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https://kakuyomu.jp/my/works/16817330659308761329/episodes/16817330663276123177第71話 悪役令嬢断罪【周防目線】
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――――【沙織目線】
「あん、兄さん……そんならめぇれすぅぅ」
「若葉がシて欲しいって言ってなかったっけ? あんな枕見せられたら、我慢できるはずがないよ」
私は椅子に縛られ、姿見みたいな窓から先輩と若葉が乳繰りあってるところを見せつけられていた。
なんで!? なんでなのよ!!!
先輩は私だけを愛してくれるはずだったのに、人擬きの若葉をあんな愛おしそうに愛撫したり、キスしたりするなんて、あり得ない!
ふひゅー! ふひゅー!
たぶん、この姿見みたいな窓はマジックミラーみたいになっていて、私からは見えるけど、先輩と若葉からは私の姿はまったく見えなくなっているんだろう。
びちゃぁぁぁぁ……。
声を出そうにも、ボールギャグを咥えさせられ、ひゅー、ひゅーと息が漏れ、よだれをただ垂れ流すことしかできないでいた。
ああーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!
先輩が人擬きの若葉と結ばれてしまうのを見せつけられる、私のあそこが切なくなってしまうっ!
許さない、許さない、許さないんだからね、若葉ァァァァァーーーーーーッ!!!
――――周防家(八乙女家へ来るまえのこと)
やった! ついにクズ男どもを生け贄にして、私は先輩に気づいてもらうことができたのよ!
ひとつ誤算があったとすれば、人擬きたちを誰ひとりとして排除できなかったこと……。でも私が先輩に尽くせば、人擬きたちがどう足掻いたって、真っ当で前世から先輩と仲の良かった私が負けるはずないのよ。
ただ思うことは先輩は転生しても優しかったけど、相変わらず鈍感すぎる……。私は顔合わせで出逢った瞬間、0.0001秒で先輩だって気づいたのに。
でももうそんなこと、どうでもよくなっちゃった! だってこれからは私と先輩のラブラブいちゃいちゃの生活がはじまるんだから♡
周防グループと八乙女グループが合併すれば、それこそ『スクダイ』世界すら支配できちゃいそう。そうなれば、私と先輩はすべてを人任せにして、ずっとお互い見つめ合ったまま過ごせる。
いますぐにでも先輩との婚約復活を両親に願いでようとよだれを垂らしていたら、トントンと部屋のドアがノックされた。
もうなんなのよ、甘い生活を夢見てるときに!
「お嬢さま、旦那さまと奥さまがお呼びにございます」
「分かりました、いまから伺うと伝えて」
「かしこまりました」
ドアの向こうから、メイドが両親が私を呼んでいると教えてくれた。
これは、きっと、ぜったい先輩との婚約復活のお話なんだと思い、すぐにドアを開けて私は廊下に飛び出していた。
はしたないと思いつつも私を呼びにきたメイドを廊下で抜かして、パパとママの待つ書斎への扉のまえにいた。
襟元を正して、溜まった唾液を嚥下したのち、呼びかける。
「パパ、ママ。沙織にございます」
「入りや~」
関西弁で父が入室を許可した。その声を聞くとなんだか拍子抜けしてしまうが、待機していた召使いに目配せすると両開きの扉を開いたので入室した。
「沙織、どないしはったん? 標準語なんてつこて……かっこ、つけてはんの?」
「これは……ちょっと」
「紀美子、それよりもだ」
「あんたから言うてくれはるの? だったらお願いします」
「……仕方あらへん。沙織、今日を以て親子の縁を切らしてもらう」
「えっ!?」
私は自分の耳を疑った。
「いやいや、関西弁を止めたら勘当とか意味が分かりません!」
「そういうことやない。沙織がうちの経営する会社に与えたダメージが大き過ぎるんや……。一条くんの会社が乗っ取られてもうたやろ」
「あ、あれは偶々、運が悪かっただけで……」
「それだけやないで。運転手や使用人への虐待に、大事なお金を湯水のように無駄遣いするし、質の悪い子らとも付きおうとる」
「……」
「センセらも沙織が学校で好き放題してるって、なんども家庭訪問しにきはったんやで」
「私はちゃんと勉強もしてるし、成績も学年トップ10に入ってるから! スポーツだって色んな部活から入ってほしいって誘われてるの」
「成績は、な。問題は生活態度や。授業は聞かん、センセを見下す、クラスメートはいじめる……。そのなかでも八乙女はんとこのご子息のお友だちにちょっかいかけたのが、いちばんアカン! 八乙女はんがめちゃくちゃ怒ってはるんやわ」
私の罪状がパパから次々と明るみに晒されてしまう。なんで? どこからパパとママの耳に入ってしまったというの?
「でも、うちなら八乙女グループと対抗することくらいできるはず」
「アホな。うちらでもあないなとことまともにぶつかったら、会社どころか、家ものうなってまうわ」
ゲーム内じゃ、そこまでうちと八乙女グループの差はなかったはず……。まさか、先輩が八乙女グループを大きくしたって言うの!?
さすが先輩!!!
いや感心してる場合じゃない。
パパは組んだ手に顎を乗せて、疲れた様子で言う。
「それで向こうは提案してきたんや。沙織の勘当と一条くんの社長復帰と会社を周防グループに戻すことを、な。うちらはその提案を受け入れるつもりや」
「パパ……それ、本気で言ってるの!?」
「本気や。沙織は大事やけど、1万人の従業員を抱える周防グループと天秤にかけたら、引き下がるほかあらへんやろ……」
「沙織、それが身から出た錆いうもんおす」
そんな……そんな……。
ママに最後にひとこと、吐き捨てるように私に言い放たれると、ガクンと膝が落ちて、床にへたりこんでしまった私。両親は使用人たちに命じて、部屋から私を追い出す。
それから数時間もしないうちに私の身柄は八乙女家へ送られていた。
まるで犯罪者のように手首には手錠をかけられ、足には足枷をはめられてしまい、おんぼろのバンタイプの車に乗せられ、先輩のお屋敷に着く。
車内ですすり泣いてばかりだったけど、お屋敷の敷地に入った途端にうれしくなった。
これって、もしかしたらご褒美じゃない!
勘当されたって先輩に泣きついたら、優しい先輩はぜったいに私を捨て置かないはず。うふふ……、見てなさい、私は必ず先輩の寵愛を勝ち取って見せるんだから!
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