第31話 家庭崩壊1【浜田目線】

――――産廃処分場。


 うう……。


 頭いてぇぇぇ……。吐き気もする。


 目を覚ますと辺りはすっかり暗くなって、工事用のライトに照らされてようやく見えるくらいだった。


 隣に江川たちが手足を拘束されながら地べたに直に寝かされているが、まだ目を覚ましていない。


 オレのまったく知らない場所で辺りはコンクリートの塊や壁材なんかが乱雑に積まれた山ばっかで、その向こうに山が見える。



 いったいなにがあったてんだ?



 ひとつひとつ思い出していくと――――。


 鈴城にしこたま殴られたあと、半グレのレジェンドを見たかと思ったら、なんか変な匂いを嗅がされここにいる。


 伊集院をいじめてた隣で寝てる阿久津たちと、過去の不細工さをネタに強請ゆすって、伊集院を輪姦しようとしてたはずが、鈴城に全員のされて拉致られたんだった。


 こっから戻ったら、ぜってー鈴城を再起不能になるまでボコボコにしてやんねえと気が収まらねえよ。


 そのあと、伊集院をラブホに連れこんで調教してやるっ!


 キュラキュラキュラキュラ……グァーーーッ、ザクッ、グァーーーッ♪


 な、なんだ?


 うるせえ音がするのでそちらを見るとでけえショベルカーが黒い煙をもうもうと上げて、シャベルがせわしなく土を掬い穴を掘っていた。


 すでに深さ二、三メートルくらいはあるだろうか。いやまさか、オレたちを穴に埋めるとかじゃないだろうな?


「社長、穴掘り終えました」

「そうかレオン、あとは頼んだ」


 レオン!?


 俺はその名前に聞き覚えがあった。


 まさか数年前だが確かニュースやワイドショーに取り上げられてた、酔っ払って祝総長に灰皿酒を飲まそうとした失礼な芸能人をフルボッコにしたヤバい奴なんじゃ……。


 祝総長は吸い終えたタバコの吸い殻を子分みたいな社員の持つ携帯灰皿に入れると俺たちの前から立ち去ってしまう。


 任されたレオンがスコップの歯を地面に引きずりながら、こっちにやってくる。がたいは江川以上にでかく殴り合いの喧嘩じゃ敵いそうにない。いやナイフでも身体に刺さりそうな気がしなかった。


 慌ててオレの隣でまだ寝ている江川の身体を揺さぶる。


「おいっ、江川! 起きろ!」

「うう……なんだよ、浜田じゃねえか、って頭いてぇぇ」

「痛がってる場合かよ。こっから逃げっぞ。ここにいたらオレら、絶対殺される」


「さすがにそれはな……ひっ!?」


 オレの言うことを疑う江川だったが、自分が縛られたままなことと、オレたち五人全員がすっぽり余裕で入れる目の前にある大穴を見て、愕然がくぜんとしていた。


 俺たちはなんとか立ち上がれたので、阿久津たちを差し置いてぴょんぴょんと飛び跳ねながら、半グレどもから逃走を図る。


「どこに行こうってんだ? おまえらはみたいな屑のために、ちゃんとごみ箱を作ってやったってのによぉ!」


 それを見つけたレオンたちが追いかけてきていたが、明らかにふざけている。


「はっはっはっ、逃げろ逃げろ! じゃねえとすぐに捕まっちまうぞ!」


 くそっ! ざけんじゃねえぞ、こら!


 走って追いかければ、すぐに追いつかれてしまうのに、歩いて俺たちからつかず離れずの距離を保って、オレたちをうさぎか、カモかわかねえけど、追い立てながら、半グレどもはあざ笑っていた。


「うわっ!?」


 江川が木の根っこかなにかに足を取られ、転んでしまう。


 よっしゃあぁぁーーー!


 江川を見殺しにすれば、俺は逃げれるかもしれない。


「江川! オレのために死んでくれ」

「なっ!? ダチじゃなかったのかよ!」

「オレが生きてりゃ、ダチの一人や二人また作れる」


 倒れたままの江川を捨て置いて、逃げ去るオレの後ろから江川の叫び声が響いていた。


「はまだぁぁぁーーーーーーーーーーーっ!!!」


 江川、おまえはつくづく運がなかったんだよ、はっはっはっ……あ?


「うわぁ、マジ最低野郎だな、こいつ。ダチ見捨てて、自分だけ逃げようとしてやんの」


 オレの行く手から突然現れた男たち。


「いや~、こいつのクズっぷりが最高だよな!」

「こいつとあの図体のデカい奴を一緒に檻んなかにいれてやりたいよなぁ、くっくっくっ」


 進路を変えようときょろきょろしてる間にもすでにオレは半グレの仲間どもに囲まれており、逃げ場がなかった。


「ちっ、ちくしょぉぉぉーーーっ!」


 オレはまんまとはめられ踊らされていたのだ。


 髪を掴まれ、引きずられながら産廃捨て場に連れ戻されると先に連れ戻されていた江川がオレをずっと睨んでくる。


 おまえだって逆の立場なら、オレを置いて逃げるに決まってるだろ!


 ドスンッ!


「いってぇぇーーーっ!」


 そんなことを思っているとケツを蹴られて穴に落とされてしまう。腕がくそ痛くて、もしかしたら骨折してしまったかもしれねえ。


 穴の上からレオンがオレと江川に向かって、なにか言ってきた。


「そっちのツーブロックのあんちゃんは土建屋の社長の息子か、それでそっちの図体がデカいのは中小企業の重役の息子ときたもんだ」


「なぜ、それを……」

「しらべりゃ、わかるだろ。ただ上級国民気取りだったかもしれねえが、今回ばっかは相手が悪すぎだな。おまえらが敵に回したのは、日本を動かしてる化け物だ」


 キュラキュラキュラキュラ……♪


 わざわざ穴にスロープを作っていたのか、ショベルカーがスロープを下りながら、オレたちが寝転がされた穴に入ってくる。


「おう! 歯型から身バレすっと面倒だ。じゃあユンボでこいつらの頭轢いてやれ」

「りょうか~い」


 なんだと!?


 こいつらマジで頭がいかれてやがる!


「と、その前にいつものデモンストレーションを見せてやれ」


 頭のネジが飛んでいるレオンは舎弟に命じてオレたちの目の前にスイカを置かせていた。


「おまえら、キャタピラに頭轢かれたら、軽く逝けるぜ。スイカ汁ブシャーーーーッてな!!!」


 スロープを下りきったところにぽつんと置かれたスイカはキャタピラに当たったかと思うとその歯に飲み込まれ、一瞬にして赤い実と汁をぶちまけてぐしゃぐしゃに潰れしまった。


「い、いやだ! 水星の魔女じゃねえんだよ。トマトみてえにぐちゃっと逝きたくねえよ……して、許してくれぇぇぇ!」


 オレは必死に高見の見物をしているレオンに訴えかけていたが、ショベルカーのキャタピラの音でかき消され、まったく奴には届いていない!


 死ぬっ! オレはこんなところで死にたかねえ!


 やだっ、助けてくれ!


 オレが悪かった!


 いやだぁ!


 冷たい鉄のキャタピラが顔の目の前に迫ったとき、気づくと目から涙が、股間からは小便が漏れだしてしまっていた。



――――はっ!?


 死を間際にして、再びオレが目を覚ましたときだった。


 生きてる?


 オレの身体は家の玄関の前に捨てられているようだった。


 オレはこのとき助かったことにほっとしたのだが、このとき殺されていた方が良かったと思うような目に遭うとは思いもよらない。


「ただいま。お袋! とにかく飯頼むわ」


 玄関を開け、リビングに入るとお袋が電話に出ており、そこから怒号が響いていた。


 ――――てめえの息子はクズだっ!


 ひとことだけ告げて電話は切れてしまうが、電話の着信音が止むことがなく、お袋が電話に出る度に怒号を浴びせられていた。


 オレは異変を感じて、電話のケーブルを引っこ抜く。


「どうしたってんだよ!」


 オレの帰宅に気づいたお袋がこちらを向くと目に隈ができてげっそりしていた。俺を見た途端にぶわっとお袋から涙があふれてくる。


 そうか数日間も行方不明になってたんだもんな、そりゃ高校生でも心配するか。


 バッシーーーーン!


 オレはお袋から頬に思いきり、平手打ちをもらう。


「なにすんだよ! オレが戻ってきてうれしくねえのかよ!」

「あんた、なにしてくれたのよ。ネットやニュースであんたのことばかりやってるの知らないの?」

「は?」


「あんたたちがスシオーでやらかした動画が拡散されて、大問題になってんのよ!」

「なんだって!?」


 お袋の言葉に慌てて、スマホでツイッターやらユーチューブで確認すると鍵垢で仲間内だけに見れるようにしていたネタの下に山葵を盛りに盛ってレーンに戻したり、しょう油瓶の蓋を開けてその中にマグロを突っ込んで漬けとかどれだけバカやれるか笑いながらやってる動画があがっている。


 オレも、江川も顔がばっちり映ってるやつがだ!


「あんたなんか産むんじゃなかった……ううっ」

「お、お袋ぉぉぉ……」


 お袋はキッとオレを睨んだあと、泣き崩れてしまっていた。


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命拾いしたかと思ったら、地獄の始まりはこれからだぜぇwww バカッター浜田が散るとこをみたい読者さまはフォロー、ご評価お願いいたします。


第30.5話 ご奉仕【梨衣目線】

梨衣と桜先生の対決かと思いきや、経世が二人からご奉仕されちゃうSSを書きました。


近況ノートへ置いておりましたが、性描写で運営からお叱りを受けないためにnoteへ移しました。

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