『ベジタブル&フルーツ ソレイユマート青果部門』をご覧いただき、ありがとうございます。
この小説、じつは別のタイトルで他コンテストの最終選考に残った作品だったりします。すでにラストまで予約投稿済み。ぜったいエタりませんので、最後までお付き合いいただければ幸いです。
すでに一度読んでくださった方も、いっぱい加筆しているので、またお楽しみいただけたらうれしいです。
さて。この話を書こうと思ったきっかけなどを……。
創作物において、スーパーやコンビニの店員は「夢があるのにそれがかなわず、糊口をしのぐためしかたなくやっている仕事」として描かれがちじゃないですか。
そういう「誰にでもできる仕事」扱いが、以前から気になっていたんですよね。「そうはいっても、誰にでもできる仕事ではなくない?」と。
最初期の瓜生菜々子のように、上司に言われたことを漫然とこなすだけなら、たしかに「誰にでもできる仕事」かもしれません。
が、真面目に売上を取ろうと思えば、スーパーやコンビニの仕事って、しっかりした作戦が必要なんですよね。売上だけでなく、利益もきちんと確保しようとすると、ますます難しい。
二章第一話で書いたように、青果部門は季節によって入荷する商品も変われば、その日の気温や天気で売れ筋も売れる数量も変化します。チャンスロス(欠品などで売るチャンスを逃すこと)や廃棄ロスを出さないよう、最適な品目や数量を読むのはとても難しい……。うん、誰にでもできる仕事ではないと思います。
青果は、ひとびとの生活に直結する仕事でありながら、世界情勢ともダイレクトにつながっています。例えば、2023年は、青果物の中国への輸出がストップした影響で、シャインマスカットが例年より安く市場に出回りました(豊作だったという理由もありますが)
ちゃんと世界情勢にアンテナを張っていなければ、ほかのスーパーとの価格競争に負けてしまうわけです。ぼーっとしていたら勤まらない仕事なんですよね。
野菜や果物は、よく「ほっこりアイテム」「癒やしのアイテム」として描かれますが、この小説では「ほっこり」だけでなく、意識して「商材」としての青果物を書くようにしています。
季節の移り変わりとともに、たくさんの野菜や果物が出てくる予定です。なかには、唐島主任の趣味(?)で、マニアックな青果物も。
各章のサブタイトルには、その章で象徴的または暗喩的な青果物の名前を選んでいるので、そちらもお楽しみいただければ。
唐島主任と瓜生菜々子は、ビジネスとして青果物をどう売っていくのか――。今後もお付き合いいただければ幸いです。