『夕日とエルナ』
「夕日がきれいだね」
エルナはそう言ったけど、俺はエルナの後ろ姿が綺麗だなって思った。
俺とエルナしかいない海辺の景色は本当にロマンチックで、まるで恋人たちが愛を囁く場所みたいだったのだけど、あいにく俺たちは兄妹であって恋人ではないという点が異なっていた。
しかし俺はエルナをただの妹だとは思っていない。もし、エルナがいいと言ってくれるなら、疑似的な恋人にしたい。たった二人の兄妹なのだからと。
「エルナ……」
「なに、お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないわ」
こうしてセーラー服の後ろ姿を眺められるのもの後、何回だろうか。青春はあっという間に過ぎていくというのに、俺の決心は鈍るばかりだ。
◇◇◇◇
『夕日とお兄ちゃん』
「夕日が綺麗だね」
私はぽつりとそう言いました。後ろではお兄ちゃんも夕日を眺めていました。
しかしお兄ちゃんが本当に眺めているものが私の後ろ姿だということはなんとなく前から察していました。お兄ちゃんは自分では隠しているつもりのようだのですけど、私のことが好きなのだと思います。
「エルナ……」
「なに、お兄ちゃん?」
「いや、なんでもないわ」
妹アピールができるセーラー服を着られるのもあと何か月でしょうか。私もお兄ちゃんの愛に応えたいです。でも、もしかしたらという不安が私に勇気を出すのを邪魔してしまいます。
夕日に愛を誓って、後ろにいるお兄ちゃんの視線を背中で目一杯感じて、せめてもの幸せをかみしめることにします。