第27話
○雪哉の髪
「雪哉の髪は男にしては長いよな」
僕は雪哉に問いかける。
「ああ、これですか」
雪哉は自分の前髪を掴みながら言う。
「本音を言えば、もっと伸ばしたいくらいなんです」
「そうなのか」
「はい。具体的にはそよぎ姉さんと同じ髪型にしたいです」
「それはやめろ」
確かにこいつは、紛れもない美少年であり、ただウィッグで髪型を変えるだけで、女に見えるくらいに女性的な顔をしている。しかも、そよぎに似ているのだから、もしそんなことをすれば、さまざまな界隈の人間が放っておかないだろう。
「ええ。姉にも同じこと言われました。姉さんに言われたら、もう仕方がありません」
「そよぎにしては賢明な判断だ」
僕も間違いなくそよぎを愛しているが、こいつのそよぎへの想いは、あまりにも歪み過ぎている気がする。
「おまえは自分がそよぎになりたい願望があるのか?」
「うーん。そう単純に割り切ったものでもないですが、概ねそいうことです。ですから、そよぎ姉さんが持っているものは同じものが何でも欲しくなってしまうんです」
雪哉は指折り数えながら言う。
「ノートは姉さんが使っているピンクのクマが描かれたものを使っていますし、シャーペンや消しゴムのメーカーも同じものを使っています」
「徹底しすぎだろ」
「ですから、もちろん、下着も同じ種類のものを履いています」
「超えちゃいけないラインを考えてね」
彼は紛れもなく変態です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます