新作第一話

『タイトル』ぽんこつ魔王とか言うな! ~ペットを集めてただけで魔王と呼ばれ殺された私。異世界転生した様子なので、またイチからペット(魔物)を集めます。また魔王にならないのかって? そんな怖いの、もうこりごりです~



第一話 魔王、現実世界に転生する。

「お前が魔王アズモンデオか! 異世界転生者としての使命、ここで果たさせてもらう! 正義の一撃を喰らえええええええぇぇ!」

 意味が分からなかった。
 私の役目はペットを育成すること。

 ドラグーン族とか、ギガンテス族とか。
 フェアリー族やエレメンタル族とか。
 
 繁殖させて賑やかにしていくことが、私の唯一の楽しみだったんだ。
 だから増やしに増やしまくった、数えきれない程に。

 一匹一匹に名前を付けたりもして、とても可愛がってたんだ。
 放牧もしてた、だって、狭い場所にいたら可哀想だから。

 たまに帰ってこない子もいたけど、きっとそれがその子の運命だと思ってたんだ。
 特にドラグーン族は大きくなると巣立ちしてしまうから。

 巣立ちして新たな生命を育んでくれたら、育ての親としてはこれ以上の喜びはない。
 辺り一面炭クズにしてしまう子とかもいるけど、そういう種族だからしょうがない。

「すべての人達の想いを、この剣にのせて!」
「アスク! 私の神聖魔法の全てを貴方に託すわ!」
「俺の魔力も、全部もっていけ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉ! 俺は元の世界に帰るんだああああああああぁ!!!!!」

 あらゆるペットの育ての親だった私を守ろうと、侵入者に対して戦うのはペットの使命だ。
 人族が私の土地を荒そうとしていたのも知ってる、育ててる可愛いペットを殺している事も。
 
 誰だって可愛いペットが殺されそうになったら、守ろうとするでしょ?
 自分の家に知らない人が入ってきたら、追い出そうとするでしょ?
 
 私はそれをしただけだ、ありとあらゆる、万を超える可愛いペットと一緒に。
 ごめんね、みんな。
 そしてありがとう、こんな私を守ろうとしてくれて。

「「「「「いっけえええええええええええええええぇ!」」」」」

 人族の一撃が、私の身体を幾つにも爆ぜさせる。
 光に包まれて、それこそ意識がふっ飛ぶぐらいに。
 
 魔王とか呼ばれてた辺りからね、こうなるんじゃないかなって思ってた。
 私自身そんなに強くないのに、知能をつけたペットがはしゃいじゃって。

 受け入れるしかない、人族の一撃を………………え、ムリ、めちゃくちゃ痛い。

 え、うそでしょ、こんなに痛いの。
 ムリムリムリムリ、こんなの本当に死んじゃうって。
 え、こんなに痛いと私死ぬよ⁉ くっそ痛いんだけど!

 料理してて刃で指切った時よりも痛いし、バイコーン族ちゃんの角がお尻に刺さった時よりも痛い! っていうかホント無理、助けて下さい誰でもいいのでくっそ痛いでスッッ!!! 超痛いマジ痛い本当に痛い、痛いの嫌だから私そんなに強くないから痛い苦手なんだからッッ!!!



「いったーーーーーーーーーーーーーーい!」

 痛いのから逃げたくて必死に叫んだんだけど。
 辺りはしーんとしてるし、私の叫び声だけが天高く響くのみ。

 人族は? ふっ飛んだ私の身体は?
 ………………はれ? あんまりっていうか、全然痛くない。
 頭がおかしくなるぐらいに痛かったのに、どこもなんともない。

 というか……ここ、どこだろう? 青い空と、赤い空が重なってる?
 草が凄いし、なんか、遠くに四角い変なのが見えるし。

 変な臭いもする、鉄かな? でも、どこか懐かしい匂いもする。
 立ち上がると、私の首にかけてあったお守りがボロボロと崩れ去っていった。

 この首飾りって、確かアンデッド族のアンちゃんが作ってくれたお人形だよね。
 絶対に装備してねって……そっか、身代わりになってくれたんだ。
   
 これが無かったら、私死んでたんだ……アンちゃんに会いたいな。
 アンちゃんだけじゃない、人族に殺されちゃった皆に会いたい。 

「うん、じゃあ、作っちゃおうかな、|魔物《ペット》」

 近くに獣の匂いもしてるし、さっそくペット育成始めちゃおっかな。
 また人族に襲われたら嫌だし、怖いし、痛いの嫌だし……。

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