最近のダンジョンで最も大きな変化は彼女たちだろう。
ダンジョンガールズ。
彼女たちは人間ではない。ダンジョンのコアだ。
ダンジョンのコアもといダンジョンの意思が人化したのがダンジョンガールズである。
ちなみにダンジョンボーイはいない。
ダンジョンは生物的性別では女だからだ。
ダンジョンガールズは、ダンジョンのある街ではアイドルのように活躍している。
あるいは探索者をしている。
また宿屋。あるいはパン屋さん。ケーキ屋さん。花屋さん。お嫁さん。様々だ。
さてハイドランジアのダンジョンガールズたちは探索者をしている。
ハイドランジアは大陸的にも珍しく5つのダンジョンがある。
だからダンジョンガールズも5人だ。
ファイブシスターズというパーティーを組んでいる。
新進気鋭の第Ⅴ級探索者だ。
「下賤な魔物の気配がすると思ったら、これでしたか……」
路地裏でそれを見てランジアは溜息をついた。
艶やかに流れる長い薄桃色の髪。
濃い桃色の瞳。美麗に整い過ぎた顔立ちの美女だ。
立派な銀の鎧を着込んで背中に大剣『紫陽花』を背負っている。
「ウエは、この上なく嫌です」
『紫陽花』を引き抜く。その魔物はゆらゆらと揺れていた。
ランジアはハイドランジアのダンジョンの意思である。
当然だがダンジョンの意思の知識として魔物は熟知していた。
だからこの魔物が何なのかお見通しだ。
噂が集まって出来るアンデッドの幻想系の魔物。ヘルフトゥ。
ランジアは大きく大剣を振り上げて降ろした。
噂の魔物ヘルフトゥは切断されると煙のように揺れて消えた。
『紫陽花』は単なる大剣ではない。オーパーツである。
ランジアは怪訝に眉根を寄せた。
「手ごたえが無いですね」
そう『紫陽花』を背に仕舞った。
いよいよ。栄養ドリンクの発売が1週間を切った。
そんなときハイヤーン商会に激震がはしる。
アキンドゥラ会長はハイヤーンを本社に呼んだ。
ハイヤーン商会本社。
最上階。会長室。
「残念ですが王都の販売が延期になりました」
スーツ姿の凛々しい美女。アキンドゥラは苦い顔を浮かべた。
「何故に?」
見た目は単なるウサギのハイヤーンは小首をかしげる。
栄養ドリンクの販売戦略は最大規模だ。
ハイドランジアと王都の同時発売。その後で各地方発売の予定だった。
うまくいけば海外も視野に入れている。
「詳しい情報は分かりません。ただ王都に何か起きたようです」
「王都といえばウォフたちが行っているぞ」
「…………」
「…………」
ふたりは黙る。
「あいつら。王都で何をやっているんだ?」
「わかりません。王都支部からの返信が来るのは明後日です」
「それによって発売日をどうするか考えるのか」
「そうなります……場合によってはハイドランジアだけの発売に踏み切ります」
「ああ、それでいいと思う。栄養ドリンクは今も生産している」
「それは続けてください」
「わかっている」
既に総生産500万は超えていた。
「よろしくおねがいします。それでは本題に入りましょう」
「本題?」
「はい。ハイヤーン商会の名で夜な夜な歓楽街を派手に遊び回って経費で落とそうとしている件についてです」
ニッコリのアキンドゥラ。ハイヤーンは逃げ出した。まさに脱兎だ。
だが会長秘書のアンスタンシルーの縄からは逃げられない。
あっという間に吊るされた。