送別会で流れるはずだった一本の記念映像。
そこに突然、自分を告発する恋人の映像が差し込まれる――という始まりから、かなり引きが強い作品でした。
この作品で好きなのは、主人公の孝則が感情のまま怒鳴り返さないところです。
彼は社会人劇団の“記録係”なので、映像の乱れ、音の違和感、データの記録など、自分が普段扱っているものを一つずつ確認していく。
「自分はやっていない!」と叫ぶのではなく、
「だったら記録を見よう」
となるのが、この主人公らしくていいですね。
しかも舞台が社会人劇団なのも面白いです。
役者は人に何かを信じさせる仕事をしていて、演出家は物語を作る側。
一方で主人公は、起きたことを映像として“残す側”にいる。
誰かが作ったもっともらしい物語と、カメラやデータに残った事実。
『レンズが捉えていた嘘と真実』という副題が、読んでいるうちにかなりしっくりきます。
いわゆる冤罪やざまぁ系の気持ちよさもあるんですが、力や偶然でひっくり返すのではなく、細かな矛盾を積み上げて崩していくタイプなので、そこが個人的には好きでした。
映像編集やタイムスタンプなど、デジタル機器を扱う主人公だからこそ成立する展開になっているのもいいですね。
職業や役割が、ただの設定ではなくちゃんと武器になっています。
裏切りや冤罪ものが好きな人はもちろん、「証拠を一つずつ揃えて相手の作った筋書きを崩していく話」が好きな人にはかなり読みやすい作品だと思います。
(―道化の末路―まで読ませてもらいました)