第34話
○知ったかぶり
「しりとり、しよ」
ある日、そよぎは唐突に言う。
「いいよ」
拒否する理由もなく、僕は素直に応じる。
「私からいくよ。『アファーマティブアクション』」
「なんで、何の断りもなく『あ』から始めてるのかもわからないし、最後、『ん』で終わってるし、おまえ、その言葉、言いたかっただけだろ」
先程の倫政の授業中に教師が説明していたのだ。どうせ、響きがかっこよかったから、たまたま覚えていただけなのだろう。
「アファーマティブアクション、どういう意味か解ってる?」
「うおおおおおあおっ、アファーマティブアクション!!」
「いや、そんな必殺技みたいに言ってもダメだから」
彼女にとって、横文字はすべて必殺技です。
「――『
「いや、そんな中二病みたいな言い方してもダメ」
全然意味わからないし。あと、こいつ修羅好きだな。
そよぎはなぜか神妙な顔をして、ぽつりと呟く。
「幸助くん……私、思うんだ……大事なのは、意味じゃなくて、その言葉を思う、気持ちなんじゃないかな……」
「無理矢理いい話っぽい雰囲気を醸し出してもダメです」
何度も言うが、意味不明だからな。
ダメ出しを続けた結果、そよぎはついに逆ギレした。
「なんなの! 私の言うこと、あれもダメ、これもダメって!」
「いや、おまえがあまりに適当に言葉を使ってるからだな……」
そよぎが突然キレるとは思わず、僕はしどろもどろになる。
「もう! 幸助くんは賢いけど、私はバカなんだから」
「いや……」
「私に積極的に教育機会を与えて、教育格差をなくすことで、真の意味での平等を目指すべきなんだよ!」
「アファーマティブアクションの意味、解ってるじゃねえか」
アファーマティブアクションは積極的是正措置です。
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