いつも仲良くしてくださり、ありがとうございます。
昨日アップいたしました、
闇の太子Ⅱ 第二幕 第四場 アトリエ・杉板の画板前にて
https://kakuyomu.jp/works/822139836863369727/episodes/822139843784790894
参考文献含めた小さな解説をさせていただきます。
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■鍛冶工・ヴェーヴァルトの名の由来について
こちらは、リヒャルト・ヴァーグナー楽劇『ニーベルングの指輪 第二幕ヴァルキューレ第一場』にて、たった一言だけ歌われた名前です。
英雄ジークフリートの父・ジークムントが、双子の妹にして妻となるジークリンデと巡り合う場面。
居間で名前を聞かれたとき、ジークムントがこう答えます。
『“Friedmund darf ich nicht heissen,
Frohwalt möcht ich wohl sein,
Doch “Wehwalt” muss ich mich nennen.”
フリートムント(平和を守る者)と名乗ることは許されません。
フローヴァルト(喜びを担う者)と名乗りたいのだが、
しかし私は、ヴェーヴァルト(苦しみを担う者)と名乗らねばなりません。』
話中では、捕虜として捕らえられ、死ぬまで開放されることのなかった彼の生きざま(苦しみ)を、この名前にて再現いたしました。
第二幕は全体的に少し、中華風の名前の人物たちが登場しましたが、
ここでまるで円環のように、ニーベルングの指輪のエッセンスが戻ってまいりました。
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■ヴェーヴァルトと弟子14名の悲しい死に様について
こちらは、ダンテ・アリギエーリ『神曲』地獄編 最下層の氷地獄コキュートス第二圏にて語られる、13世紀イタリアに実際に起きた有名な悲劇を参考としました。
フィレンツェの伯爵ウゴリーノが司教ルジェリの計略に騙され、裏切り者の名前を着せられ、息子たち共々生きたまま塔に閉じ込められ、根絶やしとさせられた事件が描かれています。
死してもなお、ウゴリーノはルジェリを憎み、氷地獄でルジェリの頭にかみついている、そんな場面が神曲には描かれています。
画家のウィリアム・ブレイクも『獄房の中のウゴリーノと息子たち』という題名で絵画を残しています。
ヴェーヴァルトと弟子たちは、許しがたい敵国、そして愚かな祖国、双方に対して失意の底に沈んだまま亡くなります。
この悲しみを無駄にしないため、闇の太子Ⅱ・第三幕は場面区切りを作らず、通しで一幕を書き切る予定です。
どうぞ皆さま、よい週末をお過ごしくださいませ。