• 異世界ファンタジー

SS 「受付嬢シエラの平穏な日常…?」


「……ん」

ひとつ、背伸びをして身体をほぐす。

――ギルドの朝は、いつも通りの忙しさで始まる。山積みの書類を前に、受付嬢シエラは小さく息をついた。

(今日、新人さん多いなぁ…)

新人さんは皆、初々しくて緊張気味だ。ぎこちなく剣を構えたまま立ち尽くす少年、きょろきょろと周囲を見回す少女、そわそわと足元をいじる小柄な少年――そんな様子を見ると、思わず微笑ましい気持ちになる。

(でも……あの人は違ったなぁ)

そんな風に考え、書類を整理していたところ、ふと手元の登録書類に目が止まる。


【登録名:アルフォンス】


……思い返すのは、前、新人さんに向けた講習。模擬戦のあと、ギリウスさんが珍しく何度もおかしい奴だと首を傾げていたのが印象的だった。

“まるで戦うために生きてるみたいな目だったぞ……”

ギリウスさんの愚痴めいた独り言まで、今でも耳に残っている。

以前、覗いた時の訓練場。その隅で派手に転んだ他の新人たちの姿も脳裏に浮かぶ。

(あの模擬戦で転ぶ人、毎年多いけど……アルフォンスさんは異様に動きが洗練されてた、って聞いたっけ)

それでいてスキルは貴族教育を受けていた人らしいもの。ギリウスさんの話を聞いて、ステータス鑑定結果を二度見してしまったぐらいだ。

(貴族から平民にっていう経歴も珍しいけど……やっぱり、よくわからない)

そんな彼の登録資料を確認しつつ、思考を深める。最初の第一印象が強烈のそれだったのもあってか……未だにアルフォンスさんという人が、何なのか分からない事が多い。

そのまま帳簿整理を続けながら、ふと……小さく微笑む。

(まぁ……これから少しずつ知っていければいいよね)

何かが違う――そんな違和感が今も消えない。けれど、怖いとは思わなかった。ただ、少しずつでも知っていけたらいい。彼が何を目指して冒険者になったのか、いずれ分かる日が来ると。

そう思うことにして、切り替える。

(……でも、アルフォンスさん淡々としてるしなぁ。ホントに大丈夫かなぁ)

今思えば、アルフォンスさんと交わった会話はほぼ全てが事務的なもの。世間話の一つすらした記憶もない。

(――うん、その時はその時!)

そんな風に思いながら、シエラは今日もまた、積まれた書類の山に手を伸ばした。ギルドはいつだって慌ただしく、賑やかで、少しだけ不穏で――けれど、それがこの場所の“日常”なのだから。






ここまで読んでいただきありがとうございます!

実はこのお話、本編の幕間に入れようか迷ったんですが、結局入れませんでした。
でも、せっかくなので「もったいない!」と思って、近況ノートにこっそり置いておきます。
もしよければ、シエラさんの日常も楽しんでいただけたら嬉しいです!!

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