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 今回おまけ話があります。
 よければどうぞ…!


「珊瑚のイヤリング」

~おまけ話①~

今から四年前。

「ヴィラ。これ」
「?」
「隊長就任、おめでとう」

微笑みながらエダンが渡してきたのは、珊瑚色の大振りのイヤリングだった。ヴィラはこれを見てきょとんとする。おめでとうということはお祝いの品として渡してくれたのだろうが、なぜこれなのか疑問だった。

「え、なんでこれ?」
「いつも髪が短いだろう。後ろ姿が男みたいで分かりづらいと上官達が言っていた。イヤリングなら女性だと分かる」
「ええ……? 別にいらないですよ……」

どうせ色々言ってくるおじさん達のことだろうなとヴィラは渋い顔になる。大体髪が短いくらいで男だなんだと、大きなお世話だ。髪が短いのは動きやすくするため。男に間違えられるならそれでもいい。魔法兵団に入団して、女性は不利であると感じることが多かった。イヤリングなんてつけてしまったら、一発で女だなんだと言われてしまう。

「いいから、つけてくれ」

ぐいぐいと押し付けられる。

エダンの押しの強さは天下一品だ。入隊当時から逃げ回っていたし、他の魔法兵は匙を投げることが多かったのに、エダンだけは決して諦めなかった。こちらが拒否しても一向に引かないので、結局隊長になることも承諾した。

一回くらいならつけてやるか、と、慣れない手つきでつけてみる。自分では見えないので、左右に首を揺らして落ちないことを確認してから「どうですか?」と聞いてみる。するとエダンは少しだけぼんやりしていた。

「エダン殿?」

するとはっとする。
相手の方が嬉しそうな顔になった。

「いいな。よく似合う」
「え、ほんとに? おかしくないですか?」
「おかしくない。女性らしい」
「別に女扱いとかしなくて大丈夫ですよ?」

入団してからも散々男扱いされてきた。イヤリングをつけただけで女性らしいと言われてもなんだかピンと来ない。するとエダンはあっさり言い放つ。

「ヴィラは女性だ」
「……そうですけど」
「だから似合う。紫の髪に珊瑚色は似合うと思っていた。よかった」
「……エダン殿がみんなから爽やかって言われる理由、なんか分かりました」
「え? 何の話だ?」
「いいえ別に。これ、ありがとうございます。これからつけますね」
「ああ。そうしてくれると俺も嬉しい」

本当に嬉しそうに笑ってくれる。
もらったのはこちら側だというのに。

それ以来ヴィラは毎日イヤリングをつけるようになった。



~おまけ話②~

「ヴィラ急にイヤリングとか付け始めたな」
「意外と似合うじゃん」

遠目でヴィラを見つめていた魔法兵たちがそう言う。

「そうだろう?」
「わっ」
「エ、エダン殿!?」

急に現れた魔法兵でも有名なエダンに、慌てて男達は敬礼する。綺麗に敬礼を返しながら、エダンはにこにこと笑った。

「俺が隊長就任祝いにあげたんだ」
「……え」
「エダン殿があげたんですか」

戸惑いの声を出すものの、エダンはそれに気付かない。

「女っ気がないなんて言われていたが、俺はそう思えなくてな。思った通り、よく似合っている」
「ああ、そうですね……」
「よかった、ですね……」

すると満足げに頷きながら、じゃあなと言いつつその場を去る。いきなりやってきてさっさとその場からいなくなったが、魔法兵たちは顔を見合わせた。

「男が女性にアクセサリーあげるのって……」
「そうだよなぁ……」
「でも多分エダン殿の場合は違うよなぁ……」
「だってヴィラだしなぁ……」

二人はそう言いながら苦笑する。
が、四年後。ヴィラを追いかけるエダンを見て、

「え、やっぱりそういうこと……?」
「え。あの頃からってこと……?」

と余計混乱した。





 さて、更新できました。

 今回はフィーベル&ヴィラ、アンネ&イズミ、そしておまけはヴィラとエダンの話です。なんかたくさん出てきましたね。

 お祭りの話はもうしばらく続くと思います。更新が最近早めなのは頭の中に話のストックがあるからです。ストックというか話の流れが頭の中でできているというか……プロットがあるというか? 私は頭の中で考えてから書くタイプだったりします。

 おまけ話も書きました。珊瑚のイヤリングの話はいつか書きたいと思っていたので書けて良かったです。なんだかんだで二人共、やっぱり意識はしていた関係だったのだと思います。

 それでは次回も楽しんでいただけると嬉しいです。

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