この記事はギガントアーム・スズカゼ第五話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
ミスカは、顎に手を当てる。改めて分析する。
今まで前提としていた懸念事項、それらは全て的外れだった。それはつまり、その気になればギガントアーム・スズカゼを使ってウォルタールを破壊する事さえ可能であるという事だ。
無論、ミスカも一郎もそんな事をしない人柄なのは、ジット自身分かっている筈。しかしどうやら他の乗組員にそうした情報は伝わっていないらしい。マッツの態度がまさにそれだ。
だが、何故そんな状況になっている? 話せない理由があったのか?
「……いや、そうか」
一つ、仮定が生まれる。
ティルジット・ディナード四世は、話せなかったのではない。話さなかったのだ。乗組員達へミスカの情報、特に人柄や目的を意図的に。そう考えれば色々と辻褄が合う。
なれば必然、疑問点が新たに生まれる。何故ティルジット・ディナード四世はそんな事をした? 同じ立場に立つという交渉の大前提を、何故自分から捨てたのだ?
それについてもミスカは仮定を立てている。しかし、もしこの仮定が当たっていたとすれば。
「そう遠くないうちに――!」
「なに、どうしたの」
立ち上がりかけるミスカと、それを横目にカップを傾ける一郎。
衝撃は、そのタイミングで襲い来た。
「あっつ! こぼした! ごめんなさいってか何だ今の!」
「どうやら攻撃を受けているようですねえ。遮蔽魔法は完全だと思っていたのですが」
「わ、若! どうなさるつもりなんで!?」
狼狽えるマッツとは真逆、奇妙に落ち着いた表情で、ジットは答えた。
「その説明をこの場で行う予定だったのですが……繰り上げて、実行に移すしかなさそうです」
言い放つティルジット・ディナード四世を、ミスカ・フォーセルは改めて見据える。
もし本当に、ミスカの仮定通りだったのだとしたら。
ジットが戦っていたのは、エルガディア魔導国だけではない。
ウォルタールの乗組員達に対してもだ。