七つの劇場。七人の主人公の激情。
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『月にでも行こうや』
家でも学校でも居場所を見つけられない、中学生の澪。
彼女の向かいの家には、引きこもりの叔父、亨おじさんがいた。
彼のガレージには、タイヤのない軽自動車がある。おじさん曰くそれは「逃避衝動エネルギーで月まで飛べる宇宙船、アポロ軽11号」だというが……。
『火種』
売れない芸人、田口しんぺいは、所属事務所から契約を切られそうになっていた。
「どんな汚れ役でも、なんでもやる」――そう誓った彼に与えられた職務は、「身代わり炎上芸人」。
政治家や大企業のスキャンダルが起こったとき、国民の目を逸らすために、仕組まれた炎上を請け負う仕事だった。
『水底へ沈む』
何者かに監視・管理される労働者、カイ。彼は毎日同じ現場で、水中を散策する業務をおこなっていた。
カイの後輩のユーリは、この現場の外から来たという。現場の外にも世界が広がっていることに気づいたカイは、世界の果てを知るために、足掻く。
『木陰の君と灯る森』
親の離婚で田舎に引っ越してきた蒼真は、閉鎖的な集落の社会に馴染めずにいた。
そんな彼が、友達を作るために参加した肝試し。ひとりはぐれてしまった蒼真は、森の中で優しい女性と出会った。
『金のためにも死んでくれ』
平凡なサラリーマンの佐藤は、その平凡さを買われ、平凡な人間を再現するAIの学習モデルに抜擢された。
スマートウォッチに監視用アプリ「モニタロイド」をインストールして、被監視生活を送る佐藤。しかし、そんな彼の命を狙う刺客が続々と現れて……?
『土づくりフィールド・オペレイション-農業高校と地底人の攻防-』
とある農業高校の造園生産科では、作物栽培実習がおこなわれている。土壌オタクの北堀、ギャルの西川、真面目な東野の班の熱意が詰まった畑に、地底人ドグーさんが現れた。
ドグーさんは、北堀班の土のコンディションのせいで、地底での生活に不便が生じているとクレームをつけてきて……。
『日借の翼』
高校生ダンスコンテストで全国優勝した翼は、将来を約束されたダンサーになるはずだった。
しかし父親が起こした事件をきっかけに、表舞台への道を閉ざされてしまう。
そんな彼が出会ったのは、舞台照明を操る演出家。
彼の手腕なら、光と影を利用して、翼の正体を隠せるという。翼は再び輝く舞台へと飛び立つが……。
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