5人組’で弁当を食べるようになってしまった。新井さんは明らかに迷惑そうな顔をしている。

4LIVEのライブハウス出演はとりあえず夏休みいっぱいで一旦終了し、9月からは学業に力を注ぐように、ということになった。もちろん、水曜・土曜の練習は続ける。部活替わりと考えれば、学業に差し支えない範囲と言えるだろう。事実、武藤などは、近隣県でも屈指の進学校、‘鷹井第一高校’の理系の中で、常にトップクラスの成績を維持している。しかも、夏休み明けのテストでは、理系・文系通じた総合得点で学年トップだった。

 咲も県立の雄、鷹井高校の中で、英・国・社の文系科目の総合点では学年10番内を維持している。ただ、数学だけはかなり苦手のようだ。

 加藤は工業系の小山高校の中で、手先の器用さと抜群の集中力・粘着力でもって、「内燃機関設計演習」のチームリーダーに選ばれるほどだ。友達はいない、とは言っているが、嫌われたり関心を持たれない人間がリーダーに選ばれるはずはない。加藤には確かに近づきがたい雰囲気はあるのだろうが、それは、‘一目置かれている’ことの裏返しでもあって、加藤の行動・思考の筋道を見て行けば、信頼できる人間だと理解してくれる人も多いのではないだろうか。

加藤は、「機械って、面白いよ」と、珍しく熱い感じで語っていたこともあった。

 僕はといえば、ごく普通の城戸高校の中で、せいぜい杉谷に、「それ、間違ってるよ」と、ノートを見え消しで添削してやれる程度のレベルだ。でも、コツコツと積み重ねることが苦にならない性格かな、と、いうことだけは自分自身でも感じることはある。なにせ、‘詩’っぽいものを書き留めるノートも未だに毎日続けているので。

 こういった、4LIVEの4人がそれなりに本業ややるべきことにはなんとか取り組めている原動力の一つは、間違いなく、‘殴られる側’であることのコンプレックスがある。僕らにしたら、本当に克服したいのは‘本業’とは別の部分であって、どちらかというと、‘本業’まで駄目になると‘全否定’の人間になってしまうことの怖さがあるのだ。

 そして、更に恐れているのは、「ちょっとはましになってきたのかな」と、高校で各自が本業を中心に様々なことが少しずつ好循環になりつつある時に、見えない所に隠れている、‘自分の恥ずかしいところを知っている’小・中学校の同級生が、「こいつは殴られ側だ!」とある日突然、触れ回り始めるのではないか、ということだ。

 比率はぐんと減るが、それぞれの高校の中にも確実に、‘過去の同級生’は存在するのだ。

 僕自身に突然、その場面が訪れた。


その2


 金曜日の昼時、いつものように‘5人組’で弁当を食べていると、教室の入り口に男子生徒二人組がやって来て、お、あそこにいる、とこちらを指さしているのが見えた。僕はどこかで見た顔だなと考えていると、小学校4~6年まで同じクラスだった2人だった、と気づいた。当然、‘殴る側’の2人だ。この2人は校区の関係で大木中学とは別の中学へ行ったので、顔を見るのは小学校以来だ。

 にやにやしながらこっちに近付いて来るので、なんだか嫌な予感はした。

 僕だけが目を伏せる中、5人組の残り4人はその2人を見る。

「室田、ってさ。小学校の頃、俺に唾をかけられた室田だよね?」

 1人が言った後、もう1人の方を見て、ほら、やっぱりそうだったろ?と笑いあっている。

「ねえ、室田はさ。そういうのを見返したいとか思ってバンドやってる訳?」

 大笑いする訳ではないが、にやにや笑っている。確かに、この2人は事実だけ言っている。嘘をついて人をはめようという行為でもない。それに、「バンドやってる訳?」というのも文章だけ見れば、特別に侮辱する言葉を吐いている訳でもない。

 でも、そのにやけ顔と、‘新井さん’という女子がいるその場所で‘唾をかけた’という事実を述べることで、僕が恥辱を感じるだけでなく、僕と新井さんや杉谷との関係を断絶させようという悪意が根底にあるのは見え見えだ。

 僕自身が何か言おう、と決意して、口を開こうとした瞬間、横で低く、重い、誰か別の声が先に発せられた。

「だから?」

 みんな一斉に声の方を向く。杉谷だった。

 重厚で圧力を持ったその声は、普段の杉谷が絶対に出さないような声だった。杉谷はその声のまま、続けた。

「お前ら、ふざけんなよ。唾をかける奴の方が汚くて気持ち悪りーよ」

 杉谷の目は相手の目を射抜くような鋭いものだった。

「二度と言うなよ」

 杉谷はそう言うと、そこに茫然と突っ立っているその2人の存在を完全に無視して、「それでさあ」とまた馬鹿話を始めた。

 他の4人もなんだか呆気に取られたまま話を続けたが、2人が教室の外に出ていくと、杉谷は僕の方を向いて、いつもの軽い声で話しかけてきた。

「室田、気にすんなよ。いい年して、馬鹿なんだよ、あいつら。可哀想な奴らなんだよ。

 許してあげなよ」

と、あの2人のことを心底憐れで可哀想と思っているように話した。

 ありがとう杉谷、と僕は杉谷に礼を言った。

 ただ、僕は、これで新井さんはもう4LIVEの練習を観に来ることはないだろうな、と思った。でも、杉谷は、新井さんにも話しかけた。

「新井さんも、気にしちゃ駄目だよ。あいつらなんかより、室田の方がよっぽどかっこよくて男らしいからね」

 杉谷から話しかけられて新井さんはちょっとびっくりしたような顔をしたけれども、すぐにぱあっとした笑顔になった。

「うん、杉谷くん、ありがとう」

 そして、新井さんは今度は僕の方に顔を向け、本当に嬉しそうに、にこっ、と笑いかけてくれた。

 なぜだか、新井さんが笑いかけてくれたことでほっとしている自分がいる。これが一体どんな感情なのか、自分自身ではまだ分析しきれない。

 ただ、僕は杉谷という男の不思議な魅力を認識し始めていた。どうやら杉谷は、僕の知らない様々な面を持った男らしい、と杉谷のことがより一層好きになった。



その3


 こうして、9月に入ってからも4LIVEの土曜日の練習には、新井さん、杉谷、木田、柏が以前と変わらずやって来た。

 そんな、9月も下旬に差し掛かった土曜日、ギャラリーたちがミキシングルームから帰った後、久しぶりに4LIVEの4人だけで雑談をしていた。

「あの、ね」

 咲が少し躊躇したような様子で話を切り出した。

「ピアノの発表会、観に来てくれない?」


その4


 咲のピアノの発表会は9月下旬の祝日だった。咲が幼稚園の頃から通っているピアノ教室の生徒だけでの演奏会だ。

 秋晴れ、とはいかないけれども、曇りがちながら涼しげな風が頬を滑る気持ちのいい日だった。お彼岸に入っていることもあって、朝一番で家族と一緒にお墓参りに行ったあと、加藤、武藤と駅前で待ち合わせして、発表会の会場に向かう。

 実は、僕ら男3人は、今日の日を楽しみにしていた。もちろん、咲のピアノを聴くことも楽しみなのだけれども、咲のピアノの先生、‘丹羽先生’と会うことがとても楽しみだったのだ。

 咲に、発表会の事前情報をくれないか、と頼んだところ、ピアノ教室の生徒の名前と演奏する曲目が載ったプログラムを貰ったのと、なぜか丹羽先生が若かりし頃の写真を1枚見せて貰ったのだ。

「あんまり綺麗だから、先生に頼んで、頂いた」

と、咲が言うその写真は、白黒だった。丹羽先生は今70歳。その写真は20代前半の頃の写真だという。もともと中学校の音楽教師だった先生が、卒業式の日に数名の女子生徒からせがまれて一緒に撮った写真らしい。

 卒業式の日、黒っぽいスーツを着て生徒に囲まれて真ん中に立っている丹羽先生は・・・美人だった。

 それも、並大抵の美人ではない。昔の時代の美人、というのでもない。昔だろうが今だろうが、美人は美人、という感じだ。僕は実は、人の感情や思いは十人十色だと思っているのだが、こと、丹羽先生の美しさに関してだけは、‘十人一色’としか思えない。老若男女問わず、この笑顔の丹羽先生の写真を見せられたら、「美人だ・・・」と思わず言ってしまうようなレベルなのだ。

 もちろん、今、70歳だから、相当な変わりようであることは承知の上で、それでも丹羽先生に会ってみたい。楽しみだ。

 そして、もう一つ、咲は事前情報をくれた。

 高校でのたった1人の友達で、咲よりもピアノが上手いと言っていた女の子も招待したそうだ。

 名前は、米田 さき。


その5


 発表会の会場は、クラシカルホール、という訳にはさすがに行かないらしく、駅北にある市の公会堂の第二ホールだった。

 だが、到着してみると、僕たちは会場を間違えたのかと一瞬思った。余りにも人が多いからだ。だが、事情はすぐに呑み込めた。

 ピアノ教室の生徒は小学校低学年から大学生まで計30人。それに加えてその父兄やおじいちゃんおばあちゃん、兄弟などまで入れると、ピアノ教室の関係者だけで全部で100人ほど。それに加えて、中学の音楽教師時代のかつての教え子たちが、この日に合わせて同窓会を開くのだ。30代~40代くらいのスーツ姿の紳士淑女の集団が、その教え子たちだ。30人ほどで客席の後方の一角を占めている。

 そんな中、なんとなく僕たち三人だけが場違いなような気がして、遠慮がちに後方席に座った。僕たちも一応‘正装’ということで、それぞれの高校の制服を着て来た。スーツ姿の同窓会メンバーの横らへんに、ちょこんと三人で座った。そういえば、‘米田 さき’さんはどの辺に座っているのだろう。咲と同じ鷹井高校の制服を探すが、客席の中には見当たらなかった。


その6

 

 生徒たちは最前列辺りに座っている。後姿なので、生徒たちの顔なんかはよく分からない。

 ステージには、グランドピアノが二台、向かい合って重なるように置かれている。なぜ、二台なのかは、クラシックとは全く縁のない僕にはよく分からない。

 時間になり、まず、丹羽先生がステージに上がって挨拶した。

 ああ、やっぱり、と僕は思った。

 丹羽先生は、美しかった。

 70歳にしては若い、という意味での美しさではない。年齢はあくまでも70歳、ということがはっきりと分かる容姿だ。

 皺も深い。頬も垂れてきている。あくまでも丹羽先生は70歳の老人だ。

 でも、その‘70歳’としての人間の美しさ、というものが、本当に僕にはよく分かった。

 丹羽先生、という人間の中の普遍的なもの。それは、丹羽先生の中にある‘核’とか‘原石’とかいったものかもしれない。表面の肌や骨格、内臓器官は衰え、おそらく気力も弱まってはいるだろうけれども、‘核’や‘原石’は古びることなく、それどころか更に磨き上げられて、皺だらけの笑顔の中に、その美しさが滲み出ているのが、僕には分かる。おそらく、加藤と武藤にも分かっているはず。これが、BARたかいで小谷さんが言っていた、僕たちの老成したかのような‘苦味’であり、‘強み’なのだとはっきり分かる。

 

 挨拶が終わると丹羽先生は続けて、最初に演奏する生徒の紹介を始めた。トップバッターは小学校一年生の男の子。

 ピアノを始めてまだ半年。‘おつかいありさん’という、蟻が餌を探しておつかいに出かけることをイメージした、幼児用の練習曲だ。丹羽先生は目を細めて、この子なりの上達の様子を聴いてやってください、と男の子をピアノの前に促した。この子の祖父母なのだろうか、ひときわ大きく拍手をしているご夫婦が目に入った。

 プログラムは順調に進む。結構男の子の生徒も多い。ピアノ教室で教わっていた生徒がお母さんになって、自分の息子にも習わせたい、という人が結構いるのだろう。中学二年生の男の子の演奏などは、その力強さに、感動するくらいだった。

 プログラムを改めて見てみると、大学生の生徒もいる中で、高校二年生の咲がトリとなっている。まあ、大学生くらいだと、多分実戦の演奏という部分よりも、ピアノは人生におけるよき趣味という感じになりつつあり、あえてトリは辞退しているのだろうけれども、それでもトリはトリ。咲のこの教室における役割がなんとなく分かる。

 トリひとつ前の女子大生の流れるような美しい演奏が終わった後、丹羽先生が咲の紹介を始めた。

「最後の奏者は、白木 咲さん」

 丹羽先生は、さ、上がって、と合図をすると、咲がやや急ぎ足でステージに上がる。

僕ら男3人は、目を見張った。

 丸く幅広の襟と袖に幾重ものタックが入った真っ白なブラウスで胸元には濃紺のリボンを締め、膝辺りまでの黒のタイトスカートを穿き、5cmくらいのヒールのある濃紺の靴を履いている。靴は、光沢が出るまで磨き上げられている。

 そして。耳には、シンプルな形をした銀色のイヤリング。黒髪はブラウスの背中あたりまで、いつものように、滑らかに真っ直ぐに流れていた。

 ヒールを履いてすっ、と立っているその姿は、大げさにいうと、現実離れをした美すら感じさせるものだった。いつも僕らが見ている咲ももちろんきれいなのだが、僕らが全く知らない、もう一つの分身の咲を見たような、そんな衝撃すら感じる綺麗さだった。

 毎年見ているであろう生徒の父兄方は、相変わらずきれいだ、という感じで、‘おおー’という程度のどよめきなのだが、咲を初めて見た同窓会の紳士淑女方は、‘ほおーっ!’という、まるで漫画のようなどよめきだった。女性ですら驚嘆の声を上げている。いや、女性だからこそ圧倒的な美しさ、というものを感じて驚いているのだろう。嫉妬すらできない圧倒的な美。BARたかいの時も咲の姿を見て観客はどよめいていたが、本当に本気で‘正装’した今日の咲を見た人たちのどよめきは、BARたかいの時のレベルを数段上げたものだった。僕たちの制服など、‘正装’と呼ぶのもおこがましい。


その7


 丹羽先生は、いつものことだ、という感じで、会場のどよめきが収まるまで、ゆったりとした表情で待っていた。ようやくどよめきの声が収まり、「ほんとにきれいね」とか、「去年よりまたきれいになったな」とかいう囁きだけが聞こえるようになった状態で、丹羽先生は改めて咲の紹介を再開した。

「咲さんは、幼稚園の頃から私のレッスンを受けてきました。最初は嫌々だったですね。小学校に入っても、我慢して弾いている、っていう感じでした。

 ですが、小学校5年生の時、突然、‘ベートーベンが弾きたい’と自分から言ってきたんです。

 ベートーベンの伝記を読んだんだ、って言いました。ベートーベンは耳が聞こえなくなり、非常に屈折した性格となりながらも、音楽で人の心の扉を叩きたいんだ、と素晴らしい曲を幾つも残した。わたしは、とても共感するんだ、いや、他人事とは思えないんだ、とまで言って頼むんです」

 先生は、そこで、一旦会場をゆっくり見渡す。そして、咲の方を見て優しくほほ笑んだ。

「わたしは、なぜ、咲さんがベートーベンの伝記に共感し、その曲を弾きたいと切望したのか、理由をよく知っています。咲さんは、その理由について、控え目にではありますが、当時、私に教えてくれました」

 僕たち3人にも、分かる。咲の‘殴られ’は、当時、小学校5年生の女の子としては到底耐えられるレベルのものではなくなってしまっていたのだ。おそらく、小谷さんが話した、「小学校5年生の、しかも女の子がここまで残酷になれるのか」というのと同じものだったのだ。

「その理由については、皆さんにお話しすることはできません。でも、私自身も咲さんを何とかして救ってあげなくてはいけない、と真剣になりました。咲さんのご両親も大変苦しまれ、私達は、どうすれば咲さんを救えるのか、と話し合いました。でも、残念ながら、直接的な方法で咲さんを救う、という所までは踏み込めなかった。

 私達ができたことは、咲さんに、ベートーベンの曲を完璧に弾かせてあげることだけでした」

 おそらく、この話は、これまでの発表会でも話したことのない内容なのだろう。みんな、しん、と静まり返って聞いている。涙ぐんで聞いている年配の女性もいる。

「自分の生徒のことで何ですが・・・咲さんの演奏は、おそらく、普通に高校に通う女子高生の限られた練習量としては、最大限の完璧な演奏だろうと思います。

 私ももう、年です。いつまで皆さんに教えられるか分かりません。最初は冗談で咲さんに、教室の跡を継いでくれませんか、と言っていましたが、そろそろそういうことを本気で考えなくてはならない年齢になってきました。

 咲さんが弾くのは、ベートーベンの‘ピアノソナタ「悲愴」第一楽章’です。皆さん、最後までゆっくりとお聴きください」


その8


 咲は拍手する客席にお辞儀をするとピアノの前にゆっくりと座った。

 深呼吸をし、左手を軽く鍵盤の上に置く。そして、一旦、目を閉じた。

 数秒の間を置いて、目をすっと開けたところから、咲の演奏が始まった。

 素晴らしかった。咲の複雑で繊細で、でも、溢れんばかりの激情をたたえたココロが、すべて表現し尽された、咲にこそふさわしい曲だ、と感じた。そして、それは、クラシックではあるけれども、僕にとってはロックそのものだった。

‘叩きつけるように弾く’という表現を咲はしていたけれども、決して投げやりなのではなく、‘この気持ちを抑えることができない!’といった、高揚感と喜び。そして、その背後には、しっかりと、‘悲しみ’という背骨もある。悲しみを経ない喜びなど、なんの意味もないとすら思えるような、咲の人生そのもの。

 それが、一気に爆発する。これが、ベートーベンなのか! 僕はただ、感動した。

 僕は、すっ、と目を閉じる。咲が4LIVEでベースを弾く姿がごく自然に浮かび上がる。

 BARたかいのための炎天下の河川敷での‘猛特訓’の後、川面から草の上を走り抜ける疾風が咲の後ろ髪を、ぶわっ!と吹き上げるあのシーンが、鮮烈に浮かび上がる。

 咲が、MAXの力で鍵盤を叩きつけた瞬間、同じように目を閉じていた僕ら3人は、かっ!、と目を開け、クライマックスからフィナーレに向かう咲のピアノに、前のめりで飛びかかるような気持ちで食らいついた。咲の真剣勝負に、こちらも真剣勝負で応える。

 咲は、時折、目を閉じて弾いている。額に汗が浮かんで見える。眼尻の辺りの水滴が額から流れた汗なのか、涙なのかは、咲に訊かないと分からない。

 咲は疾走するようなリズムを刻み続けたまま、もう、限界だ・満足だ、という美しい表情で演奏を終えた。観客は割れんばかりの拍手を惜しげなく咲に贈った。

その9


 咲は立ち上がって、笑顔で観客にお辞儀をした。でも、そのまま、ステージに立っている。

 やおら、丹羽先生が話し始めた。

「本来ならここで発表会は終わりなんですが、咲さんたっての願いで、番外編ということで。

 生徒とは別にもう1人、特別に演奏者を招待しています。

 ‘米田 さき’さん」

 先生に呼ばれ、米田さんがステージに上がってくる。ん、小学生か?という感じの小柄な子だ。

 そして、回転の速い急ぎ足で咲の隣に並んで立った。

 会場の皆は米田さんの姿を見て、えっ!という感じで瞬間的にどよめき、すぐにうーん、と感心して唸る他ないような空気に包まれた。

 僕自身も不覚ながら、‘げっ!’という感じで心の中で驚いただけでなく、実際に少し、声に出してしまった。

 服装は、靴にヒールが無い以外は咲と似たような感じの白いブラウスに黒のスカート。

 それ以外は咲とは対照的だった。

 髪はショートカット。痩せて、背は、低い。ヒールを履いた咲の肩にも届かないほど小柄だ。咲を二回りか三回り小さくしたような体格。僕は、何となく気になって、米田さんの指を見てみる。咲の長い指に対して、米田さんの指は、その半分くらいの長さしかないのでは、と思える。あの素晴らしい演奏をした咲自身が、自分より上手いと褒める米田さん。こんなに短い指で本当にそんな演奏ができるのだろうか。

 そして、会場全体が、うーん、と感心して唸るしかなかった部分。

 それは、米田さんの顔立ちだった。

 隣に並んでいる咲は整った顔立ちだ。身長を含めた容姿は完璧そのものと言っていいと思う。

 でも、身長や髪型を置いておいて、米田さんのその顔立ちの整い具合は、‘完璧を超えた完璧’としか言えないようなものなのだ。20代の頃の丹羽先生よりも整った顔立ちをしているように感じる。

 もちろん、整っていることが人の心を揺さぶるかというとそうとも言えない。

 アンバランスな部分こそが、人の恋愛感情をくすぐり、より美しさを感じさせるものだろう。

 でも、純粋に、整い方、という一点だけに集中して言うと、米田さんの場合は、顔のどのパーツでも1mm動かしただけで、‘少しアンバランスになりましたね’という風になりそうなくらい、‘これしかない’という整い方なのだ。

 丹羽先生といい、咲といい、米田さんといい、世界は広いと言えばいいのか狭いと言えばいいのか。まあ、咲については付き合いが長くて、美人だ、というのが僕ら3人には当たり前になっているが、他の観客にとっては、咲と米田さんを並べて見せられて、やたら緊張感が高まっているのではないか。新井さんの朗らかな笑顔の方が、僕にとっては現実的な可愛さとして、心が休まるような気はする。新井さんがこれを聞いたら膨れるかもしれないが。

 会場のざわめきが少し落ち着いたところで、丹羽先生が再び話し始めた。

「さきさんは、咲さんの高校の同級生です。咲さんたっての希望で、さきさんと連弾で演奏する、ということになりました」

 連弾、という言葉は初めて聞いたが、二台のピアノを使って、2人で弾く、ということは勘の悪い僕でも察することができた。

「この間、一度だけ、2人の連弾のレッスンをしましたが・・・さきさんの演奏も本当に完璧で、咲さんと甲乙つけがたい・・・・・

 そして、曲は、咲さんが作曲したオリジナルです」

 会場はまたさわさわとざわめいた。

「話したことがあるかもしれませんが、咲さんは、バンドもやっています。今日弾く曲はまだ曲名はついていませんが、そのバンドで演奏したらどうかな、ということで作曲したものだそうです。

 そして、今日、そのバンドのお仲間が、会場に来ているということです。

 ええと、どこかしらね」

 丹羽先生は咲の方を向いて、教えて、と言っている。

 咲は、僕らの方を向いて、右の掌で僕らを指し示すようにして、

「あちらです。あの、後ろの方に」

 ああ、と丹羽先生は、両掌を上に向けて腕を上げ、僕らに立って挨拶するようにというジェスチャーをした。

 仕方ないので、僕らはゆらゆらと立ち上がって、なんとなくあちこちに頭を下げた。

 会場から、まばらな拍手が起こる。明らかに咲と比べてバランスの悪い僕らに違和感を覚えているような、ぱらぱらとした拍手だ。

「じゃあ、準備して」

 促され、お辞儀した後、米田さんは向かって右側のピアノに、咲は左側のピアノに座る。

 2人はそのまま見つめ合うように、何度か首を頷くように動かした後、大きく、「はい」という感じで頭を下げ、そのまま演奏に突入した。

 あ、これは。

 咲がBARたかいの時に、MP3でくれた5曲の内の4曲目だ。

 あの時は、僕、加藤、武藤で、この曲以外の3曲を選んだが、もし咲自身が選んでいたら、この曲が入っていたのだろう。

 咲が低音のパートでどちらかというと伴奏のような感じで、米田さんが主要メロディーを演奏するという形だ。

 米田さんが主なメロディーだからかもしれないが、なんだこれは、というぐらいの音量・音圧だ。咲がさっきソロで弾いた以上に力強く鍵盤を叩いているのが分かる。もしかしたら、これは、米田さんのあの短い指だからこそ出せる力強さではないだろうか、と、ピアノに関しては素人の僕は想像した。短い指を、鍵盤に突き立てるようにして弾く。しかし、それをやりながらなおかつ曲を滑らかに演奏するためには、音と音の間を移動するための指の動きを、長い指の咲の倍ぐらいのスピードで行わないとできないのではないだろうか。それこそ、指が高速で鍵盤と鍵盤の間を瞬間移動のようにジャンプするのでは。

 そして、演奏する様子も咲とは全く正反対だった。自分の指辺りに視線を向け、ピアノと向き合って演奏するという感じの咲に対して、米田さんは体を激しく前後に揺らし、時には目を閉じて中空の方に顔を向け、ピアノそのものから離れて自由に演奏している、という感じだった。

 僕は‘連弾’と聞いて、演奏の‘接近戦’という風に勝手にイメージをしていたので、どうしても「咲とさきの一騎打ち」として見てしまう。とすると、やや咲には分が悪いように感じた。米田さんのアクションの大きさも相まって、聴衆もどうしても米田さんの演奏の方に、目、耳とも傾けているように見える。

 しかし、僕ら3人は、‘間奏’のような場面に曲が達した時に、腹に響くような音圧を咲のピアノの方から感じた。‘間奏’の間も、米田さんのピアノは、ギターソロをイメージさせるような、やや不協和音がかった難しい演奏を繰り広げ、聴衆を唸らせている。しかし、その背後には咲が常にピアノの一番左側の方に体を向けて、‘最低音’あたりの鍵盤を叩き続けているのが、耳ではなく、腹と体全体に伝わって来た。

 これを意識して感じているのは僕ら4LIVEの3人だけだろう。その他の聴衆は、意識さえさせてもらえずに、咲の術中にはまっているのではないだろうか。

 もちろん、咲はそんな計算高いことを考えてこの曲を作った訳ではないだろう。

 けれども、演奏を振り返ってみると、耳にも残りにくい、ベースのような重低音のパートが、図らずもこの曲のテーマになっている。それは、叫びのような高音の訴えかけではなく、呻きのような、低い、でも、相手の心の奥底に無意識の内に働きかける、呼びかけ。ハンマーでとてつもなくでかい岩の塊をゴーン、と叩いているような、体の芯に直接入り込んでくる呼び声。

「いつもひそかに生きてる」

 僕がノートにばらまいていたワンフレーズが再び脳裏に浮かんでくる。あの、土手を自転車で走った時の、咲の曲と僕の詩のシンクロが、ちょうど、咲と米田さんの演奏が終わる瞬間に再現される。

 僕は、観客が今日一番の拍手をしている中、集中して考えていた。

 ‘4LIVEに咲のピアノを持ち込んだらどうなるのかな’

 僕に、一つのアイディアが浮かんだ。


その10


 発表会終了後、別室の大きな会議室を借りて、生徒と父兄方とで、持ち込みのジュースやお菓子で、‘打ち上げ’が開催された。咲は世話役として会場を動き回っている。飲み物やお菓子を配ったり、おじいちゃん、おばあちゃん方に椅子を出して勧めてあげたり、年少の生徒たちに、「今日は頑張ったね、いい演奏だったよ」と声を掛けてあげたり。

 そして、不思議なことに、そんな風にしている咲からは、‘忙しそう’とか、‘大変そう’という感じが全く伝わってこないのだ。どんなにいっぱいいっぱいの状態だったとしても、どこか静かでゆっくりした印象を与え、容姿も含めて目立つはずなのに、存在を必要以上に主張しない。‘目立ちたくない’というはっきりした意思すら感じられる。でも、そんな感じで自然なのだ。考えてみればそんな咲は、本当は4LIVEでステージに立つ、ということは望んではいなかったのかもしれない。しかし、それが咲の生まれついての‘本質’なのか、殴られ側で生きて来た結果の後天的なものなのか、僕には判断がつかない。

 ただ、咲が作った曲は、どれも本当に美しい。そして、咲自身は、その曲が誰かの耳に、心に届くことについては、望んでいるはずだ。


その11

 咲の作業がひと段落したところで、咲が僕ら三人が腰かけている隅っこの方のテーブルに、米田さきさんを連れてやってきた。

「こんにちは」

 米田さんが、満面の笑顔、という表情で僕ら三人に挨拶する。咲がそれぞれを紹介し、僕らも米田さんに挨拶する。

「咲ちゃんがいつもお世話になってます」

 笑顔を崩さないまま、僕たちに冗談ぽく言う。

 咲と米田さんが並んで立っている様子を間近で見ると、本当に、凸凹コンビだ。

 しかも、米田さんの顔は、近くで見れば見るほど整った芸術品のような作りだ。そして明るい。咲がその挙動のどこかに少し影のような控え目さを持つのとは反対に、米田さんの表情・言葉・立ち居振舞いは、日なたの中のものだ。そして、その明るさと、極端な小柄さが、‘可憐’という言葉の意味を定義づけているようにすら思える。

 5人で紙パックの濃縮還元ジュースを飲みながら、向き合った。咲が突然に口を開いた。

「さきちゃんも、わたしたちと同じ」

「え?同じって?」

 武藤の疑問に屈託ない笑顔で米田さん本人が話し始めた。

「ひどいんですよ、小学校5年の時の話なんですけど」

 何か軽い失敗談でも話すような口ぶりで米田さんが言葉を続ける。

「ある日突然、齧った給食のパンを牛乳に浸したやつが何個も鞄の中に入ってて。

 家に帰るまで気が付かなくて、父兄への‘お知らせ’を渡そうって、母の前で開いたら、その汚くて臭いパンが出て来て。

 母は‘何これ?’って訊くんですけど、‘知らない’ってわたしが言うと、‘あ・そう’って、2人して、まあ、こんなこともあるんだね、って、笑ってたんです」

 内容の嫌な感じと裏腹に、米田さんのあまりにも軽やかなあっけらかんとした話しぶりに感心してしまう。

「そしたら次の日からはスープにつけたパンとか食べ残しの竜田揚げとかが鞄の中に入ってたんです。教科書もべしょべしょに汚れるし匂いもつくし、困ったなあ、って思ってたら、それを見てくすくす笑っている女子がいたんで、あ、この子だな、って思って。

‘なんでこんなことするの!’って、結構怖い声で言ったんです。そしたら、その子、‘知るか!’ってわたしに怒鳴り返してきて。

 それで、その子のグループの子何人かにいきなり腕をつかまれてトイレに連れ込まれたんです。それで、‘茶巾絞り’って知ってますか?あの、スカートをめくりあげて頭のてっぺんでひもで縛るやつです。それ、やられて。随分古いマンガなんかで読んだことあったんですけど、あ、こんなこと本当にする人がいるんだな、って感心しちゃって。あ、わたし、マンガとかアニメとか大好きで、結構昔のやつもチェックしてるんです」

 米田さんは、じゅーっ、と紙パックがへこむくらいに音を立ててジュースを飲みながら、話し続けた。

「それで、トイレの外に、どん、て蹴りだされて。そのグループが大笑いしてるんで、声のする方に突進して行って、誰か分からないけど体当たりしたら、‘てめー、この野郎’って、女の子なのにそんな怖い声で誰かが言って。そのまままたトイレに逆戻りです。‘殴る蹴るの暴行’って、ああ、こういうことなんだな、ってのを身をもって経験しました。

 でも、わたし腹が立ったんで、鞄の中の残飯を教科書ごとそのグループの前にぶちまけて走って家に帰ったり。多分、そういうのでもっと怒らせちゃったんだと思うんですけど」

 咲はなぜか嬉しそうににこにこと聞いている。僕ら男三人はどう反応していいやら分からず、目を丸くして聞いていた。

「中学も最低でした。わたし、東中だったんですけど、あそこって、単に小学校のメンバーがそのままスライドして中学になるだけなんです。だから、そのグループともずっと同じ感じで。わたしも進歩ないですけど、中学になってもその子ら全く同じやり方の繰り返しでバリエーションも増えないし。進歩ないな、って。

 とりあえずは、まあ、嫌なんで、高校は何が何でも鷹井高校に受かりたかったんです。本当は鷹井第一高校が一番安全そうと思ったんですけど。そのグループの子らは逆立ちしたって入れない、って分かってましたから」

「一番安全そう・・・・まあ、確かに」

 当の鷹井第一校生である武藤がぼそっと呟く。

「まあ、わたしの頭では鷹井第一まではちょっと無理だ、ってことで諦めて。それでなんとか鷹井高校に頑張って合格できたんです。結局、グループの子どころか、東中は私以外全員鷹井を落っこちたんで・・・神様やるな、って合格発表の掲示板の前で飛び上がって喜びました」

 米田さんなら文字通り、本当に飛び上がって喜んだのだろう、と想像する。

「それに、咲ちゃんみたいな素敵な子とも友達になれたし。

 わたしって、本当にラッキーです!雨降って地固まる、ってこういうことですかね?」

 長い演説がようやく終わった。咲がまるで米田さんのことを僕ら3人に自慢するようにふふっ、と笑っている。中一で咲と会った時も生まれて初めて見るタイプの人種だ、と思ったが、この米田さんはそれに輪をかけた、見たこともない人種だ。咲は容姿と性格が一致している部分もあるが、米田さんはその可憐な容姿と徹底しきったあっけらかんさがどこまでもアンバランスだ。

「さきちゃんといると、自分の悩みが馬鹿らしくなる・・・さきちゃんが羨ましい・・・」

 咲は笑顔で呟く。

「えー、そんなことないよー、咲ちゃんの方が羨ましいよー。

 背、高くて絶世の美女だし、ピアノだって凄いしさー。

 それよりも、室田さんって、すっごいんですね?」

「え?」

 同学年に‘室田さん’と呼ばれたことも奇妙な感じがするが、何が凄いのか、更に気にかかる。

「だって、わたしはグループの子だけやっつけようとしたけど、室田さんは無差別に学校全員やっつけようとしたんでしょ?」

「ええ?何のこと?」

 咲が申し訳なさそうに僕の方を見ている。

「ごめん、中一の‘轟音’のこと、話した・・・」

 ああ、そういうことか。

「でも、怖くなかったですか?わたしもヤケになったら結構向こう見ずですけど、ほんとに皆難聴になったら、って思うと少し尻込みしませんでしたか?」

 僕は、何も言わず黙っていようとも思ったが、このままだと米田さんのおしゃべりが止まらないだろうと思い、渋々口を開いた。

「いや・・・中一でまだ何も深く考えてなかったから。今にして思えば、馬鹿だったな、って・・・」

 ふーん、と米田さんはこんな他愛もない説明で本気で納得してしまったようだ。

「あ、それから、武藤さんはアニメとかアニソンとか好きなんですよね?」

「そんなことまで・・・・」

 武藤は嫌そうな顔を米田さんではなく咲の方にちらちらと向ける。

「いえいえ、恥ずかしがることないですよ。わたしもアニソン大好きですし。ああ、このアニメにはこんな曲の方がいいのにな、って、勝手に作曲してピアノでだーって弾いたりしてますもん」

「前、音楽室で弾いて貰ったけど、ほんとに凄かった・・・・」

咲が解説を付け加える。

 ほー、と僕らも感心する。さっきの演奏を見ているだけに本気で聴いてみたい、とも思う。ただ、‘このキャラをイメージしたんです’とか言われても分からないが。

 でも、咲がこんなに長い時間、笑顔でい続けるのは見たことがなかった。この凸凹コンビは学校で間違いなく目立っているはずだ。それも、きっと、「咲とさきとどっちがいい?」とかいう感じで男子生徒の間では常に話題になっているに違いない、と思う。

 このコンビが出会ったことで、2人の人生は好循環に入りつつあるのだろう。もし、この間、僕に唾をかけたことを突然言い出してくるような輩がこの2人の前に現れたとしたら。

 僕たちは‘殴る側’に回ってでも、そいつらを阻止してやろうと思う。

「じゃあ、4LIVEの5人目のメンバーになる、ってのはどう?」

 武藤が突然提案する。おそらく、武藤は米田さんという初めて見るタイプの子に対して、この子ならもしかしたら自分でも?と思い始めているに違いない。

「いえいえ、それはダメですって」

 え、どうして?と武藤は食い下がる。

「だって、バンドの紅一点は咲ちゃんですから。美少女ベーシストに3人のバンドマンが密かに想いを寄せ合う、っていう設定のままにしといた方が絶対アニメ的にもいいですから」

 僕は米田さんの話しぶりをどこかで聞いたようなデジャヴにとらわれていたが、杉谷に本当によく似ている、と気づいた。しかも、やや高いトーンの声に段々と眩暈がしてきた。



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