第37話

○雪哉と静

「雪哉と静って、普段どんな話してるんだ?」

 雪哉と二人きりになった帰り道。ふと気になって聞いてみる。

「ごく普通の会話ですが。宿題やったか、とか。最近、部活はどうなんだ、とか」

「おまえがそんな普通なこと言うわけないだろ」

「幸助さん、さすがにそれは偏見ですよ」

 雪哉が顔をしかめている。

「ぼくは外面はいいんです。事実、ぼくは学校では優等生で通っています」

「なぜその外面を僕にも適応してくれないのか……」

「幸助さんには、ぼくのすべてを曝そうと心に決めているんです。ご命令ならば、心のみならず、股間だって曝す覚悟です!」

「ごめん、一生秘めといて」

 おまえが曝したいだけだろうが。

「話はもどるが」

 僕は続ける。

「おまえと静って仲良いよな」

 雪哉に少し探りをいれてみる。静が雪哉のことが好きなのはバレバレなのだが、果たして雪哉は静のことをどう思っているのだろうか。

「そうですね。幼なじみですからね」

 雪哉は無難な返答をする。

「本当にそれだけか?」

 僕はさらにせっついてみる。

「まあ、ぼくの交遊関係の中では特別な人間であることは間違いないですね」

「ほう」

 これは脈ありなのだろうか、僕がそんなことを考えていると、雪哉は言った。

「泣き方がそよぎ姉さんと同じなんですよね」

「……はい?」

「自分のしたいことが通らないと、泣き叫んでわめくんですが、そのときの喚き方が小さいときの姉さんと似てるんですよ。あ、もちろん、顔は全然似てないですけど」

「……おう」

「だから、ぼくは静を泣かせるのは好きなんです」

「………………」

 彼はすごく真っ直ぐな目をしていたので、何も言えませんでした。


 僕はかなり静に同情した。

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