概要
借りた物は返すもの。彼女だけが、返しに来ない。
体育祭実行委員の借り物係、日野湊。前の晩に二十四枚の札を自分で書いた。「眼鏡の人」「赤い物」「先生」。――「好きな人」なんて札は、書いていない。
二年の最終種目、A組のアンカーは学年一の美少女・氷室紗雪だった。札を引いた彼女は一拍止まり、観客席ではなく係席へ真っ直ぐ来て、俺の手を引いてゴールした。審判に「借り物は?」と聞かれて、スタンドまで届く声で言った。
「好きな人」
借りた物は閉会式で返す決まりだ。彼女は返さなかった。札も見せない。「文化祭の展示まで、あなたは私の借り物」。
規定により、未返却の借り物は係が毎日催促する。だから俺は今日も、陸上部のトラック脇で彼女が十本走り終えるのを待っている。返事はいつも同じだ。「まだ」。
札に本当は何と書いてあったのか。学年一の人気者が仕込ん
二年の最終種目、A組のアンカーは学年一の美少女・氷室紗雪だった。札を引いた彼女は一拍止まり、観客席ではなく係席へ真っ直ぐ来て、俺の手を引いてゴールした。審判に「借り物は?」と聞かれて、スタンドまで届く声で言った。
「好きな人」
借りた物は閉会式で返す決まりだ。彼女は返さなかった。札も見せない。「文化祭の展示まで、あなたは私の借り物」。
規定により、未返却の借り物は係が毎日催促する。だから俺は今日も、陸上部のトラック脇で彼女が十本走り終えるのを待っている。返事はいつも同じだ。「まだ」。
札に本当は何と書いてあったのか。学年一の人気者が仕込ん
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