文学界4月号。
自称・作家もどきを自認する僕にとって、この時期の文芸誌はもはや凶器に近い。
新人賞の中間発表という、もっとも残酷なリストが載っているからだ。
もちろん、最初から期待なんてしていない。
耳にこびりついた業界の噂によれば、発売の2ヶ月前には最終候補者に「秘密の合図」が送られ、水面下でゲラチェックが始まっているらしい。
つまり、今日この本を手に取る前から、僕の運命はとっくに決まっていたわけだ。
仕事終わりに有隣堂へダッシュしている時点で、僕の負けは確定している。
棚から引き抜き、指先を震わせながらページをめくる。
そこには、僕の名前だけが綺麗に欠落した世界が広がっていた。
「まじか」という微かな抗議と、「そりゃそうだろ」という冷徹な諦めが、脳内のミキサーにかけられて、何とも言えないドブ板のような色をしている。
肩を落として店を出ると、街の灯りが妙に眩しくて腹が立つ。
すでに132回の公募は始まっている。
夏までには新しい構想をブチ上げたいところだが、肝心の心の方は凪状態で、ピクリとも動かない。
来週は群像の中間発表だろうか。
そこにもきっと、僕の名前というピースははまらないんだろうな、なんてことを考えながら、重い足取りで帰路についている。
がんばれ自分。