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古代のアジアの衣装とは―「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「五十五」を投稿しました!

平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「五十五 翠令、下級の文官を案内する(一)」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927861134519958

今回は、翠令が見慣れぬ人に出会って「文官だ」と思う場面が出てきます。

翠令自身は武人ですが、武人の彼女から見て「文官だ」と判断する理由……すなわち武官との衣服の違いは何でしょう。

私がイメージしていたのは、武官は巻纓冠を被り袴の裾も靴に入れた活動的な服装なのに対し、文官は垂纓冠に袴も膨らんでるという違いです。

纓というのは冠の後ろにある長い部分です。文官だと垂れさがっています(垂纓冠)。武官だとこれがクルクルと巻かれています(巻纓冠)。
風俗博物館の人形展示の写真(垂纓冠)をこの記事に掲載しておきます。

あと、文官と武官の装束の違いとしては、縫腋袍と闕腋袍がありますね。
袍というは、日本の場合、衣冠束帯姿でぱっと思い浮かべる丸い首の衣装です。
文官では袍の腋が縫い合わされていますが、武官では縫われておらず、そのぶん活動的です。

話が飛びますが(アジアを感じさせるコスチュームのデザインについての話題なので関係はありますw)。
私は若い頃フィギュアスケートを少しやっていたので、その当時から長い間観戦しておりました。
フィギュアスケートのプログラムで、ときどき「日本」「アジア」がテーマになることがあります。
例えばプッチーニの「蝶々夫人」「トゥーランドット」などを使う場合ですね。

これらの衣装……「日本」や「アジア」を連想させようとすると、襟元は現在の「着物」風になることが多いです。胸元が斜めになるんですね。このような襟は日本の服飾史では「垂領《たりくび》」と呼ばれるようです。

変わった例としては。
エルビス・ストイコ選手が和太鼓集団の「鼓童」という楽曲を使ったことがあります。
この時の衣装も斜めで垂領風ですが、それに加えて日本語のカタカナで「ライーヨー」と謎の文字列が記され、話題になりました。
今でも「ストイコ ライーヨー」で検索すると衣装の画像が出てきますw 理由については当時は「ライオンと書きたかったのでは?」と言われていましたが、Wikipediaによると「雷音」という曲の名前の誤記だそうですね。

「エルビス・ストイコ」Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%88%E3%82%A4%E3%82%B3

これらのように、胸元が斜めのコスチュームであれば、そのプログラムは日本などアジアを表しているのであろうと一種お約束な感じがあったのですが。

そこに新たな「和」を提示したのが、羽生結弦選手の「陰陽師」の衣装ではないでしょうか。

今までのフィギュアの衣装で、少なくとも私は見たことがない「狩衣」風。
この衣装のようにように丸い詰襟のようなものを「盤領《あげくび》」といいます。

羽生結弦選手は数々の「初めて」を成し遂げた人ですが、衣装についても新しさをもたらしたと言えるかもしれません(私が知らないだけで、それ以前にあったらすみません。ご連絡いただければと思います)。

「盤領《あげくび》」の「袍」はいつから始まったのか。
私の手持ちの「ビジュアル 日本の服装の歴史」(ゆまに書房)では、はっきりと記されていません(いつのまにか日本史に登場している感じです)。

私は今、中華後宮モノを書こうとしているので、「中国服装史」という本を読んでいます。
(「中国服装史 五千年の歴史を検証する」華梅著 施潔民訳 白帝社)

秦の統一以前から秦漢、魏晋南北朝、隋唐五代と呼んできていますが。
「袍」という言葉が使われていても「曲裾袍」「直裾袍」などは垂首のようです。
唐代の服装で取り上げられる「円襟の袍衫」が「盤領《あげくび》」の「袍」のようで、以下のような説明があります(85頁)。

”「団襟」の袍衫とも呼ばれた。隋唐の一般官吏や庶民、官僚の男子が普通に着用した服で、普段着である。現存する大量の唐代の絵から見れば、丸襟の袍衫は明らかに北方民族の影響を受け……”

日本の「盤領」の説明でも「イラン系の唐風衣服」とあります。
日本大百科全書(ニッポニカ)「盤領」の解説https://kotobank.jp/word/%E7%9B%A4%E9%A0%98-24863

さかのぼっていくと、中央アジアに辿り着くもののようです。
羽生結弦選手の和を提示した衣装が、源流はユーラシアの奥にあるというのが世界王者に相応しいものであったと言えるかもしれませんね。

私も中国の衣装については調べ始めたばかりです。コロナのワクチンを済ませ、第7波が落ち着いたら図書館にある大型図鑑を見に行く予定です。

拙作では、文官である佳卓の兄が今後の展開に関わってきます。
どうか最後までご愛読くださいますよう。

今回の写真は垂纓冠をつけた文官の貴族の写真です。

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