番外編
第25話
○凪の髪
「前から気になってたんだが」
僕は凪に問いかける。
「おまえ、金髪碧眼でドイツ人の血を引いてるって言ってたけどハーフなのか?」
「まあな。正確にはクォーターだぜ」
クォーターつまり四分の一、ドイツ人の血を引いているということか。
「だが、確か金髪や碧眼っていうのは劣性形質じゃなかったか? ふつう、黒髪黒目の日本人と金髪碧眼のドイツ人の間の子供は黒髪黒目になると聞いたぞ」
普通、遺伝子は色素が濃い方が優性形質である。つまり、日本人の血が混じっているのに、金髪を遺伝するのは、突然変異でない限りはあり得ないと思うのだが。
「それは、遺伝の仕組みを簡単に考えすぎだ」
凪はどこか得意げに言う。
「確かに色素が濃い黒髪黒目のほうが優性形質だが、優性形質だけが遺伝されるわけではない。あたしの両親は、両方ともが日本人とドイツ人のハーフなんだ」
「ほう。珍しいな」
国際色が豊かになった現代でもなんだかんだ言ってもハーフは珍しい。そのハーフ同士の子供となれば、尚更だろう。
「両親はおまえが言う様に黒髪だ。これは優性遺伝が現れたためだな。だが、両親はハーフだから、表に現れてこそいないが、金髪碧眼の遺伝子は持っていたんだ」
「なるほどな。つまり、おまえはその両親の劣性形質のみを引き継いでいるから金髪碧眼なんだな」
優性形質の遺伝子が一つでも遺伝されていれば、それが発現するが、両親の劣性形質のみを遺伝していた場合は、当然、劣性形質のみが遺伝することになる。
「その通りだぜ」
そして、凪は胸を張って言う。
「これでも、一応頑張って考えた設定なんだ」
「設定なのかよ」
こいつ、まさか髪染めてるんじゃないだろうな、とひそかに疑いを持つ僕であった。
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