結果として両クッションの仙骨部・大転子部の体圧では有意差が認められなかった。ずれ力では大転子部において有意差が認められた。アンケートでは5項目全てにおいてオレフィンの方が点数が高い結果になった。特に「痛み」「圧迫」「硬さ」が有意差が現れる結果となった。
この結果を受けて、ずれ力で有意差が現れたものの、褥瘡発生の危険値は下回っているため両クッションともに有効性はあると言える。有意差が現れたのはオレフィンの特性であるへたりや変形が小さいことからずれ力を抑えられたと考察できる。アンケートではオレフィンの方が安楽性が高いという結果となったが、オレフィンはゴム弾性で一定の時間でのへたりや変形が少ないことが結果につながったと考察できる。一方ポリスチレンはへたりを生じやすくビーズの流動性が低下することでクッションが硬くなりやすい特性がある。「ムレ」「安定感」に関しては両クッションともに通気性に優れ、体の部位に合わせて安定感を維持できることから使用感に差は現れなかったと考えられる。
次にビーズクッションの使用によるポジショニングについて調べる必要がある。2)この論文ではポジショニングが困難な患者さんに対して特殊ビーズクッションを使用し、経過を観察したものである。特殊ビーズクッションはモルテン製のピーチという商品である。高耐久・快適性・衛生的を目的としたポジショニングピローである。素材はウレタンや繊維性のクッションとは異なり、柔らかさと反発力がある体圧分散性のクッションである。1人目は44歳、女性、低酸素脳症に伴う高次機能障害で褥瘡を生じやすい状態である。2人目は55歳、女性、急性重症膵炎による敗血性ショックを患っており、肥満体型で全身浮腫の状態である。3人目は62歳、女性、意識障害と誤嚥性肺炎を患っており、全身浮腫状態である。この3名にビーズクッションを使用した。
結果は1人目は特殊ビーズが患者の動きに追従してずれることなく包み込み、安定して使用できた。2人目3人目は浮腫が強い状態でもビーズの圧痕は無く、ポジショニングが適切に実施できた。
以上のことから、特殊ビーズクッションは体圧分散性が良く、ビーズの流動性があるため形状を整えやすく、安定した体位保持が可能であることが分かる。体位を保つためにこのビーズクッションを組み合わせてポジショニングをとることが可能なので、さまざまなクッションを選択する必要がないことが分かる。
次に体を覆われることについて調べる必要がある。3)この論文では看護中にブランケットで患者の身体を覆う行為が心身にどのような影響を及ぼすのかを目的とした。健康な青年女性30名を対象とするクロスオーバー試験を実施した。ブランケットの有無で被験者に対して血圧測定、足背動脈の脈拍測定、唾液搾取を実施した。データは心理的指標としてPOMSを用いて測定をした。さらに主観的評価としてVAS(VisualAnalogue Scale)を用いて、「安心感がある」「リラックス感」「守られている感じがする」「落ち着きがない」「不安」「肩に力が入る」の6項目を測定した。
結果としてPOMS得点は介入前に有意差はなかったが、介入後の「緊張―不安」スコアがブランケットを使用したことで有意に低下した。これはブランケットを使用したことで緊張と不安が和らいだことが分かる。VASの評価では「安心感がある」「守られている感じがする」の2項目がブランケットを使用したことで高評価であった。さらに自律神経活動は、副交感神経活性がブランケット保護ありの方が有意に高く、交感神経活性はブランケットなしの方が有意に高い結果となった。
以上のことからブランケット保護による緊張―不安は和らいだことが分かる。一方で「リラックス感」では差がなかった。考えられる理由として、リラックスはストレスから解放されたという自覚から感じられるため、実験においてはリラックス状態には至らなかったと推測できる。