慎一が破った約束はレース以外で死ぬこと。
この事を書くのに念頭に置いていたのは、「ノリック」の事だった。
長髪を靡かせて颯爽と当時の日本のバイクレースの最高峰、GP500クラスにデビューした彼は、ワイルドカードとして出場した日本GPで世界の度肝を抜いた。
彼はその後の絶対王者、バレンティーノ・ロッシの憧れとなり、キャノピーにRossifumiとステッカーを貼るほどの大ファンになった。
ある日、彼は大型のスクーターを走らせていたが、転回禁止の場所で大型トラックが急に転回したのに巻き込まれ、非業の死を遂げてしまった。
阿部典史。
レースの中であろうが、なかろうが、若き天才が散るのはもう見たくない。