『薬売りの聖女』は第92話「クナの薬屋」をもって完結となります。
今まで本作を読んでくださったたくさんの方、本当にありがとうございます。
なぜこのタイミングでウェブ版を畳むのかというと、書籍版を読んでくださった方なら「ああー、確かに」とご納得いただけるかと思うのですが、書籍版とウェブ版でストーリーが180度異なるからです。
そもそもどうしてそうなったかというと、もともと本作はまったく書き溜めのない状態で書いておりまして、読者様からのコメントによって予定していた展開を変えてしまう、ということが何度もありました。
それだけ多くの注目が集まっている作品だというのは非常にありがたいことなのですが、投稿する⇒「おかしい、納得いかない、こうしてほしい」というコメントがいくつも届く⇒迷いながら書き直す を繰り返している中で、全体の軸が揺らいでしまい……。
これはひとえにわたしの力不足が原因です。自分の書いたお話に自信があれば、そんなことにはなりませんでしたから。
この反省があったので、書籍版では、もともと考えていたストーリーにほぼ書き下ろしのような形で修正していく形式で改稿していきました。
ざまぁ要素の強いウェブ版に比べて、クナが街で生き続けること、クナが自分の実力を正しく認識すること、そんなクナの周りの人々にも幸せがあること、を念頭に置いております。ゲームっぽく喩えますとウェブ版がトゥルー、書籍版がハッピー、みたいな感じです。
そして書籍版では聖女や聖獣など、いろいろと気になる要素も散りばめています。
こちらについては、2冊を通して何かが解決する・大事件が起きるということではなくて、得体の知れない何か「大きなもの」の存在に翻弄されながらも、お構いなしに前を向いて生きていくクナの様子を描いていくことを徹底しています。
もちろん、3巻を出すとなると、そろそろクナとしても無視できないことになっていくのかな、と想像していますが……(笑)
こういった大きな変更点があるものですから、このまま連載を続けるとなると、書籍とはまったく違うお話を一から書くことになるので、とんでもないことになってしまうんですね。
わたし自身が専業作家なのもあり、それは今は選べない選択肢でした。
むしろ1巻と2巻の売り上げがさらに伸びて、3巻を書き下ろしで出させていただく可能性に懸けたほうがいい――と思いました。
連載から間もなくして多数の出版社から書籍化のお話を頂戴した本作ですが、出版に至るまでにはかなり難航しました。
書籍化が決まってから1巻発売まで1年4か月もの間が空き、2巻が出るまでさらに11か月空いているという時点でいろいろとお察しの方もいらっしゃるかと思うのですが、当時は本当にお話に向き合うのも辛くなってしまって、時間がなくて更新できなかったというよりは、涙が出て書けないから更新できないという状態が長く続きました。クナとロイに申し訳なくてさらに苦しくなりました。
長く更新が止まってしまい、不安にさせてしまった読者様もたくさんいらっしゃったかと思います。
本作はカクヨム様の恋愛累計(全体)で3位を獲得しています。
そんなふうにたくさんの読者様に愛していただいて、わたし自身が精いっぱいやっても、それでもうまくいかないことがあるんだな……と衝撃を受けた出来事でもありました。
今でも当時のことを思いだすと息が詰まってしまいます。あのときああしていたら、こうしていれば、とたらればが何度も浮かんで一時期は不眠に陥っておりました。
それでも、素敵なイラストレーター様とのご縁をいただき、コミカライズが始まり、担当編集さんも変わって、支えられながら、なんとか立ち上がって一歩ずつ進むことができました。
自分ひとりのがんばりだけでは、どうにもならないことがたくさんあるけれど、一緒に歩んでくださる方がいるのは本当に幸せなことだと思います。
何よりも、いつも頭の中にいるクナとロイが、立ち尽くすわたしの手を優しく引いてくれるわけではないけれど、ときどきこっちを振り返ってくれるものですから、「置いてかないで~」とよたよた歩きだすことができました。
2年半も経ったので、本当にちょっとだけ当時の状況と気持ちを吐露させていただきましたが、そういった出来事を経て少しは作家として成長できたのかな、と今となっては前向きに捉えています。
『薬売りの聖女』のウェブ版は完結となりますし、書籍版は2巻でキリのいいところまでキッチリ書かせていただきましたが、もし3巻を書く機会をいただけたときは今まで以上にがんばります。
またクナたちに会いたい!と思っていただけたときは、ぜひ書籍をお手に取っていただけたら幸いです。1巻も2巻もとってもおもしろく読み応え抜群に仕上がっております。
コミックスも1か月で重版出来!と大好評です。クナもロイもとってもかわいいです。ぜひぜひノベルと合わせてよろしくお願いします。
そして成長したからこそ書けるお話、ということで本日より新連載もスタートしましたので、よろしければこちらも読んでみてください。(急な宣伝!)
タイトルはチュートリアルで死ぬ令嬢ですが、攻略対象たちの溺愛が止まりません!(※9/15 タイトル変更しました)
乙女ゲーム転生ものは『あくサポ』以来なのですが、ずっと再チャレンジしたいなと思っていたジャンルです。以下あらすじになります。
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『チュートリアルで死ぬ令嬢ですが、攻略対象たちの溺愛が止まりません!』
ある日突然、乙女ゲーム『聖なる花乙女の祝福を』に登場する悪役令嬢アンリエッタ・リージャスに転生してしまった私。
暫定・花乙女と揶揄される彼女はゲームの序盤も超序盤、チュートリアルで魔力を暴走させて死んでしまう令嬢である。
だけど転生したならと、意気込んで推しキャラのもとに向かってみるけど――私のせいで魔法薬の調合に失敗してしまったエルヴィス(推し)は、ゲーム通りの天使ではなく悪魔に豹変!?
こうなったら絶対に生き延びて、推しに会ってみせるんだから!
寝ている間にキスしようとしてくるお色気校医や、冷酷無慈悲な義兄、抱きつき癖のある従者、喧嘩腰の王太子、悪魔と化した意地悪なクラスメイトなどなど、顔面凶器な攻略対象たちに翻弄されつつも必死に授業や特訓に励んでいると、私を見る周囲の目が次第に変わってきて……?
え? 『魔力量が尋常じゃない』? 『あなたこそ花乙女に相応しい』ですって?
いやいや、私、もうすぐ死ぬ予定の暫定・花乙女ですから。花乙女に選ばれるのは、異世界から召喚されてくるヒロインですからね。
チュートリアル開始まで残り1か月。崖っぷち悪役令嬢の奮闘劇、始まります!
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今回は反省を生かして14万字書き終わっている状態ですので、ぜひ読者の皆様には思ったことや感じたことを率直にコメントに書いていただけたら嬉しいです。
優しいコメントだともっと嬉しいです(笑)
リンクはこちら⇒
https://kakuyomu.jp/works/16818093084739229888『薬売りの聖女』と『チュートリアル令嬢』、どちらもよろしくお願いいたします。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
そしてたくさんの応援のお声を、本当に本当にありがとうございました。
2024年9月12日 榛名丼