概要
女装なら脱げば終わる。朋子は、脱いでも終わらなかった。
小劇団を主宰する劇作家・谷口修平、三十三歳。昼はECサイトのWEBディレクター。助成金の申請書に「劇作家本人が一ヶ月間、異性装で日常生活と社会生活を実施する」と、審査員向けに少し強めの一文を書いた。落ちると思っていた。
採択。助成予定額、五百万円。
制作担当の宮城は言う。「これは五百万もらえる紙じゃなくて、五百万ぶん管理される紙です」
こうして修平は、脚の毛を削られ、眉を柔らかくされ、補正下着とストッキングに管理された身体で、「谷口朋子・三十三歳」として会社へ行くことになる。
叱る同僚。惹かれてくる後輩。ゴールデン街の看板女優。事情を知らない営業部の女性。
一個一個は大したことじゃない。でも、終わらない。
これは、俺が作った人物に、俺が追いつけなかった一ヶ月の記録である。
採択。助成予定額、五百万円。
制作担当の宮城は言う。「これは五百万もらえる紙じゃなくて、五百万ぶん管理される紙です」
こうして修平は、脚の毛を削られ、眉を柔らかくされ、補正下着とストッキングに管理された身体で、「谷口朋子・三十三歳」として会社へ行くことになる。
叱る同僚。惹かれてくる後輩。ゴールデン街の看板女優。事情を知らない営業部の女性。
一個一個は大したことじゃない。でも、終わらない。
これは、俺が作った人物に、俺が追いつけなかった一ヶ月の記録である。
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