この記事はギガントアーム・スズカゼ第4話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「――これはこれは」
「ハロー? こちらは同じくM案件対策室所属、チェルシー・キーンよ。珍しく下手を打ったみたいね、フォーセル捜査員?」
「キーン捜査員か。やむにやまれぬ事情があってな」
「へえ、どんな?」
「行方不明だったギガントアーム・ランバと接触した」
チェルシーの顔から微笑が消える。
「それは確かに、やむにやまれぬ事情のようね」
「ああ。そちらは現場検証か? 収穫はあったか?」
「これから始めるところよ。どんなお宝が」
言いつつ、軽く部屋を見回すチェルシー。うつ伏せの冷蔵庫と目が合った。
「出て来るやら」
「そうか。こちらはこれまでの経緯を纏めている。そちらの彼に送れば良いんだな?」
「えっ? あっ、はい! 星山道彦です。初めましてよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく。で、これが僕のレポートだ」
ミスカが言うと同時、星山のスマートフォンとチェルシーのプレートへデータが着信。星山は画面を見る。
「確認しました、ええと」
星山がスマートフォンを操作すると、画面からホロモニタを投射。チェルシー共々まず最初の情報、そもそも何故この部屋で爆発が起きたのかを確認する。
「成程。想像以上に大変な事になってるみたいね」
「ああ。今はその部屋の住人、加藤一郎と、現地で知り合ったアクンドラ人達と行動している」
「その辺もレポートに?」
「そうだ」
「成程、楽しみね」
小さく息をつくチェルシー。形の良い眉が少し歪む。
星山も眉間に皺寄せたが、こちらは別の理由だった。
「でも、何かヘンですね」
「? どうしたの星山クン?」
「この部屋の有様ですよ。それ程の爆発が起きたにしては、何というか」
言われて、チェルシーも気付く。グラウカの攻撃に加え、次元の亀裂が消失したのだ。なるほど爆発は起きただろう。
だが、それにしては。
「確かに、被害が少な過ぎるわね」
「やっぱ先輩もそう思いますか」
「ええ。このレポート通りの事が起きたなら、この部屋どころか建物の大部分が吹っ飛んでいてもおかしくない筈」
「そんなにですか!?」
「そうよ。でも、そうはならなかった。という事は」
「どこかに原因がある――」
言って、ミスカは思い出す。一郎が言っていた壁紙の話を。
「キーン、壁紙を調べてみてくれるか」
「壁紙を? 良いけど」
チェルシーは手近の壁により、焦げた壁紙をめくる。その下から現れたのは、やや大きなヒビが走る壁と。
明らかに魔法陣と思しき、幾何学的な文様であった。
「これは」
「防護魔法ね」
「二か月間、この部屋にはギガントアーム・ランバから魔力が流入していた。それを動力にして動いていたんだろう」
「でも、いつから? 誰が、何の目的で?」