バダディルマはやってきた彼女たちを眺める。
「んりわほ。凄い生命力ばっかりだね」
「どういうことです?」
ドラコナが訊く。
バダディルマは笑顔で言った。
「じずぎが。強いってこと」
「強い……それは感じます」
「そりゃそうであろう」
ハイヤーンがぼそっと言う。
それもそのはずだ。
彼女たちは強い。文句無く強い。
全てが真っ白い姿のシロ。
シロ=ホワイト=ヴァイス=ブランシュ=アルブム=セフィド。
『不死の白薔薇姫』と呼ばれる第Ⅰ級探索者にして光の死の王である。
次にアネモスは緑のショートカットで翡翠色の瞳のエルフ。
華奢で可憐な彼女じゃなかった彼は、こう見えて新しい風の死の王だ。
それから『一刀両断斎』と呼ばれるカエデ=アキマは第Ⅰ級探索者。
白い布でひとつにまとめた真っ黒い髪。
その瞳はピッタリと赤い線の入った白い布で覆われていた。
長く尖った耳。凛々しくも切れ味が鋭い麗しい美貌でエルフだ。
山徒民族の証である白い袴に薄い鎧姿を身に纏い、黒い大笠を背中に背負う。
腰には二本差し。
そしてディメロ=サイレンス。
『無口の音楽家』で第Ⅰ級探索者。
白い花のベレー帽を被り、薄い黒髪で前髪の両端だけ金色に染められて光っている。
前髪が長く瞳が完全に隠れていていわゆるメカクレだ。
身長は平均的で身体は枯れ枝のように細い。
ヒラヒラしているがあまり華美ではない黒いドレスを身に纏っている。
スカートは赤くて3枚の花びらのように広がっていた。
そしてピンッとまっすぐ立った白い兎耳。
色違いの彼女に似た人形がちょこんと膝の上に座っている。
パプリカという。
なんとアネモス以外は全員第Ⅰ級。
アネモスも風の死の王である。
見た目もそうだがトンデモない4人組だった。
ヒソヒソと近くのテーブル席の探索者の男たちが話す。
「なぁ、この街。めちゃくちゃ美人多いけど第Ⅰ級も多くないか?」
「普通は有り得ねえぞ。まぁ美人揃いだから眼福だけどよぉ」
「全て夜王ってヤツのせいだ」
「またアイツかよ」
「何者なんだアイツ」
「ハーレム王だ」
「チッ、あんな美女や美少女を侍らかせて」
「あのアネモスちゃんもだろ。許せねえっ!」
「見つけたらボコボコにしてやろうか」
「こうなったら俺達で見つ」
「―――おい。馬鹿。てめえら。あまり滅多なことを言うな。いいか。この街の探索者の暗黙のルールだ。夜王を探るな。夜王を探すな。夜王を調べるな。夜王を知ろうとするな。夜王を見るな……―――死ぬぞ」
ゾクッと得体の知れない寒気が彼等の背筋を凍らせた。
しばらく沈黙が続いて、誰かがエールを手にする。
「……ま、まぁ、キレイどころがこうやって見れるのはいいもんだ」
「第Ⅰ級もこうやって間近で見られるのは得だからなっ」
「アネモスちゃんの笑顔もこうやって拝見できる。いいもんだ」
「そうだな」
それぞれ、ぬるいエールを飲み干した。
それを眺めていたハイヤーンはボソッと囁く。
「ウォフ。あいつ何になってんだ?」
「んらぱぴ。なんか妙な気配が漂い始めているね」
「なんです?」
「るるぽん。曖昧な不確定と不安定が少しずつカタチをとろうとしている? 虚数が実数に相転移しようとして実体化する途中みたいな……」
「ど、どういうことでしょう。ハイヤーンさん」
「我も分からん。まったく相変わらず何を言っているのか。大体その言いようだと幻想が実体を伴う最中みたいじゃないか」
「くっこぴ。正解」
「分かるじゃないですか」
「待てよ。それって」
ハイヤーンはちょっと思い当たった。
前にケルベロスターンという新進気鋭の探索者パーティーが戦ったという。
噂が実体化して現れるという魔物。ヘルフトゥ。