この記事はギガントアーム・スズカゼ第4話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「フォーセル様ー! 聞いてますかー!? そろそろ通信警戒地帯に入りまーす! 中にお入りくださーい!」
呼び声を背に感じながら、ミスカ・フォーセルは手元へ視線を落とした。プレート。スマートフォン大の透明な板。それを介して今し方まで地球に繋がっていた通信回線は、四番を除いて接続不可となっていた。
「当然の処置だな」
「フォーセル様ー!」
「解っているとも」
振り向くミスカ。がたりと車体が少し揺れたが、歩みはまったく乱れない。
そう、車体だ。ミスカは今まで、走る大型車両の背中で通信していたのだ。
深い白色を基調としているこの大型車両は、一言で言えばアメリカで使われる大型輸送トレーラーに似ている。本体がコンテナ上の大型ユニットを牽引する構造なとまさにそれだ。しかして中身は全く違う。
「ようやく来られましたか! 先に行きますからね!」
牽引ユニットの中央、開いたハッチから顔を出していた赤髪の少女が、勢いよく引っ込んだ。彼女に倣い、ミスカもハッチへ入る。梯子を下りる。待っていたのは先程の少女と、長い通路だ。
等間隔に照明が並ぶ通路は車体と同じ白色で、床だけは鈍色の金属タイルが敷き詰められている。魔力循環合金。それだけでも驚きだが、特筆すべきはこの通路がそれぞれミスカの右手、左手、正面に伸びている事だろう。明らかに車外コンテナよりも長い。それだけ莫大な空間が、牽引ユニット内部には折り込まれているのだ。
それにしても、果たしていかほどの広さだろうか。設備から逆算するに戦艦一隻分あったとしても不思議ではないが、それにしては人が少ない――。
「さ、こちらです。若様がお待ちですよ」
思考を中断させたのは、先程からミスカを呼んでいた少女だ。確認もせずすたすたと歩いて行ってしまう。言葉こそ丁寧だが、応対はぶっきらぼう……と言うより、困惑と恐怖が邪魔をしている様子か。アクンドラ人によるエルガディア人への応対なのだから、これでも相当に丁寧な方とは言えるのだが。
故に、あえてミスカは彼女の名を呼んだ。
「ありがとう、シューカさん」
そう、彼女の名はシューカ。ギガントアーム・スズカゼをめぐって呉越同舟する事になってしまったアクンドラ人の少年、ジットに仕えるメイドの一人である。
「……」
ちらりと一瞥し、会釈するシューカ。それからまた歩いていく。背丈、恐らくは年齢もジットより小さいだろう彼女のヘッドドレスを眺めていると、すぐに目的の部屋へ辿り着いた。
「こちらです」
「ありがとう」
自動ドアを潜るミスカ。ちょっとしたオフィスくらいの大きさがある室内には、シューカが言った通りにジットと、他数名の姿があった。
「や、やった勝ったァーッ!!」
「くうっ、あそこで棒ブロックが来れば……!」
「これで一郎様の一勝五敗ですな」
「ほほー、まぐれとは言え若から一本取るとはやりおるのう」
そして、何やらパズルのゲームで盛り上がっていた。