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概要
落ちていく姉の手首を掴んだ義兄の手は、本当に緩まなかったのか
十二年前、山頂で姉が落ちた。
十四時三十二分。
落ちていく姉の手首を、最後まで掴んでいたのは義兄だった。
看護師の早坂七海は、その手を信じていた。車椅子で暮らす姉・千尋のために、段差のない家を建てた義兄・湊。穏やかな二人の生活を、七海は疑ったことがなかった。
湊の元恋人が現れるまでは。
「あの日、湊は山頂で、千尋さんに別れを告げるはずだったの」
十二年の献身に、別の意味が生まれる。愛しているから、そばにいるのか。罪悪感から、離れられないのか。
あの一瞬、その手は本当に緩まなかったのか。
七海にも、聞かなかった言葉がある。事故の朝、実習を理由に切った、姉からの電話。義兄を責めると、胸が軽くなる。その軽さが、怖い。
手がかりは、姉が山頂に据えていたカメラ。十秒ごとにシャッターを切り続
十四時三十二分。
落ちていく姉の手首を、最後まで掴んでいたのは義兄だった。
看護師の早坂七海は、その手を信じていた。車椅子で暮らす姉・千尋のために、段差のない家を建てた義兄・湊。穏やかな二人の生活を、七海は疑ったことがなかった。
湊の元恋人が現れるまでは。
「あの日、湊は山頂で、千尋さんに別れを告げるはずだったの」
十二年の献身に、別の意味が生まれる。愛しているから、そばにいるのか。罪悪感から、離れられないのか。
あの一瞬、その手は本当に緩まなかったのか。
七海にも、聞かなかった言葉がある。事故の朝、実習を理由に切った、姉からの電話。義兄を責めると、胸が軽くなる。その軽さが、怖い。
手がかりは、姉が山頂に据えていたカメラ。十秒ごとにシャッターを切り続
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