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千石京二さんの「記憶のゆうれい」を読ませて頂きました

昔の記憶を思い出しました。
夢のことです。
夢まくらって奴でしょうか祖父の夢でした。
亡くなってずいぶん経っていて、自分は家を出て仕事についていました。

喉がかわいた

祖父は一言そういいました。
朝を待って母へ電話をして夢の話をしました。
「ちゃんと毎朝、お茶とご飯は供えてるよ」
母は笑ってそういいました。祖父に遭えて良かったねと。
その言葉で初めて自分も久しぶりに祖父に逢えてよかったと笑顔になれました。
なんで祖母を連れてこなかったんだろうとも、思いました。
「こんどは婆ちゃんと一緒に来てよ」
祖父は180を超す大柄な人で、祖母は150程度の小柄な夫婦で、ろうそくとマッチ箱のような風体ですがとても仲が良く、祖母が逝くと祖父も一年を待たず追いかけて行きました。
二日ほど経って母から電話が掛かりました。
「気になったからお墓に行ってきた」
母の言葉はそこから始まりました。
母はもう一つの湯飲みを思い出して祖父のお墓へ行ったそうです。
お墓の湯飲みは空になっており、なるほどこっちかと笑いながら湯飲みへ水を注ぎました。母は祖父と世間話をしながら一回りお墓の掃除をしたあと正面で再び手を合わせました。
また来るね・・・・湯飲みが空になっていました。

母は大きな声で笑いました。
傷一つないし転んだ後もないのに何で湯飲みにヒビが入ったんだろうね。
新しいのに変えといたからもう大丈夫だと母は続けました。
変えなかった方がまた、爺ちゃんに逢えて良かったかねぇ、と。

母は本当に祖父が飲んだのだろうかと眼を疑ったそうです。
持ち上げた湯飲みの底に付いた雫を見るまでは。
再度訪れた祖父のお墓に向かって、今度は私に言ってねと母は新しい湯飲みを満たして帰って来たそうです。


記憶のゆうれいを読了後、ふとその事を思い出しました。
やさしい作品に遭うと自分まで優しくなれた気がしますね。

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