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ギガントアーム・スズカゼ 第七話 製作途中版⑥

この記事はギガントアーム・スズカゼ第七話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561

◆ ◆ ◆

 その、三日前。
 グラウカ部隊を退けたギガントアーム・スズカゼの仮想コクピットにて。
 一郎の部屋を模した六畳一間には中央にちゃぶ台があり、それを三人のパイロットが囲んでいる。言わずもがな加藤一郎、ミスカ・フォーセル、ティルジット・ディナード四世の三名だ。
 そのうちの一人、加藤一郎は神妙な顔でちゃぶ台を見下ろしながら、コメカミに指をあてていた。

「妙な仕草だな」
「良いだろ別に、集中する時のクセだよ。ええと……こんな、ところで、どうだ?」

 言葉通りに一郎は集中する。意志に呼応し、魔力が集まる。ちゃぶ台の上へ寄り集まり、形を成す。
 そうして現れたのは、幾つかの袋菓子であった。地球のコンビニやスーパーで売られているアレである。

「わ、出た出た! 一度食べて見たかったんですよねー! いただきまーす!」

 ジットは早速袋の一つを開け、スナックをつまんで口に放り込んだ。

「へぇーおいしい! こんな味なんですねえ!」
「食べた事なかったの?」
「なかったんですよ。そういう機会が無くて」
「うん、確かに良くできている。僕も向こうで食べた味だ。流石は本場地球人の記憶を参照しただけの事はある」

 見ればミスカも袋を一つ開けて中身をつまんでいる。そして手元にはいつものジュース。異世界だというのに学生時代さながらの呑気加減が、逆に一郎を不安にさせた。

「てか、大丈夫なのかよ」
「何がです? あ、カロリーですか? ここは仮想空間ですから味や食感を疑似的に感じるだけです。大丈夫ですよ」
「そうなんだ。いやそうなんだけどそうじゃなく」
「ならなんだ」

 言いつつ、ミスカは二袋目を開けにかかる。

「そりゃあ、って食べるの早いな」
「美味いからな。それより疑問点はなんだ」
「そりゃオマエ、こんな呑気してて良いのかって事だよ。経緯はどうあれ、今の俺達って巨大ロボに乗ってるじゃん?」
「そうだな」
「で、ジットくんの話によると、なんでか良く分かんないけど、身内にスパイがいるらしいと」
「そうですね」
「そんな状況なのにスズカゼから降りずにこんな事してたら、怪しまれるんじゃあないの?」

 さも当然な地球人の疑問に、しかしイーヴ・ラウス人の二人は顔を見合わせる。
 それから、同時に笑い出した。

「? 何だよその反応。俺おかしな事言ったか?」
「そうではないが、まあその疑問も最もだな。そうだな……ああ、丁度いい。加藤、あれを見ろ」
「どれを?」

 ミスカに示されるまま、一郎は振り返る。そこにあるのは巨大なモニタ。スズカゼの戦闘制御システムの一部であり、未だにメインカメラから繋がる映像が映りこんでいる。
 先の戦闘によって滅茶苦茶に木が倒れた森。その合間に倒れ伏し、火花や煙を噴き上げるグラウカ部隊の残骸。

「あれが何だって……うん?」

 一郎は違和感に気付いた。
 火花。煙。そして遠くの空を舞う鳥の影。
 それら全てが、凍り付いたように静止しているのだ。

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