第27話

○雪哉の髪

「雪哉の髪は男にしては長いよな」

 僕は雪哉に問いかける。

「ああ、これですか」

 雪哉は自分の前髪を掴みながら言う。

「本音を言えば、もっと伸ばしたいくらいなんです」

「そうなのか」

「はい。具体的にはそよぎ姉さんと同じ髪型にしたいです」

「それはやめろ」

 確かにこいつは、紛れもない美少年であり、ただウィッグで髪型を変えるだけで、女に見えるくらいに女性的な顔をしている。しかも、そよぎに似ているのだから、もしそんなことをすれば、さまざまな界隈の人間が放っておかないだろう。

「ええ。姉にも同じこと言われました。姉さんに言われたら、もう仕方がありません」

「そよぎにしては賢明な判断だ」

 僕も間違いなくそよぎを愛しているが、こいつのそよぎへの想いは、あまりにも歪み過ぎている気がする。

「おまえは自分がそよぎになりたい願望があるのか?」

「うーん。そう単純に割り切ったものでもないですが、概ねそいうことです。ですから、そよぎ姉さんが持っているものは同じものが何でも欲しくなってしまうんです」

 雪哉は指折り数えながら言う。

「ノートは姉さんが使っているピンクのクマが描かれたものを使っていますし、シャーペンや消しゴムのメーカーも同じものを使っています」

「徹底しすぎだろ」

「ですから、もちろん、下着も同じ種類のものを履いています」

「超えちゃいけないラインを考えてね」

 彼は紛れもなく変態です。


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