概要
殿下の不運、十年分。今日から返品いたします
「お前といると縁起が悪い。婚約は破棄する」
夜会の広間で、王太子ローナン殿下はそう言った。隣には〈幸運の令嬢〉と評判のブリジッドが寄り添っている。
私、フィオネはよく転ぶ。よくカップを割る。馬車の車輪はよく外れる。だから〈縁起の悪い女〉と呼ばれてきた。
でも本当は、触れた人の厄を引き受けてしまう体質なだけ。十年間、殿下の厄を全部被ってきたのは私だ。
「承知いたしました。では、今日から殿下の不運は、殿下ご自身でどうぞ」
大階段を上りかけた殿下が、足を滑らせた。転がった王冠が、私の足元で止まる。
その夜、私の手の中で、紅茶のカップは一度も割れなかった。
「……やっと気づいたか。遅いぞ、お前」
肩の上で、手のひらほどの厄神が、ふんぞり返っている。
翌朝、〈国一番の不運な男〉と呼ばれる辺境騎士団長コ
夜会の広間で、王太子ローナン殿下はそう言った。隣には〈幸運の令嬢〉と評判のブリジッドが寄り添っている。
私、フィオネはよく転ぶ。よくカップを割る。馬車の車輪はよく外れる。だから〈縁起の悪い女〉と呼ばれてきた。
でも本当は、触れた人の厄を引き受けてしまう体質なだけ。十年間、殿下の厄を全部被ってきたのは私だ。
「承知いたしました。では、今日から殿下の不運は、殿下ご自身でどうぞ」
大階段を上りかけた殿下が、足を滑らせた。転がった王冠が、私の足元で止まる。
その夜、私の手の中で、紅茶のカップは一度も割れなかった。
「……やっと気づいたか。遅いぞ、お前」
肩の上で、手のひらほどの厄神が、ふんぞり返っている。
翌朝、〈国一番の不運な男〉と呼ばれる辺境騎士団長コ
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