第131回文學界新人賞の大賞作品なんだけどもね。
もうね、このタイトルをタイムラインで見かけた瞬間、完全にやられたって思っちゃったんですよ。
何がヤバいってこのたった十文字ちょっとの並びだけで一瞬にして2000年代初頭に強制的にタイムスリップさせられるわけ。
あの分厚いブラウン管モニター。
ちょっと黄ばんだデスクトップパソコン。
オフィスの隅っこから聞こえてくるやけにリズミカルなマウスのクリック音。
画面の中ではトランプのカードがパラパラと崩れ落ちていてその手前には絶妙な哀愁とサボり感を漂わせた背中がある。
「ソリティア」と「おじさん」をくっつけただけでその時代の匂いとかオフィスの空気感みたいなものまで全部ひっくるめて脳内に直接叩き込んでくるんですよ。
まじでセンスの塊っていうか言葉選びの圧倒的な暴力。
こっちは日々、どうやったら少しでも読者の目を引くタイトルになるだろうかって頭を抱えてウンウン唸ってるわけじゃないですか。
それで絞り出した自分の手持ちのカードと、この『ソリティアおじさんがいた頃』を頭の中で並べてみた時のあのどうしようもない惨めさと言ったらたまらないわけですよ。
「あ、もうタイトルだけで一生敵わねーわ」って戦う前から真っ白な灰になっちゃう感じ。
そりゃあね、強烈な嫉妬もありますよ。
なんでその組み合わせを自分は思いつけなかったんだって奥歯をギリギリ噛み締めるような悔しさがある。
すげーなコイツって完全に打ちのめされてる自分もいる。
その悔しさを通り越してただただ「いいタイトルだなあ」ってため息をつきながら見惚れちゃうんですよね。
たった一言で時代を丸ごと引っ張り出してくるようなそういう途方もない才能を見せつけられて。
今日もまた自分の凡庸さを噛み締めながらパソコンの前に座っているわけです。
はい。