この記事はギガントアーム・スズカゼ第4話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「……ミスカ・フォーセル。エルガディア・グループ所属の調査員だ」
胸中はともあれ、ミスカは名乗る。
瞬間、一郎は部屋の温度が下がった気がした。原因は分かっている。アルグ、マッツ、シューカ達の三人の目だ。この場に居ない面々もそうだったが、どうした訳かウォルタールのスタッフ達は、皆ミスカを見る目が冷たいのである。
「さて。加藤さんのためにもまず最初に改めておきましょう。この世界、イーヴ・ラウスがどうなっているのか。僕達の属するアクンドラ共和国と、フォーセルさんの属するエルガディア魔導国が、どのような関係なのか」
「あ、ありがたい。丁度知りたかったんだよ着の身着のままでこっちの世界に来ちゃったからさ」
「そうでしょうとも。なので、手早く結論から行きましょう。アクンドラ共和国とエルガディア魔導国は、現在戦争状態にあります」
けろりと。
ティルジット・ディナード四世は言ってのけた。
「正確には少し違う。エルガディア魔導国は、イーヴ・ラウスにあるほぼ全ての国家と敵対関係にある」
けろりと。
ミスカ・フォーセル調査員も言ってのけた。
「……。えっ」
それらを飲み込んで、理解するまでに。
加藤一郎は、少し時間がかかった。
「じゃあ、なんだ、つまり。エルガディアは、世界征服の真っ最中って事?」
「ざっくり言ってしまえば、そうなる」
「だから、フォーセルとジット君達は、その」
「はい。公的な観点から見れば、敵対関係にあります」
断言するジット。一郎は理解する。ミスカへ向けられる冷ややかな視線、その意味を。
しかし、そうなると。
「……ん? あれ? でもおかしくない? 昨日ロボに乗って襲って来た敵の人。何て言ったっけ」
「トーリス。トーリス・ウォルトフだな」
「そうそう。あの人もエルガディア人? なんだよな?」
「そうだ」
「じゃあ変だろ。なんでエルガディア人同士で戦いになったのさ。あの時同じ国の人間だーって名乗れば良かったんじゃないの?」
至極もっともな一郎の疑問。ジット達アクンドラ側の者達も、無言のままミスカを見ている。
「もっともな疑問だ。だがそれにも明確な答えがある」
「それは?」
「エルガディア魔導国は、現在分裂状態にある。クーデターを起こした非公式政権が、国を乗っ取っているんだ」