シードル亭。
それはハイドランジアの人気料理屋である。
主に探索者が利用していて、いつ来ても賑わっている。
「反省会を始めますわ」
駆け付け一杯みたいなカタチでリンゴジュースを大ジョッキにで飲み干してから、ルピナスは真剣な顔で言った。
女性だけの新進気鋭の第Ⅲ級探索者チーム『トルクエタム』のリーダーだ。
金髪金眼のエルフ美女で気品がある。
「反省とはのう」
あまり気乗りしない感じでパキラがため息をつく。
注文したレモネードには手を付けず、頼んだブラッドソーセージを持ちだ。
「そうですわ。わたくしたちは反省しなければいけませんの」
「ん……反省……してまーす……」
無表情でやる気なく棒読み口調でリヴが言った。
そのコップの中身はミックスジュースだ。
もっともシードル亭にミックスジュースという品は無い。
五種類の果実ジュースを勝手に混ぜたリヴ特製だ。
なお味は保証しない。
「今回、わたくしたちはダンジョンの異変討伐に置いて、大いに反省しなければいけないことがありますわ。そうでしょう?」
「それはそうじゃのう」
パキラは頷く。だがその長短の二又の尻尾はそわそわしていた。
ブラッドソーセージが来るのまだかな?というそわそわである。
「ですから今日は反省会ですわ」
そう言ってルピナスはまた大ジョッキでリンゴジュースを頼む。
一瞬だけパキラはひょっとしてシードルでも頼んでいるのではと疑った。
彼女たちは成人しているがお酒を飲める年齢はまた違う。
だがシードルではなくリンゴジュースだ。
このシードル亭の名物はシードルだが、そのシードルを頼む者は滅多にいない。
「ん……具体的に……どのような」
「そうですわね。まず、わたくしたち。ウォフさんに助けられてばかりですわ」
「それは確かにのう」
「相手は13歳でしかも雇い仔ですのよ。つまり探索者ではない」
「確かにのう」
「……でも強い……」
「そうじゃのう」
「バキラ。あなた。さっきからうわの空ですわね」
「そうじゃのう」
そわそわ。そわそわ。
「ん……尻尾が……そわそわ……してる」
「そ、そうかのう」
「お待たせしました。ブラッドソーセージ盛り合わせです」
パキラの前に赤黒いソーセージと白いソーセージ。合わせて7本が置かれる。
赤黒いソーセージが4本。白いソーセージが3本だ。
パキラの猫の目がキラリと光る。その様子にルピナスは苦笑した。
待ってましたとパキラはブラッドソーセージをフォークで刺して齧る。
リヴはミックスジュースを口にして、パキラを見る。
「ん……反省会……終わりいぬ……」
「仕方ないですわね」
パキラは満面の笑顔を浮かべていた。