概要
甘いカステラをひと切れ。死んだ恋人が、俺の首に手をかけた。
小説家の賀内のもとに、ある日、死んだはずの男・登張がカステラを持って現れた。
大学時代の恋人だった登張は、昔と変わらぬ嫌味な笑みを浮かべ、賀内をからかう。風鈴のように冷たい手も、石鹸の匂いがする指先も、何もかもがあの頃のままだった。
かつて人生に嫌気が差していた賀内の隣には、いつも登張がいた。しかし、就職を機に二人は疎遠になり、やがて賀内は彼の訃報を受け取る。
登張を失ってから、少しずつ腐っていった日常。
忘れたいのに、忘れられない。
なぜ今さら現れたのか。自分を恨んでいるのか。
問いかける賀内に、登張は昔と変わらぬ調子で告げる。
「言ったじゃないか、かすてらを届けに来たんだって」
甘い記憶と、拭えない罪悪感。
死者と生者のあいだに残された、最後のひととき。
これは、忘れ
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