原田マハ著
著者の真骨頂である美術ネタ。今回はサザビーズ香港のオークションがメインの舞台となっている。美術オークションのドラマは、スリリングな価格のつり上げにあるが、その要素をしっかりと描きつつも、単なるマネーゲームの域にとどまらせないところに、マハさんらしさを垣間見た。
美術品につきものの贋作も交えながら、ハラハラドキドキのミステリーに仕上げている。ストーリー構成の巧みさもさることながら、もっともマハさんらしかったのは、主人公側が一筋縄ではいかない曲者ぞろいでありながら、行動の根底に「善意」「正義」がにじむところ。ダークな描写があっても読後感がさわやかなのはそのせいなのか。
すっきりはしたのだが、あえて希望を言えば、敵役「ゼウス」の逆襲を続編にしてほしい。