(残念な報告が1番上にあるのも嫌なので近況ノート更新します✨)
カクヨムコンの要項が発表されましたね〜。
今年は恋愛・溺愛部門に応募しようと思います……せっかくのお祭りなので乗っからなくては❗️
今年から中間選考が変わるとのこと。
なんでも、
「応募された作品の中から、読者選考期間中の評価を含む作品情報を多角的に判断し、カクヨム運営が中間選考通過作品をノミネートします。」
だそうですが……どうなるのでしょうか。今年もドキドキする季節が始まりますね。
書きかけているカクヨムコンに向けた新作長編の冒頭をせっかくなので公開しちゃおうと思います。いがみあう(?)ふたりが強引に結婚させられちゃうラブコメです。まだヒーローでできてないですが💦
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人混みの中、絹を裂くような女性の悲鳴が上がった。
どうやらひったくりのようだ。戸惑う人々をかき分けるようにして、盗品と思しき鞄を抱えた男が、此方に向かって走って来る――間の悪いことに。
「退け退け退けぇー! そこの女ぁっ」
男は進行方向のど真ん中に突っ立っている小娘に向かって怒鳴りつけた。
が、その声がちっとも聞こえないとばかりに小首をかしげ、小娘——レナリア・ミレルディは見つめ返す。舌打ちと共に、男は彼女を突き飛ばそうと腕を大きく振りかざした。
「あ」
邪魔な小娘の手には背丈ほどもある長い杖が握られていることに通り過ぎる手前で、男は気がついた。杖の先がとん、と地面を突いた。
「『拘束』」
閃光が走り、光の輪が男の胴体に絡みつく。悶絶しながら転がったひったくり犯を、レナリアは醒めた目で見下ろした。紡いだ呪文が発動するまでほんの数拍のことだった。男の腕はレナリアに届くことも叶わない。
「さすがは王国最古の魔女の家系と呼ばれるミレルディ家のご令嬢、鮮やかなお手並みですわ!」
興奮気味に侍女が讃えると、目撃していた周囲の見物人のあいだにも驚嘆する声が広がっていく。
「あれがミレルディ家のレナリア様か……」
「お噂どおり美しい魔術符を奏でられるお方だな」
「見てごらんよあの紅茶色の髪! 憧れちゃうわね」
「美人で有名なレナリア様、ああ一瞬でいいから目が合わないかな」
魔法ばかりではなく容姿についても賛美する者も少なくない。
「ミレルディで思い出したんだけどさ、カルデローナの倅の活躍も著しいよなぁ」
その単語を耳にした途端、満更ではない、というように頷きながら聞いていたレナリアの表情が強張った。
「カルデローナの、ジュリアスだっけ? 天才魔術師の呼び声高い」
「王立魔術学校を次席で卒業したあと、王太子付き筆頭魔術師になったんだって。すごいわよねぇ」
「演舞会での魔術披露、かっこよかったって娘が言ってたわ」
いつの間にか話題の中心はミレルディからカルデローナへと変わっていた。レナリアはため息をひとつこぼすと、ひらりとドレスの裾を翻した。その場を立ち去ろうとしたレナリアの後を侍女が慌てて追いかける。
「お、お待ちくださいレナリア様っ」
「……またカルデローナ」
ぼそりとつぶやいたレナリアの声は待ちの喧騒の中に紛れて消えた。
フローレンス王国にはふたつの魔術の名家がある。
ひとつはミレルディ家。
建国に力を貸した魔女ミレルディの血を受け継ぐ由緒正しい家系である。代々優秀な魔術師を輩出しているのだが、魔女の血筋ということで女性が優遇されていて、当主もレナリアの祖母である。
もうひとつがカルデローナ家。
近年、名声を集めている一門で、現当主を筆頭に宮廷魔術師の地位をほぼ独占している。実力至上主義らしく、しばしば魔力の高い孤児を養子として迎え入れて教育しているらしい。
両家はことあるごとに比較され、己の手柄を張り合い続け、次第にいがみ合うようになっていた。ほとんどの魔術師の子息が入学する王立魔術学校でも、ミレルディ家とカルデローナ家は入学当初から睨み合い、試験の成績を競い合っていた。
『レナリア、君は俺のことが嫌いか?』
ふと頭をよぎった声が、ちくり、とレナリアの胸を刺す。揺れる木立。湖を渡る風。ふわりと香る花。それらの記憶をびりびりに引き裂いて、何も考えないようにした。
とにかく私は。
ジュリアス・カルデローナに、絶対に負けるわけにはいかないのだ。ぶつぶつと研究中の魔術符の組み合わせを唱えながら、人々の合間を縫うようにして帰路に着いた。
「お帰りなさいませ、レナリアお嬢様」
「ただいま」
ローブと杖を出迎えてくれた執事に預けると「お疲れのところ誠に恐縮ですが」と、ひどく申し訳なさそうに言われた。
「御当主様がお呼びです」
「お祖母様が?」
何の用だろうか。首を傾げながらもレナリアは屋敷の最深部にある当主の居室へ向かった。長くて薄暗い廊下を抜けた先にある大きな鏡をくぐり抜ける。
重厚な樫の木の扉の前に立ち、ノックする。ぎい、と軋みながら扉が開き、入室を促してきた。レナリアが中に入ると、ばたん、と勢いよく背後で扉が閉まった。どうやらあまり機嫌が良くないようだ。
「お祖母様、私に何か?」
水晶玉を覗き込み渋面を作っている祖母キアラに声をかけると、鋭い視線が此方を射抜いた。
「我が孫娘、偉大なるミレルディの血を継ぐレナリアよ。お前に我が王より命が下った。儂と共に宮廷に参上せよ、とな」
「陛下から、ですか……用向きは?」
静かにキアラは首を横に振った。
「ただ、我が水晶玉には不運の象徴が映りこんでおる。あまりよくない話じゃろう。気は進まぬが、我が王には従わねばならぬ。すぐ支度するのじゃ」
「——承知いたしました」
急いで自室に戻り、レナリアは侍女と共に身支度をした。いままで着ていた外出着よりも洗練されていて、ミレルディの名に恥じないドレス……紺の地に銀糸に百合の花の刺繍が入ったものに袖を通した。紅茶色の髪は編んでまとめたものを銀の髪留めで整える。
鏡を見ると、神秘的な翠眼が不安そうにレナリアを見つめていた。
「レナリア様」
「ええ、わかっている。すぐ行くわ」
侍女に促され部屋を出ると、待っていたキアラと共に馬車に乗り込んだ。