概要
明日までに返したい。でも、あの人の大事な道具を誤魔化せない。
日曜の深夜、友人の引っ越しの前夜。津田は佐々木から借りた手鋸の刃を、終電三十分前に欠けさせてしまった。それは佐々木の亡き父の鋸だった。近所のホームセンターはもう閉まっている。終電で駆け込んだ深夜営業の中古工具店で、店主は同じ寸法の新しい鋸を出してくるが、欠けた鋸を下取りに置いていくなら、という条件つきだった。新しい鋸にすり替えて返せば、明日の朝は何事もなく済むかもしれない。見栄を守るか、友人の父の柄を守るか。閉店まで四十分、津田の不器用な夜が始まる。
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