正直、10年経った今でもあの時、あの場所で起こった事に対して実感が湧かない。
あの時自分は学校の帰り道の途中だった。当時は少し揺れたなぐらいにしか感じなかった。
母が血相を変えて職場から帰ってきた。そしてすぐにテレビをつけた。
買い換えたばかりの大きなモニターは津波が街を飲み込む光景をありありと映し出した。
まるで違う世界を見ているようだった。現実ではないようなそんな映像だった。
原発の屋根が吹き飛んで大きなキノコ雲がそこから生えてきた。
あの時から10年経った。私は大学生となって芸術を学んでいる。
今の私にできることはなんだろうか。
口先だけで「忘れない」などと言えばいいのか。
一回もその現実をこの目で見ていないのに。
自分のような立場の人たちは一体どうしているのだろう。
私は毎年のように「どうか安らかに」と祈ることしかできない。