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犬の散歩75話あとがきについての補足

轟イネです。
今回は『犬の散歩でダンジョンへ』の75話後書きで述べたことについての補足です。

まず、前提として75話後書きを引用しておきましょう。


『作者からの補足です。
 他の方の作品の掲示板とこのお話の掲示板を混同している応援コメントが散見されているので、悲しみの補足説明を行います。

 掲示板回は「他者からの主要人物の見え方」「主役である理由の強調」「世界観の提示」「補足」「伏線」「語り手で語れぬ情報提示」「ご都合主義に錯覚されうる場面について批判させることによるノイズの消去」等々。
 他にもたくさんの役割があります。
 私は「掲示板描写」を創作における発見だとさえ評価しております。『箱男』が今の時代に書かれていれば情報量的にクオリティが何倍になっていてもおかしくないほどだと感じます。

 それはさておき。
 ですが同時、このお話の掲示板回には「このお話限定」の役割があります。

 それは「敵キャラ」としての役割です。

 ほとんど全員が理解してくださっているとは思います。
 ですが、コレを不理解でなくば現れないコメントがいくつかきております。
 カイトくんの過去を知ってもなお、掲示板をただの第三者や味方寄りだと見ている方がいらっしゃいます。情報を出すシステムだと見做している人がいらっしゃいます。
 
 掲示板は「敵キャラ」であり、それにカイトとシュマロがどう立ち向かうのかも現時点で描かれております。

 ゆえに「掲示板の人ら嫌い!」は感想でOKですしおっしゃってくださってウェルカムです(むしろそうなるように書いてある)が、「掲示板をゆるゆる和気藹々化しろ」は作者読者の関係としては触れすぎです。

 敵役が敵対していること自体についてを許さない(敵を許さないのとはまた別のお話ですよ)のは、作中キャラの自由意志を否定する、キャラクターが人生を送ることを否定する、お人形遊びの強要です。

 それが通るなら、主役キャラと敵対した敵キャラ全員がいきなり改心して自殺し続けるお話しか書けませんから。
 昔、似た設定で書きましたがジャンルはホラーです。
 ともかく、他の作者の掲示板と混同してしまい、戦っている最中の敵であるという視点が抜け落ちている方は見方を変えてみてくださいね。

 お話の構造を理解していない懸念があるのは一大事です。
 その上でこの構造が嫌いとかはしょうがないことです。カイトくんの過去的に対峙することは大抵の読者さんならお見通しだと思います。そして、徐々にカイトとシュマロが「強くなって勝っていく」こともまた構造のひとつですよね。

 このお話の主役が犬飼カイトとその相棒のシュマロである必要性もここに由来します。
 ……とはいえ、次章の掲示板回はとある理由によって緩めなのですが。
 詳しくは近況ノートにて記載予定です。』


 これです。
 誤読や他小説との混同はよくあることですが(勝手に他作品の冒険者ギルドと設定を混同されて、過保護してくれないと文句を言ってくるなど)、今回の件についての問題は別にあります。
 というか誤読や混同はまあ仕方がないです。本人のコンディションや能力にも左右される、止められるものではありませんから。

 私が問題視しているのは、例えば『犬の散歩でダンジョンへ』第39話への応援コメント。


 『続きが気になります!
掲示板の暴言がひどすぎるので、もう少しマイルドになると読む時も不快になりすぎなくて嬉しいです。』


 というコメントです。
 ハッキリ言ってこれはあり得ない。
 断ったのですが、それがどうにもお気に召さなかったようです。それは個人の自由なのですが、このコメント自体があり得ません。
 先ほども述べたように、敵キャラたる掲示板へ「敵が強いから弱くしろ」とおっしゃっているわけです。
 
 この方が悪いというよりも、こういう感じのコメントは他にもいくらかあります。もっとも率直だったので取り上げましたが、こういうコメント自体他のお話を含めて良くあることです。
 読み取れていなかったなら仕方がないことで、ドンマイです、で済むことではあります。

 問題は読み取れていた場合です。
 いえ仮に読み取れていなくても、掲示板の向こう側にいるキャラを想定するならば、やはり言うべきではないでしょう。

「ネット小説を読む人たちはメンタルが弱くて鬱展開や苦戦展開に耐えられない。主人公たちが俺つええで敵対者を薙ぎ払い続けるストレスレスな、オナサポありみたいな読書しかできない」なんて馬鹿にされる時がありますが、少なくとも私はそんなことはないと前提して書いております。

 もっと読者はすごいし、ちゃんとしているという前提で書いています。

 ですから「敵が強いのしんどい! 弱くしろ! 敵の頭悪くして、敵を弱くして、敵は常に徹底的に不利にして常に苦しませろ。出番は徹底的に消して、現れる敵は全部ポッと出のやられ役だけにしろ」なんて願望は思うのはしょうがないとして(恥ずかしいので)書かないでほしいラインです。
 なぜか。
 それは理由としては「敵も生きている」からです。
 敵も生きているから必死で自分なりに考えて生きていて(ときに見当違いに走ったりはしますが、それでも己が感情や利益を追求して)動いています。
 それを「俺が気持ち良くないから、敵役から自由意志を剥奪しろ」は作中キャラへの人権侵害も極まっております。
 追放モノで「主人公を使えないから・好きじゃないから」と追放した挙句、アイテムとか奪っていく悪役並に非道な言動です。

 いやもっとかもですね。

 もちろん、「好き嫌い」は良いです。
 掲示板の奴らうぜえ嫌いだわ、は想定した通りの感想です。言葉を厳選せねば品は失せてしまいますし、掲示板の人たちと同レベじゃん……となることはありますが、それ含めての掲示板回だと考えております。

 展開自体が嫌い、受け付けない、耐えられないもよろしいでしょう。
 けれど、それで「敵を俺の都合でナーフしろ」は……ちょっと甘やかしを期待しすぎです。そのような要望を受け入れてしまえば、私は今後、敵キャラを一切描けなくなります。
 たとえば不快なキャラじゃなかったとしても、「主人公がつまずくなんて気持ちくない。敵をいなくして」と言われても受け入れねばなりません。
 それってあまりにも「敵役」を軽視していませんか。
 言ってること極悪すぎませんか。

 読書にインスタントな気持ちよさを求める、刺激過多の現代なのでしょうがないことでもあると理解はしますが……

 これがたとえば編集と作者ならばまだ理解はできます。
 市場範囲を広げようと動くことが仕事ですしね。
 男性キャラを美少女にしたり、タイトルをアウトラインにしてみたり、ウケやすくなると思われることをやることも業務でしょう。
 私も昔、とあるキャラの二人称を「貴様」から「お前」にしろと命じられ、「キャラ性が損なわれるだけで面白さは減るし、結局大してマイルドにもなんねえしなんだよその指示」と思いながらも従ったりはしました。

 しかしながら、やはり作者読者の関係では馴れ合いすぎです。

 ともかく「主人公以外のキャラが思考して動く」ことが認められない、というスタンスについて私は反抗的であり、コレを少なくとも読者からの要望で覆すことは、掲示板の住人というキャラを私や読者の都合で人格改変することになるのでやらない、ということです。
 そしてそのような要望を無意識で本気でしているなら「マジですか……」と肩を落としながら、そんなことは少なくとも他所ではしないほうが良いですよ、と作者としては言わねばならないよなというお話でした。

 これは言っておかねば問題ですしね。
 とはいえ、こういう文章を書くと心がすり減るので、あとで嫌になって消したりすることもあるかもしれません。
 それではごきげんよう。

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