この記事はギガントアーム・スズカゼ第4話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「それを調べるのが、私達の最初の捜査方針ね」
「よろしく頼む。こちらも――む、そうか」
不意に、画面内のミスカが誰かに答えた。
「どうしたの、フォーセル捜査員」
「こちらの事情だ。そろそろ通信安全圏を抜けるという話でな」
「移動中、なんですか?」
「ああ、その辺の経緯もレポートへ纏めてある。最後の方だがな」
「解ったわ、じゃあそろそろ切った方が賢明ね。幸い、アナタと依頼人の加藤一郎さんの無事は確認できたし」
「ああ、可能な限り速やかに合流を果たしたいものだ」
「難しそうだけどね、位置的に。ともあれ、幸運を祈るわ」
「ありがとう、そちらも幸運を。ではまた」
通信切断。ミスカの顔が消え、元の透明に戻るプレート。それを透かして、チェルシーは星山を見た。
「今、通信回線は何番を使ってたのかしら」
「え? ええと四番ですが」
「では、今後ミスカ・フォーセル調査員から来る通信は全て四番を使うように」
「え、良いんですか? 確か通信回線はエルガディア本国からの傍受を警戒して、たくさん用意してた筈では?」
「もう既にされてるわ」
「エルガディアにですか!?」
「違うわ。アクンドラ共和国によ」
星山は記憶を掘り起こす。アクンドラ。確かに今までのやり取りで一度、ミスカはその単語を口にしていた。
「エルガディアと対立関係にある国家、でしたっけ」
「正確にはそのうちの一つ、ね。まあ、色々とややこしい状況になってるんだけど……」
疑問は尽きない。だが取り急ぎ、チェルシー達がやるべき事は変わっていない。
「……その辺は、この部屋を調べてからにしましょうか」
「それもそうですねえ」
星山は改めて見回す。加藤一郎。涼しさと引き換えに異世界のいざこざへ巻き込まれた、不憫な被害者が居た部屋を。