前のエピソード――――第30話 家族計画
https://kakuyomu.jp/works/16817330654769400140/episodes/16817330656066964478 私は寿先生とけいくんの関係を問い質さなければならないのだ!
「先生とけいくんに過去になにがあったのか、教えてください。それを話してくれるまで私は先生と話し合うつもりはありません」
生徒指導室まで赴いたのだけど、長机を隔て対面していた先生に先制攻撃をしかけた。
先生は椅子から立ち上がると後ろに手を組んで窓の外をしばらく眺めたあと、ふと振り返り私に訊ねてくる。
「伊集院、おまえは経世さまのどこまで知っている?」
経世さま?
先生が生徒であるはずのけいくんに“さま“なんて敬称をつけることに違和感を覚えたが、言う通り知っている範囲のことを答えた。
けいくんは私の旦那さまになることは確定してるんだけどね!
「けいくんは絵とテニスが上手くて、誉め上手。機転が利いて、護身術にも長けています。それに真っ赤なスポーツカーに乗った綺麗な女の人とデートしているところを見ました。鈴城くんは家族だった人としか教えてくれませんでしたけど」
「時雨さまが!?」
「時雨さま?」
けいくんはぼかしてしか私に教えてくれなかったけど、先生はそんな漠然とした情報でも誰なのか分かってしまうくらい、深い仲みたい。
妬けてしまう……。
「いやなんでもない。伊集院、このあと用事はないか? ここでは話せない込み入った内容を私の家でしたい」
「はい」
いくら先生とはいえ、恋敵。
また虎穴に入る思いだったけど、けいくんが私に教えてくれない以上、彼の過去のことは先生に訊く他なかった。
職員用駐車場まで先生のあとをついて行くと、いかにも商用といった感じの軽自動車の前で先生は足を止めた。
「ボロい車だが、乗ってくれ」
「倹約家なんですね」
「ああ、まだ奨学金の返済が残ってるからな」
乗り込んで、薄っぺらいドアを閉めたあと、私は
くんくんと車内の匂いを嗅いだ。
特段変な匂いはせず、嗅いでわかるのは先生の髪から漂うシャンプーの香りくらい。
けいくんは先生とえっちしてるって言っていたけど、この狭い車のなかでカーセックスとかしてるのかな?
私はどうしても気になって先生が運転中にも拘らず、訊ねていた。もしそんなことしていたら、大人ってズルいと思う。
「先生はけいくんとカーセックスしたりするんですか?」
「ぶふぉっ!?」
先生はいつもの冷静さというか、冷めた態度から一転驚いて、急ブレーキを踏んで車を停車させてしまっていた。幸い住宅街で後続車もおらず、事故にはならなかったが。
「お、おまえはなにを言ってるんだ。昨今のJKという奴はとんでもないことをさらっと言うな、まったく」
どうやら口ぶりからして、車内でそこまではしていないらしい。でも狭い車内だからこそ、倹約家の先生のことだ、ホテル代を節約し人気のない山に入って、二人の興奮が頂点に達したなら、いつ燃え上がってもおかしくない。
そんなの見たら私は怒りのあまりこの程度の軽自動車なら横から持ち上げて、ひっくり返せそうなくらい嫉妬の炎をエネルギーにして力が出ると思う。
先生のお家は古い賃貸マンションぽかった。
マンションから少し離れた駐車場に車を駐めたあと、二人で先生の部屋へ歩いてゆく。
「まあ、入れ」
「お邪魔します」
先生がヒールを脱いだあと、私もローファーを脱ぐと先生は私の飲みたい飲み物のリクエストを訊ねてくる。紅茶をお願いすると、先制攻撃は衝立で仕切られたキッチンでお湯を沸かし始め、先にくつろいでいるように言われた。
「なに、これ……!?」
部屋に入り私は額縁に入れられ壁に飾られた物に驚く。
それは先生のヌードデッサンで淫靡さよりも、聖女が一糸纏わぬ姿のようでただただ美しかった。
私が先生のヌードデッサンを眺めていると、お盆の上に飲み物を置いて持ってきたので振り返ると先生は私に語りかけてくる。
「伊集院、私はおまえが憎い。経世さまの気持ちが私から離れていっていくのが手に取るように分かるんだ。教師でなければ、心の奥底から沸き起こる嫉妬でただではおまえをここから帰さないだろう。だが同時にうれしい。誰も気づかなかった経世さまの魅力に気づいてくれて」
「先生……」
先生のまぶたいっぱいに溜まった滴。
私に対する嫉妬と同志のような気持ちがない交ぜになったような感情。
先生は間違いなく、けいくんを愛している。先生はけいくんの気持ちが離れていっていると言うけど、ヌードデッサンを見ればわかる。
けいくんも先生を愛していることが……。
繊細なタッチでどう描けば先生が美しく見えるのか、優しさにあふれているんだから。
私もけいくんにヌードを描いてほしい。
おっぱいを見られたときは恥ずかしくて、隠してしまったけど、けいくんはじっと見てくれたのがうれしかったから……。
さっきは気づかなかったけど、長いテレビ台の上にある写真を見ると学生の頃の先生と小さな男の子が手をつないで二人で写っている写真立てがあった。
「それか。高校生の頃の私と幼き日の経世さまだ」
こんな小さなときから、先生とけいくんの仲は深かったっていうの!?
「私は先生がうらやましくて、仕方ありません。二人は大きくなるまでずっといっしょに過ごされてきたんでしょ? 私には彼との過去の想い出がひとつしかありません」
「知りたいのか? 経世さまの過去を……」
「はい、知りたいです。先生がけいくんにさまという敬称をつける理由も!」
先生はじっと私の目を見て、私が本気なのかどうか試しているような感じだった。
「時雨さまのことまで知ってしまったなら、教えてやろう。伊集院にその覚悟があるならな」
「あります! 覚悟は」
「分かった」
「先生とけいくんはどういう関係なんでしょうか?」
「私と経世さまか……。経世さまからはなんと聞いている?」
「家庭教師だったと聞いています」
「そうか、なら当たらずも遠からずといったところだな」
「本当にそうなのでしょうか? 私は先生とけいくんはもっと深い仲のように感じます」
手をつないだ二人は年の離れた姉弟のようでヌードを見せられるくらいの仲なんだもん、当然えっちしててもおかしくないくらいの深い仲だったとしてもなんの疑いの余地はないよ。
「私はな、経世さまの夜の相手をするためにあてがわれた女なんだよ。体面が悪いから家庭教師と言っているがな」
「えっ!? じゃあ、本当に先生とけいくんは大人の関係にあるんですか?」
「大人の関係か……」
先生はコーヒーを啜りながら、どこか遠くを見つめていた。カップをローテーブルに置くと意を決したように先生は口を開いた。
「経世さまは私を拒んだために生家を追放されてしまったんだよ。女のひとりも抱けないとは情けない、という理由でな」
言い終わる間もなく、先生から涙がどんどんあふれてくる。それこそ大人って、そんなに大泣きするんだってくらいに。
けいくんに拒まれてつらかったのだろうか?
「先生! どういうことなのかわかりません。詳しく教えてください」
「経世さまが精通を迎えられたとき、私と同衾することになったのだが、経世さまは私のことを気づかい好きでもない男とセックスするなんておかしいと経世さまの父親に訴えられたんだ。その結果がただの高校生となった経世さまと、ただの教師となった私がある」
むしろ愛されていたからこそ、けいくんに拒まれたのか、本当に彼らしいというか、自分を犠牲にしてまでも先生を守り、信念を貫いたっぽいことにますます好きになってしまう。
「私は経世さまに抱いてほしかった。姉のように慕われるのではなく、女として見てほしかったんだ……」
先生のこと、恋敵だと思ってたのに卑怯だ。
私までもらい泣きしてしまいそうになる。本当は先生にけいくんに抱かれたとか嘘つこうって思ってたのに、そんなことできなくなってしまった。
先生は私以上に乙女だった。
「先生、これからは正々堂々悔いのないように戦いましょう」
「あ、ああ……経世さまが好きなったのが伊集院で、うっく……よかった」
「どちらを選ぶかは、けいくんです。なのでお菓子作り対決をしましょう!」
「よかろう。だが伊集院、勝負を見誤ったようだな。私はいまでこそ教師だが、経世さまに仕えていたときはこれでもメイド見習いだったからな」
「なっ!?」
で、でもただの見習いでしょ?
先生とけいくんの過去は同情するけど、けいくんを彼氏にするのは私なんだから!
――――一時間後。
「で、俺が呼ばれたと?」
「うん!」
「ああ」
私と先生はメイド服に着替え、互いに得意なお菓子作りに勤しんでいた。
時間もないので簡単なお菓子だけど。
私はクレープ、先生はパンケーキなんだけど、さすがメイド見習いと言うだけあって、スフレパンケーキのようにふわっふわにできあがっていて、ドヤ顔で見てきていた。
ま、負けないもん!
あっ!?
「けいくんの唇にクリームがついてるよ」
私は彼の唇周りについたクリームを人差し指で拭い、ちゅぱちゅぱとわざと音を立てながら舐めていた。
「い、伊集院!?」
顔を赤くして、間接キスのような舐めとりに驚いている。本当は舌で唇についたクリームを舐めたかったんだけどね。
「くっ! あざとい!」
私はしたり顔で先生を見ると、すごく悔しそうしていた。
「も、申し訳ありません、経世さま。昔のドジっ娘のくせでハチミツが……」
けいくんがナイフでパンケーキを切っているところに、先生はシロップピッチャーに並々と入ったハチミツを目測を誤ったふりをして、彼の手をハチミツまみれにしてしまった。
「お拭きいたしますね」
先生はあろうことか、けいくんの手を取り指のひとつひとつを舐め始めていた。
――――ちゅぱ、ちゅぱっ、ちゅるるるるっ。
けいくんの指をえっちな音を立てながら、美味しそうにしゃぶる先生はだんだんと表情が蕩けていって、ブラウスの襟のボタンを外し始めてしまう。
「さっ、桜ちゃんっ!?」
戸惑うけいくんだったけど、先生は舐めるのを止めないどころかエスカレートしていた。
――――じゅぽっ、じゅぽっ、じゅるるっ!
特に親指はもうハチミツは舐め取って、綺麗になっているはずなのに顎を前後にストロークさせて、まるでけいくんのものを舐めてご奉仕しているみたいだった。
「ごめんなさい、けいくん!」
私も負けじと生クリームの入った絞り袋を使い、けいくんの左手に塗りたくり、手を取る。
「い、伊集院!?」
なんだか太い親指についたクリームを舐めとるなんて、けいくんの愛のぷりぷりゼリーをお掃除するみたいでキュンと下半身が熱く火照り、湿ってくる。
私も負けじとけいくんの親指をぺろぺろと舐め始めていた。
――――ちゅぷ、ちゅぷっ……。
けいくんに夜のご奉仕するための練習にもってこいだと思った。
「けいしぇいしゃま、ろっちがきもひいいれすか? もひろん、わらひれすよね?」
「けいきゅん、わらひよね? ううん、しぇんしぇ、わらひたひでごほうひしままひょう!」
「そうらにゃ、けいしぇいしゃまにもっろごほうししゅるぞ、いりゅういん」
「ひゃい、しぇんしぇ」
まだまだ、先生との対決に勝負はつきそうになかったけど、けいくんが私たちに指をしゃぶられて、気持ちよさそうにズボンを大きく膨らませてくれているのがうれしかった。
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