守宮 靄

旅する《私》は広大な湿原を渡る。 蓮によく似た植物が密生する沼、そこに風が吹くとき。 歌を織り込んだ空想旅行記。

引きこもってしまった俺は田舎に帰り、縁側で惰眠を貪っている。 風鈴が鳴る。それが憎くて仕方がない。

旅する『私』は密林を彷徨う。歩けども歩けども続く緑の闇、金の瞳をした虎、そして水の身体をもつ乙女。 歌を織り込んだ空想旅行記。

旅する『私』は白い砂漠を渡る。砂粒のひとつひとつが水晶であるその砂漠と、廃墟に残されたもの。 歌を織り込んだ空想旅行記。

箱の中身はなんですか？ 何にも代えがたい大切なもの？ いつかのために保管しておきたいもの？ 誰の目にも触れてほしくないもの？ 切り離して閉じ込めて忘れてしまいたいもの？ それとも…

石工かつ彫刻家の男は美しい石に惚れ込み、踊り出す娘の像を彫った。彼らの末路についての話。

コーヒーを飲む常連客の『私』と、風変わりなマスター。 暗い部屋のなか、何も起きない、起こせない話。

氷漬けの大地に生きる少年は、氷洞の奥で氷柱の少女に出会った。 長い時間の果て、春になるまでの話。

雲の上で虹をつくる《僕》は、美しい色の結晶を見つけます。それは『恋』の結晶。《僕》は恋に惹かれ続け、人間になりたいと願います。 大昔に書いたものを僅かに改稿した作品です。

《私》は水槽を抱えて海へ行く。 《僕》は水槽に閉じ込められている。 ほんとうに短かった毒の話です。

変われない。変わらないといけないのに。『亜』。俺は。 『亜(架空の病気)』というお題に沿って書いた短編です。

ここにあなたはいない。しかし、すぐそばにいるような気がしてならない。 探さなくちゃ。 闇に包まれた海底を這いずり回る話。

電灯は室内から夜の闇を遠ざけ、そこに住んでいた幽霊は本のなかの闇へ移り住んだ。 そう語るあなたの本を僕は読む。 毒にも薬にもならない話をするあなたと、それを聞いていた僕の話。

小学生の『僕』は『彼女』から怪しい錠剤を渡される。なんでも二人で飲めば、二人だけの楽しい夢を見られるとか。しかし『僕』には彼女に言えない秘密があって……。

野獣の姿に変えられ森で暮らすことになった青年のもとに、みすぼらしい姿の少女が訪れた。 言葉はなくとも慈しみあうようになったふたり。 しかし少女の手によって青年は人間へと戻ってしま…

ある雨の夜、ベランダに墜落した《天使》を見つけてしまった僕。 愛らしい《天使》とその美しい翼に、僕は惹かれていく。 ※本編(70字未満の超短編)と補遺(6000字程度の短編)から…

死を間近にした少女のもとにやってきた、『宇宙から来た』と主張する奇妙な来訪者。 幾光年もの距離を超えて出会ったふたりの、ささやかな交流の話。

目覚めると目の前には四肢のない人形。 動けないそれを抱いて俺は海へと向かう。