新作第六話

第六話 魔王、戦闘機を目撃する。

「今日は、お家を綺麗にしたいと思います」
「フゴゴゴ」
「コッフコッフ」
「まずは、この洞窟の床を土から木材に変えたいと思います」
「フゴフゴフゴゴ」
「コッフッフ」
「だけど私の魔力は少ないので、節約の為に以前切った木の所まで行きたいと思います」
「フゴ」
「コッフ」

 会話、成り立ってないよね。
 二匹とも鼻をひくひくさせて地面にいる虫さん食べてるし。
 独り言を続けるのもむなしくなるから、もう何も言わずに作業に徹しよう。
 
 幸いサカナー族とお水でお腹は膨れたし、睡眠もとったから魔力も回復してる。
 出力調整すれば、ある程度は使い続けられるはず。
 まずは木を運ばないとだけど、それは二匹の力を借りようかな。

「コッフ?」
「ごめんねコッフちゃん、ちょっとだけ繋げるね」

 魔力束縛の応用、倒木を運べる程度の大きさにカットして、コッフちゃんの首とつなげる。
 フーちゃんには太い幹を繋げて、私も持てるだけは持ってと。

 肉体労働は中々骨が折れるけど、やるしかないし。
 そうしないとまた痒くなっちゃうかもだしね、寒いのも痛いのも痒いのも嫌だし。

「よしっと、もう何回か往復しないとだね」
「コッフコッフ」
「フゴゴッフ」

 結局四往復くらいかかっちゃったけど、なんとか木材運搬完了。
 お腹減ったし、喉も渇いたからご飯にして、ちょっと休憩したら床作成に入ろう。

 とはいっても、ドワイフ族の知識が私にある訳じゃないし。
 適当に床を並べるしか出来ないんだけど。
 
 せめてと魔力束縛を使って、床と木材が動かない様に固定する。
 永続魔法型にして放射すれば、多分数千年は固定されるはずだ。
 そんな作業を洞窟でしていると、新しい発見があった。

「……あれ? 天井に何かいる?」

 昨日は気付かなかったけど、天井に何匹か掴まってる生き物がいるじゃない。
 よく見たらバットノイズ族みたいな風貌してるし、もしかしたら会話が出来るかも?
 
『こんにちは、私の言葉理解できる?』
「…………キ?」
『貴方、バットノイズ族でしょ? 変身は出来ないの?』
「……キキ?」 

 やっぱりダメか、会話出来ないや。
 あ、しかも逃げようとしてる。
 ダメ、今は一匹でも仲間欲しいから。
 魔力、注入!

「キキー!!! キキヨエエエエェ!!!!」
「ご、ごめんね! そんなに沢山は注入してないよ⁉ だって、貴方小型だから!」

 ぴくぴくして、泡噴いちゃってる。
 ダメなのかな、あまりにも小さいと私の魔力に耐えられないのかも。
 


 キキ、ここに眠る……っと。
 可哀想なことしちゃったな、人族の領地じゃ、小型はペットに出来ないみたい。
 せめて埋葬だけはさせてね、ごめんなさい。

 さってと、続きしようかな。
 床は出来たから、次は壁を作らないと。

 やらなきゃいけない事が沢山あるね。
 ……ん? でも、何か、私の耳が何かを感知してる。

 音? 轟音? なんの音だろう、空から?
 空って言ったらドラグル族だけど、まさか。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアァァ!」

 いた、うそ、ここ人族の領地だよ⁉ ドラグル族いるの!? 
 でも、物凄い高速で飛んで行っちゃった!
 あんな速度で飛べるドラグル族なんて見た事ない!
 ドラグル族なら基本知能高いから、絶対に会話出来るはず!
 仲間にしたい、なんとかして私のペットに!

 キィ……ィィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!

 ひっ、うるさい、なにこの音!
 風が荒ぶってて、音が引き裂かれてる!
 何が来てるの……確認しないと!

「魔力全部使っちゃうけど、空中浮遊発動!」
 
 大地から足を浮かせて、大樹の天辺へと一気に飛び移る。
 大樹の天辺から見た爆音の正体、それは、私の全然知らない〝何か〟だった。

「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアァァァ!」

 超スピードで飛ぶドラグル族を、それは信じられない速度で追い詰める。
 そして、見た事もない魔法が私の目の前で展開されたんだ。

 一本の鉄の塊が煙と共に超スピードでドラグル族へと飛んでいき、一瞬で爆散させる。
 嘘でしょ、あのドラグル族だよ? どんな魔法も剣も通用しない鋼鉄の皮膚だよ?

 お腹に大穴を開けたドラグル族が錐もみ状になりながら墜落するのを、私は恐怖と共にただ眺める。
 そしてしっかとその目に収めるんだ、鉄の匂いと火薬の匂い、とても大きなそれを乗りこなす、人族の姿を。



――
新作、ここまでが第一章になります。
ツイッターでの告知をせず、近況報告まで読みに来てくれるそこの貴方。

貴方は多分、僕のファンです。
なので、忌憚ない意見を伺えたらと思います。

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